経営資源の新たな活用法:法人によるサブリース不動産運用の可能性とは

今、法人が不動産に目を向ける理由とは?

目まぐるしく変化する経営環境のなか、企業は売上や事業収益だけに依存しない、多層的な収益構造の構築を迫られています。人件費の高騰、原材料費の上昇、少子化による市場の先細り。これらのリスクに備える新たな経営戦略として注目されているのが、「法人による不動産保有とサブリース運用」という選択です。
サブリースを活用すれば、企業は本業のリソースを使わずに安定した家賃収入を得られるだけでなく、税務面での節税効果、福利厚生の充実、財務バランスの強化といった副次的な効果も享受できます。つまりこれは、単なる“投資”ではなく、企業価値を底上げする“戦略資産運用”ともいえるのです。

 

サブリースとは?法人でも導入しやすい不動産運用スキーム

サブリースとは、企業などの不動産オーナーが所有する物件を不動産管理会社が一括で借り上げ、第三者に転貸する仕組みです。これにより、オーナーである企業は、空室が発生しても毎月一定額の家賃収入を得られるため、安定的なキャッシュフローを実現できます。

たとえば、企業が2,500万円の区分所有マンションを購入し、月額9万円の家賃でサブリース契約を結んだ場合、管理手数料を差し引いても約8万円の収益が毎月得られます。入居者とのやり取り、修繕対応、家賃の未回収リスクといった煩雑な業務は管理会社に任せられるため、人的リソースを使わずに収益を上げることができます。
このような仕組みは、特に総務部門や経営管理部門のリソースが限られている中小企業やスタートアップにとって、現実的で導入しやすい運用モデルといえるでしょう。

 

税制優遇と福利厚生、法人が得られる実質的メリット

法人が不動産を保有し、サブリースで運用することによって得られる最大の利点は、単なる収益確保にとどまりません。以下のような税制優遇と福利厚生強化の側面も、大きなメリットとして挙げられます。

● 減価償却と経費計上による節税効果

法人が取得した建物は、法定耐用年数に応じて減価償却が可能です。たとえば、RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションであれば、47年という長期間にわたって毎年の償却が可能となり、課税所得の圧縮につながります。さらに、購入にかかった仲介手数料、固定資産税、管理費なども損金算入の対象となるため、実質的な節税効果は非常に大きいです。

また、銀行借入を活用して物件を取得した場合、その利息部分も損金として計上できるため、財務戦略上も柔軟な運用が可能です。

● 福利厚生の一環としての実用性

不動産の一部を社宅や社員寮として活用しつつ、空室期間はサブリースで収益化するという柔軟な使い方も可能です。たとえば、転勤者や採用後の新入社員が一時的に住めるよう物件を確保し、空いている期間は外部に貸し出して家賃収入を得るという仕組みは、財務的にも人事的にもメリットがあります。
このような社宅利用は、税務上も福利厚生費としての扱いが認められやすく、給与課税の対象とならない「社宅規定」の整備と組み合わせれば、社員にとっても企業にとってもWin-Winの制度設計が可能です。

 

導入の流れと信頼できるパートナー選び

法人がサブリース運用を導入する際には、慎重な計画と信頼性のある専門家・管理会社の選定が不可欠です。導入までの基本的なステップは以下のとおりです。

  1. 目的の明確化(収益重視か福利厚生目的か)

  2. 税理士・会計士と連携したシミュレーション

  3. 管理会社や物件の選定(立地、築年数、利回りなど)

  4. 契約条件の精査(家賃保証の見直しタイミング、中途解約条項など)

  5. 運用開始と定期レビュー体制の構築

情報収集においては、不動産投資の法人向けセミナーや、経済系専門紙、税務アドバイザーによる分析資料を活用することをおすすめします。SNSや個人ブログは参考情報として有効ですが、法人運用では法令や税務リスクを伴うため、専門家の助言が欠かせません。

 

まとめ:経営資源を守り、育てる不動産運用という選択

企業経営において、不動産という資産を「守るだけでなく育てる」視点でとらえることが、これからの時代に求められています。サブリースは、運用の手間を最小限に抑えながら、毎月の収益を安定的に生み出す仕組みとして、特にリソースに限りのある中小企業やベンチャー企業にこそ活用が期待されます。

短期的なキャッシュフローの改善だけでなく、長期的な企業価値の向上にも寄与する不動産運用。今こそ、サブリースという選択肢を企業戦略のひとつとして見直してみてはいかがでしょうか。

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ビジネス・キャリア

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