AI活用で最短0.2秒でお会計!?人間の可能性を信じた25年、今後は「エッジAI」で新時代を作る【東京都中央区】
東京の「株式会社シーエスコミュニケーション」は、社会の基盤であるネットワークの構築・設計をメイン事業としながら、スマホなどのデバイス上でデータ処理を行う「エッジAI」という世界的に注目を集めている最新分野に挑戦しています。一体なぜ、エッジAIに着目するのか?設立25周年を迎えた今、創業の経緯から展望について代表取締役の牧草 亮輔(まきぐさ りょうすけ)さんにお話を伺いました。
電気・ガス・水道と同じ社会のインフラ。「当たり前の日常を支える」企業
シーエスコミュニケーションは、AI(人工知能)、IoT(モノをインターネットに接続する技術)、クラウドなどの幅広いネットワークの設計・構築を行っています。さまざまな企業や自治体のネットワークインフラの基盤を構築してきました。
牧草さんは「テレビやスマホで動画を見たり、SNSを利用したりという当たり前の日常を支えているのが、私たちの仕事。電気・ガス・水道などと同じように社会のインフラを届けています。25年間で培ったネットワークソリューションと、幅広い分野に精通したエンジニアが多くいることが当社の強みです」と語ります。
創業のきっかけはバイト先のオーナーのなにげない“予言”
そもそも牧草さんはなぜネットワークの設計・構築という道を選んだのでしょうか。はじまりはPCパーツショップでのアルバイトでした。
「最初はパソコンに関する知識がゼロで、店員とお客さんの会話がまるで外国語のようでした(笑)。そこから必死に勉強して、1年後には『直せないパソコンはない』と言えるほどのスキルを身につけることができました」
ハードウェアの知識だけでは不十分だと感じた牧草さんは、新たにパソコン教室の講師を始めて、ソフトウェアの知識も身に付けることにしました。そこで、MicrosoftのTCP/IPプロトコル(現在のインターネット通信の基礎)の不安定さを目の当たりにします。
「当時のTCP/IPプロトコルは通信が非常に不安定で、全く当てにならなかったんですよ。でも、いつのまにか安定して繋がるようになっていて、衝撃を受けました」
技術の進歩の速さを痛感するとともに、常に新しい知識を学び続けることの重要性を認識した牧草さん。そのタイミングで、パーツショップのオーナーの、「これからはネットワークの時代が来る」という予言にピンときた牧草さんは、ネットワークインフラの会社にアルバイトとして入社しました。
指一本で何兆円の損失も。やりがいと重責のなかでがむしゃらに前に進んだ日々
人の暮らしなど社会の基盤を支えるネットワークインフラの業務は、牧草さんがこれまで取り扱っていた家庭用パソコンとは比較にならないほど、大規模なものでした。
「先輩から『君の指1本で何兆円も飛ばせるんだぞ』とプレッシャーをかけられました。ネットワークのトラブルは社会全体に非常に大きな影響を与えてしまいます。重責に押しつぶされそうで、連日鼻血を出しながら業務に打ち込みました」
過酷な勤務をなんとかこなし、牧草さんはネットワークインフラの知識と技術を習得していきました。2年間勤めた後、関連会社から社員にならないかと誘われましたが、その誘いを断り、独立を決意します。
「起業した時はあまり何も考えてなかったですね。がむしゃらに前に進むことだけを考えていました。まずは地元紙に広告を掲載して、パソコンに関するあらゆる業務をとにかく請け負いました。PCのリサイクルやCADオペレーターへの技術支援、パソコン教室の開催など、地道な努力が実を結び、少しずつお客さまが増えていきました」
大勢の未経験バイトを育成して、全国の大手飲食チェーン店へのシステム導入に成功
コンビニでアルバイト情報誌を立ち読みしていたときに転機が訪れます。大手飲食チェーン店のPOSシステム(金銭のやり取りや販売情報を記録・集計するシステム)の導入・展開という大規模なプロジェクトが目に止まり、そのまま電話で自身のスキルをアピールして面接まで進み、案件の獲得にこぎつけました。
プロジェクトは、テクノロジー関連企業のシステムエンジニアと連携しながら進んでいきました。はじめは大阪市内から、大阪府下、近畿圏へと着実に担当エリアを拡大していくことができました。
担当エリアの急拡大により人手不足に陥った際には、未経験のアルバイトを大量に採用するという異例の手段をとりました。アルバイトを現場で教育して、即戦力人材として活躍してもらうことで、短納期で作業を完了させることに成功しました。顧客との信頼関係を築きあげて、最終的には日本全国の店舗のPOSシステム導入・展開を担当することができました。
最短0.2秒で会計できる無人AIレジで人手不足を解消
2024年は「エッジAI元年」と言われたほど、エッジAIが近年のトレンドになっています。エッジAIとは、カメラやスマホなどのローカルデバイス上でデータ処理を行う技術のこと。端末上で必要だと判断した最小限のデータのみを扱うため、負荷が少なく高速でデータ処理ができ、結果としてコストを抑えることができます。
「エッジAIは既存のネットワークを補強してくれる強力な味方です。かつてのTCP/IPプロトコルが現在のインターネットの礎となったように未来の社会を大きく変えてくれるんじゃないかと期待しています」
このエッジAI技術とPOSシステムを組み合わせ、バーコードなしで0.2秒で会計をする無人レジサービス「AIレジ・Truly」を開発しました。これによって、人手が不足しがちな小売店や飲食店などのレジの省人化を推進できます。
「ロサンゼルスにあるインテュイット・ドームでは、観客は顔認証で入場して、すべての決済はキャッシュレスです。海外ではスポーツ・エンタメの世界にも最新のAI技術が駆使されています。日本でもこのようなインパクトのある事業を展開したいと考えています。常に最新の技術を取り入れ続けて、成長し続けたいですね」
人間の可能性を信じてきた25年間。仲間と共に未来へ
最後に、設立25周年の節目における思いについて牧草さんはこう語ります。
「人間の可能性を信じ続けてきた25年間でした。まず社員一人ひとりの個性や強みを理解し、その能力が発揮できる機会を提供する。失敗を恐れずに挑戦できる環境作りも重要だと思います。これからも仲間の、そして人間の持つ無限の可能性を信じ、常に挑戦し続け、社会に貢献できる企業であり続けたいと思います」
聞き手、書き手、立元久史
情報提供元:ローカリティ!
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