「子どものための新規事業を作りたい」保育園・幼稚園の床をコーティングで守り、施設の課題も解決する「園児の床 enjoy project (eep)」(株式会社エコテック 営業本部部長・eep プロジェクト統括責任者 寺西宏晃さん)
全国にある保育園・幼稚園(以下、園とする)の多くは、第二次ベビーブームの約50年前に建設されたため、建物の老朽化が進んでおり、修繕の必要性が高まっています。特にフローリングの床は、一般家庭の床と比べて老朽化が進み、ささくれや木材の亀裂などによるケガのリスクがあります。そんな中、株式会社エコテックで営業部長を務める寺西宏晃さんは、「全国の子どもに携わる事業をしたい」という思いから、新規事業として、園の老朽化を解決し、修繕やコストの負担を軽減する「園児の床 enjoy project事業(以下、eep)」を立ち上げました。
eepは、UVフロアコーティングという独自技術を用いた「園児の床」を軸とした「床の総合保守」、「修繕改修工事」、「省エネ対策」の3つのサービスで園の床の課題を解決しています。
eepを立ち上げた寺西さんに、これまでのあゆみと、園舎(建物)の点検アプリの開発の取り組みや、これからの挑戦についてお話を伺いました。
劣化・老朽化した園の床を新築のように再生させる「園児の床」
「園にとって床は大切だ」と、寺西さんはいいます。
「子ども達を裸足で保育される園も多く、天然無垢の木床が使用されていることがあります。それは足を着いた時、温かさ、調湿性などの機能的な良さと自然なものに足を触れることが良いとされた情操教育の考えのもとです」
一方で、床が天然無垢の木床であることによって困りごとがでてくると寺西さんはいいます。
「園へ行く中で、床に対する困りごとはさまざまでした。子ども達が遊ぶ室内は、その運動量や、粗相により水分が床に付着することが多く、傷やささくれ、床の浮きや割れ、カビの繁殖など、ケガの心配や衛生面の課題があります。そういった課題に対し、床の表層を削ったり、古いワックスなどをきれいに洗浄しフロアコーティングを施工することで、美観と耐久性が上がり、新築のような床を再生することができます」
「全国の子ども達のために貢献できる仕事がしたい」新規事業立ち上げのきっかけ
寺西さんはエコテックに入社する前、全国規模のスポーツクラブの運営会社に勤務していました。その後、2019年にキッズスポーツ事業を行うベンチャー企業を友人と立ち上げました。
「不運なことに、立ち上げ後すぐにコロナ禍に入り東京都内で事業展開をしていたため公共施設が次々に閉鎖され、事業存続すら危うくなりました。生活基盤の不安定さと先行きの不透明さから、やむなく自ら退職することになりました。
自身に悔いをのこしながらも新しい道を進む中で、新たな気づきもありました。それは、スポーツに限らず、子ども達に関わる事業で全国的な社会貢献をしたいという気持ちが強まったことです。自分のやりたい事業ができる可能性がある中小企業を探していたとき、エコテックの役員面接で『結果を出せるなら、弊社は投資することも可能ですよ』と言われエコテック社への入社を決意しました」
新規事業「eep」を立ち上げた
「全国の子ども達のために貢献できる事業をしたい」という”志”で、寺西さんは入社1年目で実績を上げ、2021年8月より、保育事業者様の運営負担軽減、メンテナンスコスト削減を目指す取り組みである「eep」を立ち上げました。
「初期段階の業界特有のテストマーケティングをする中で参入障壁が高く、社内での承認を得なければいけない壁もあります。まずは、実績を出さなければ誰にも話を聞いてもらえないだろうと考え、4ヶ月の短期計画で売上目標を達成しました。並行して、自身の子どもが通う保育施設での保護者会長やPTA役員、また、学童クラブの運営委員会活動や地域課題の解決に取り組んだことで見識が付き、園関係の方々からも話を伺うことができました。また信頼できるパートナー会社の選定も実施しました。
特に新人の私にとって社内プレゼンには多くの時間をかけ、企画資料を数十個も作成する必要がありました。
その努力の甲斐もあり、事業のミッションが明確となり、新規性、独創性、将来性のある事業が生まれました。結果として、開始から4年で登録施設は約2,000件となり、300施設の施工件数と全国各エリアで保育団体(特別会員、賛助会員)に推薦いただけるようにもなり、応援してくださるお客様も増えはじめました」
と、寺西さんは当時を振り返ります。
アプリを開発し、園の建物の老朽化診断も開始
「園児の床」施工をきっかけに、園から園舎の修繕についても依頼されることが増えてきたといいます。建物について「何から修繕をしたら良いか、どのような状況か分からない」という園からの声が多くあり、寺西さんは園の安全性を目的とした園舎点検サービス「園舎の健康診断」を提供する決断に至りました。
こうして始まった「園舎の健康診断」では、現地での点検結果や建物の状態をクラウド上で一元管理するアプリを活用し、定期点検による早期発見を重視しています。具体的には、「今の園舎状態が一目でわかる」「何を優先に修繕すべきか」「将来性を考えコストを抑えた建物管理サポート」などを行い、建築の資格を持つ専門家が独自の評価基準を数値化することで、建物への不安を解消し、安全対策の必要性を可視化。すでに約300園舎で点検を実施している実績があり、多くの園から信頼を得ています。
(2024年 横浜市放課後キッズプロジェクト 公立小学校を対象に10回の開催)
(大阪市福祉事業者への建物管理研修の登壇)
「仕事は楽しく」という会社の理念のもと、地域活動にも積極的に取り組む
寺西さんは、eepを地域社会貢献にもつなげていきたいと話します。
「CSR活動の一環として、取引先の園や自治体と連携し、児童福祉施設への教育活動を開始しました。
例えば、地域の保育団体へ日頃の園舎点検から安全・修繕についての事例を啓発活動を行ったり、放課後キッズクラブや学童クラブでのSDGs活動の企業協力、スポーツクラブと連携して夏の遊び場の提供についてアライアンスを組んだり、また、人手が足りない時には餅つきイベントへの協力や、サンタの格好をして園を訪れることもあります。
地域との連携が希薄になっている中、我々が主体的に子どもたちを支援しながら、地域貢献できることにメンバーも楽しんでいただいております。「地域社会への貢献活動が、まわり回って仕事や理念の浸透にもつながると感じています」
(保育法人の園長先生を招き、民間企業での事業創出について勉強会開催)
(ヨコハマSDGsデザインセンター主催、事業者向けセミナー登壇)
多くの子ども達に「eep」を届けたい
寺西さんは、異業種や多様な地域との連携にeepの可能性を見出しています。
「eepは、未来を創る子ども達の健康と成長を育むための外枠部分にあたり、特にハード面のサポートを主としています。しかし異業種の方からも想いに賛同いただける企業様がいらっしゃることを知り、我々ができない分野や地域性を活かした連携から幅広く子ども環境へのサポートが可能となることができると感じています。全国の子ども達に民間企業からも価値を届けていきたいです」
- カテゴリ
- ビジネス・キャリア