Web3.0で「互助」の価値を高めていく〜GFA 松田元社長×片田朋希専務×OKWAVE 杉浦元社長 鼎談(後編)
(撮影 雨森希紀)
前回の鼎談では、杉浦さんの簡単なプロフィールと、株式会社オウケイウェイヴ(以下、OKWAVE)を創業メンバーの一人として参画されてから離れるまでについてお聞きしました。最終回となる後半では、GFA株式会社(以下、GFA)とOKWAVEの業務提携にはどのような意味があるのか、そして二社はどんな未来を創っていくのか、そのあたりに迫ってみたいと思います。
※本稿は前後編の後編です(前編はこちら)。
松田元(まつだ・げん)
実業家、投資家、レジリエンス経営研究者、教育者、作家。長崎県長崎市に本籍を有し、1984年、神奈川県鎌倉市で生まれる。早稲田大学商学部卒業。
在学中より学生ベンチャーを創業。そのほか、複数のベンチャー役員を兼任。卒業前にアズ株式会社を創業。2012年にアズグループホールディングス株式会社設立、代表取締役就任(現職)。2016年8月に株式会社創藝社代表取締役に就任(現職)。株式会社オウケイウェイヴ(3808)代表取締役社長、ビート・ホールディングス・リミテッド(9399)取締役会議長最高経営責任者を経て、GFA株式会社(8783)代表取締役社長(現職)。衆議院予算委員会「平成28年度の予算案審議のための公聴会」に公述人として出席したほか、著書も多数。
片田朋希(かただ・ともき)
1978年広島県生まれ。2002年東洋大法卒。2007年インヴァスト証券(株)、2009年(株)EMCOMホールディングス、2011年(株)企業再生投資、2013年(株)Nextop.Asia、2016年(株)MJ代表取締役、2017年(合)IGK業務執行役員、2019年GFA(株)代表取締役、2020年アトリエブックアンドベッド(株)取締役、2020年(株)CAMELOT取締役、2022年(株)SDGs technology取締役。2025年GFA株式会社専務取締役(現職)。
杉浦元(すぎうら・はじめ)
1970年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学理工学部在学中に起業後、1996年大和企業投資株式会社に入社しベンチャー投資を行う。その後、株式会社ソラシドエアの設立に参画し、経営企画担当取締役として、事業計画策定や資金調達等の業務に従事。1999年株式会社ブイ・シー・エヌのパートナーとして複数スタートアップの設立から上場に携わりながら、株式会社オウケイウェイヴにて、経営企画担当取締役として資金調達、営業本部長、ポータル事業部長、IR担当、内部監査室長を歴任し、2006年の同社上場に寄与する。2008年株式会社コンコードエグゼクティブグループ取締役として、750人以上のキャリア支援を行った後、2016年株式会社エリオスを設立。社会課題解決に向き合うNPOやソーシャルベンチャーの組織変容に深く関わった後、2022年株式会社オウケイウェイヴ(3808)に、代表取締役社長として復帰(現職)。
小松成美(こまつ・なるみ)
神奈川県横浜市生まれ。広告代理店、放送局勤務などを経たのち、作家に転身。
主な作品に、『アストリット・キルヒヘア ビートルズが愛した女』『中田語録』『イチロー・オン・イチロー』『勘三郎、荒ぶる』『YOSHIKI/佳樹』『横綱白鵬 試練の山を越えてはるかなる頂へ』『全身女優 森光子』『仁左衛門恋し』『五郎丸日記』『それってキセキ GReeeeNの物語』『虹色のチョーク』『M 愛すべき人がいて』『奇跡の椅子 AppleがHIROSHIMAに出会った日』などがある。現在、執筆活動をはじめ、テレビ番組でのコメンテーターや講演など多岐にわたり活躍中。
小松(以下略):
今回はまず、杉浦さんがOKWAVEに戻ることを決意した「ある大きなターニングポイント」についてお話を聞きたいと思います。どのような出来事があったのでしょうか?
杉浦:
2021年7月から2022年3月にかけて、OKWAVEは大きな2つの不祥事を起こし、約50億円もの資金をわずか1年で失いました。1つ目は、レイジングブルという実態のない運用会社に資金運用を委任していたもので、これが投資詐欺(ポンジ・スキーム)で約35億円を失います。
そしてもう一つが、OKWAVEが子会社のOK FUNDを通じて株式会社アップライツへの10億円の投資です。この資金は海外に送金されていて、回収不能になりました。この件では、OKWAVEは被害者だとされていたのですが、2020年4月に松田さんからOKWAVEの社長を引き継いだ福田道夫氏と取締役だった野崎正徳氏、および財務アドバイザーだった佐久間将司氏が主導していたことが後に判明し、会社法違反等の罪で東京地検特捜部から在宅起訴されました(2025年4月)。
--そんなことがあったんですね……。
杉浦:
松田さんも辞めた頃、フィンテック事業に失敗した当時のOKWAVEは、瞬く間に業績が悪化し、社債の償還なども苦労することになりました。
私は、当時取締役だった野崎氏から頼まれて子会社の売却などの相談を受けていました。売却可能な子会社を売り、最後の最後に黒字の事業として残っていたFAQのSaaSの事業も売却することになります。2021年6月、株式会社PKSHA Technologyへ約70億円で売却することができました。それでようやく社債償還の目途も立ち、一息つけたと思ったのですが、資金が入ったというだけで根本的な経営改善には至りません。あとはM&Aなどもして立ち直ってほしいなと思っていたところ、その資金をわずか半年の間に、先の2つの不祥事により失い、OKWAVEは倒産の危機に瀕するまでになってしまったんです。
--それは本当に大変でしたね。杉浦さんはこの頃OKWAVEの経営からは離れていたとはいえ、創業メンバーの一人として、一株主として、事業の成功とそこにある理想のために奔走されていたのですから、誰よりも大きなショックを受けたでしょうね。
杉浦:
はい。経営陣を応援し続けていた私でしたが、この時にはさすがに腹が立ちました。なぜそんなにも多額の資金をレイジングブルに預けたり、アップライツに投資したのか? その説明責任を、意思決定者である福田氏、野崎氏が全く果たさないからです。ですので、繰り返し説明責任を果たすよう二人には求めていました。
--説明責任は経営者にとって最も優先される義務ですね。
杉浦:
その通りです。私は、会社経営において常に正しい決断ができる、とは思っていません。実際、思った通りにならないことの方が多いので、経営判断後に様々な結果が待っていることは理解できます。でも、望まない結果になったのであれば、経営者は誠意を持って謝罪し、株主の方々の前に立って、説明責任を果たさなければならない。
2021年当時、私はOKWAVEの取締役ではなかったので内情は分かりませんが、もしかしたら35億円もの資金をレイジングブルに預けなければならない、アップライツに10億円を投資しなけなければならない、そうした経営判断が必要な状況にあったのかもしれません。しかし結果的にその判断が誤りで、大きな失敗をしてしまったのであれば、「なぜこのような経営判断をしたのか」「そしてなぜこういう結果になってしまったのか」を、株主に対して速やかに説明するべきです。ところが、その当たり前のことが当時のOKWAVEではなされなかったのです。
--確信犯的に、悪いことをしていたから、杉浦さんにも株主にも、説明できなかったのでしょうか。
杉浦:
そうだったのかもしれません。なので、私は二人から説明を聞くための場を設けました。自ら2022年6月に臨時株主総会招集請求を出して、オープンな場で当時の経営陣に対して株主への説明を求めたのです。同時に、私は取締役の解任要求を出しました。そして、2022年8月25日に臨時株主総会は開催されます。80%以上の株主の賛成を得て、福田氏、野崎氏の2人を解任することになりました。
--そして、杉浦さんがOKWAVE に代表取締役に就任なさるのですね。
杉浦:
取締役の解任要求を出した時点で、それが承認された時には自分が経営を引き継ぐしかない、と思っていました。
--経営危機に陥ったOKWAVEの社長になる気持ちの根幹は、不祥事に対する怒りでしたか?
杉浦:
そうですね…、正直そういった気持ちが無いこともないのですが、それは100%のうち15%ぐらいです。残りの85%は、一言でいうと「それが天命だと思った」と、いうこと。私は、OKWAVEが行う事業は、AIが人間の知性すら超えると言われるこれからの時代に必ず必要となる、むしろ時代の最先端を走っていると信じていて、OKWAVEは絶対に無くしていけないという思いを抱いていました。この会社をなんとか存続させ、そこから立て直して発展させていくことを、誰かがやらないといけない。そう思った時に「誰がいいんだろう」と色々な人の顔を思い浮かべながら考え続けたのですが「でもどう考えても自分しかいない」という結論に至りました。それこそが社会における自分の役割だと思い、社長になると決めました。
--杉浦さんの社長就任を片田さん、松田さんはご存知でしたか。
片田:
はい。あの状況で社長を引き受けた杉浦さんの漢気には感動しました。
松田:
本当に。あそこで全てを背負う覚悟を持った杉浦さんを経営者として尊敬しました。
--杉浦さんは、OKWAVEの何を「絶対に無くしてはいけない」と思われたのでしょうか。
杉浦:
創業時からOKWAVEが行っているのは、Q&A形式で一般の人々が助け合う、自発的な「互助」関係のコミュニティサイトです。人の繋がりというのは、今の社会の大きな流れからすると、最も大切なことだと思っています。特に日本の場合は少子高齢化が進む中では「命綱」にもなるでしょう。行政が行う「公助」は財政的な破綻が予見されますし、今までの延長で社会保障の仕組みを維持することは難しい。もはや、人口増加を前提とした現状の仕組みを維持することは諦めた方がいいとさえも思っています。
ならば、「一人一人が必死に頑張ろう」と思うしかないのですが、この「自助」こそ限界があります。自助が加速すると社会がどんどん閉塞的になっていくと、私は考えているんです。
--自助にも公助にも限界を感じる状況の中で、OKWAVEが「人と人の繋がり」と提供していくのですね。
杉浦:
人間の幸せを維持しながら社会のシステムを回していくには、お互いが協力して助け合うしかありません。上手にテクノロジーを使ってどう仕組み化をしていくのか、個人の自発的な「自助」にとどまらず、社会をシステム化して永続的な「共助」の仕組みを作っていきたいと、当時も今も思っています。
--日本に昔からある「隣組」のような助け合いの文化ですね。
杉浦:
そうなんです。隣組はまさに「仕組み」ですが、昭和の日本では、田植えや稲刈りの時期に人手が足りなければ、声を掛け合って人員を手当てしていました。採れすぎた魚や野菜は無駄にならないよう分け与えることも当然でした。農村部だけでなく町でも、味噌や醤油を貸し合う、夕食のおかずをつくり過ぎてしまった時には近所の人にお裾分けする、という、助け合いの文化が普通にあった。そういう「互助」の関係をインターネットという技術を媒介にして「遠くのご近所さん」の関係をたくさん作り、そこに仕組みや制度を構築するのが社会の中でのOKWAVEの役割です。
--しかし、資金を失った会社の経営は大変だったでしょうね。
杉浦:
大変だったというよりは、想定外のことが多かったのは事実です。私が社長になって最初に行ったことは預金残の確認ですが、想定よりもお金が無くて8月末の支払いや従業員の給与の支払いができるだけの残高もない状態から始まりました。友人知人に声をかけてお金を借りて食いつなぎながら、増資をしようと思ったところに2022年10月に特別注意銘柄の指定となり、改善計画を進めないと増資もできない状況に陥りました。今思えばあのころが一番つらく自転車操業状態でしたが、そんな一番資金繰りが厳しい時、片田さんに相談すると、あるファンドを紹介してくれて、2023年1月、5,000万円の融資を受けることができたんです。あれは本当に助かりました。
その後、7500人の株主の皆様にお声がけをして、株主割当増資で7億円以上のファイナンスを行うことができ、債務超過の解消と資金繰りの改善をすることができました。OKWAVEは、特別注意銘柄指定中で債務超過の会社が株主割当増資を行った初の会社です。私が社長になるプロセスからですが、株主の皆様にはずっと助けていただいています。
また、経営を安定させるためにも資本業務提携先をずっと探していました。ただ、足もとの業績に加えて「不祥事を起こした会社、まだ何か悪材料が出てくるかもしれない会社」という風評がつきまとって、私に届くのは、支配権を求められる提案や株主価値を大幅に毀損させる提案ばかり。再建中のガバナンスに影響がでて上場維持が困難になる可能性があったので、業務提携の企業探しは難航しました。
松田:
杉浦さんは、当時の私に悪いイメージを持っていたかもしれませんが(笑)、私は逆で杉浦さんには悪いイメージを一切持っていません。社長になった時に、「あの状況のOKWAVEを再建しようとするなんて、素晴らしいな」と思っていました。
片田:
私も松田さんと同じように杉浦さんの発言、行動を見ていて、一緒に仕事をしたい人だ、と考えていました。いいタイミングだったらOKWAVEとビジネスをしたいよね、と松田さんとはよく話していました。
--杉浦さんの経営の大変さを見ていた片田さんにお聞きします。GFAがOKWAVEとの業務提携を考えたきっかけはいつになりますか?
片田:
2024年の12月頃ですね、私が杉浦さんに「株主優待の目的で、にゃんまるコインを買いませんか?」という提案をさせていただいたのが始まりです。その後、2025年の2~3月頃になると業務提携の話へと移行していったんです。
杉浦:
はい、片田さんからミームコイン購入の提案をいただいたのですが、OKWAVEは投資運用で不祥事を起こした会社で、ビットコインはおろか一般的な金融商品ですら買えないので、当初はご提案をお断りしました。一方で、いろいろな企業と資本業務提携を結ぶことを模索していましたので、その候補先としてGFAさんの名前は常にありました。経営判断の早さやフェアであること、Web3.0事業の推進などがその理由です。
片田:
私も松田さんも、OKWAVEのプラットフォーム事業には大きな可能性を感じていたので、「それではまず、資本業務提携を結びましょう」とお話ししました。資本業務提携の具体的な条件を詰めて行ったのは、2025年の3月からでした。
--OKWAVEにとっては素晴らしい資本業務提携のお話ですが、杉浦さんはもともと、OKWAVEの社長を辞めた松田さんへの不信感を持っていましたよね?そこは問題にならなかったのですか?
杉浦:
はい、不信感は持っていました。でも、それが私の誤りだったと分かったんです。社長としてOKWAVEを経営する中で事実を検証すると、松田さんはOKWAVEの不祥事等には関わっていないことが分かりました。加えて2025年2月に、松田さんが上場企業であるGFAの社長になることが内定もしましたので、むしろ「これで資本業務提携できるかもしれない」と、希望を持ったほどです。2025年3月、7年ぶりに松田さんにお会いしたとき、私の第一声は「誤解をしていて申し訳ありませんでした」という謝罪でした。
--そうだったのですね…
杉浦:
私がOKWAVEの社長になる経緯の中で、「松田さんは完全にOKWAVEの不祥事には一切関係ないんだな」ということを感じ始めてはいました。そして社長になって、会社に残っていた資料などを調べていくうちに「松田さんは不祥事には一切関係ない」と確信がもてたんです。2022年8月25日の臨時株主総会で、兼元さんが福田氏と野崎氏を支持し、その後も福田氏と野崎氏は説明責任を果たさず、2025年4月に起訴されたということが、事実のすべてです。私がそうした事実を知る経緯は、自身のnoteに綴りました。松田さんには、本当に申し訳なかったです。
松田:
いえいえ、そんな。謝らないでください。私もあの件を通して色々なことを学びました。
--実際、松田さんはどのようなことを学ばれたのですか?
松田:
本当に覚えのないことや、ありもしないことをSNSやネット記事を中心に激しく批判されたのですが、発言の匿名性というのは本当に人をここまで傷つけるのかと、身を持って知りました。またマスメディアというのは本当に情報統制しますよね。自分たちの都合のいいようにしか情報を発信しません。私があの件について初めてこの場で自分の口から語ったのは、他のメディアだと、私が発言した情報が知らぬ間に歪曲されて別の意味を持つことを恐れたからです。なので、あの件について語るのは、もうこの場で終わりです。今後も語るつもりはありませんし、ここで私や片田さん、杉浦さんが言っていることがすべてですし、それが事実です。
--話をOKWAVEとGFAの業務提携に戻します。数ある業務提携先でGFAと手を組むと決めた最大の理由を改めて教えてください。
杉浦:
まず、松田さん、片田さんがOKWAVEを対等に扱ってくれたこと、です。ファイナンス条件だけでなく、真のパートナーとして見ていただけたことと、そのパートナーシップの中で、具体的な事業を通じて一緒に企業価値を上げていきましょう、と言ってくださったこと。その唯一の会社だった、からです。そして、これまでの事業を継続し成長させていく決意を持ってくださったことが、OKWAVEとGFAの業務提携の理由です。OKWAVEがこれまで作り上げてきたプラットフォームを、令和のテクノロジーであるトークンエコノミーと繋げ、人間社会も、日本経済も豊かにしていく。そのために、松田さん、片田さんが率いるGFAと力を合わせていける、と強く思えました。
OKWAVEは、まだWeb3.0を実現するテクノロジーが無い時代、また、シェアリングエコノミーや「新しい資本主義」のような言葉がない時代から、個人が互いに助け合う「互助」という考え方に注目してビジネスを続けてきました。誰かの役に立ちたいと思っている人たちが集まり、お互いの知識や経験を持ち寄ってそれぞれが助け合う、そういう価値観を守り続けてきました。その価値観をベースに、GFAの松田さんの持つテクノロジー・スキルを駆使し、仕組みや制度を実装した「共助」の基盤へとさらに高めていきたい、と思っています。
--片田さん、OKWAVEとの資本業務提携の「決め手」は何でしたか?
片田:
第一は杉浦さんの覚悟ですね。杉浦さんが社長になるまでの経緯をnoteの記事で読んでいましたし、その後社長になってからもずっと、OKWAVEを守るために全身全霊で問題を解決しようとしているのを見てたんですね。その姿に胸を打たれて。松田さんも、株主総会の前に杉浦さんが書いたnoteって読んだよね?
松田:
もちろん読みました。その中でも一番印象に残っているのは、杉浦さんがあの決戦の場となった2022年8月25日の株主総会の数日前のnoteですね。「福田さん、野崎さんを支持する兼元さんは間違っている。僕は兼元さんを許せません」という内容でした。そして兼元さんが友人でもある福田さん、野崎さんを甘やかしたことによってOKWAVEはこうした苦境に陥った、とズバリ書いていた。私もある意味被害者の一人ですから(笑)、「杉浦さんよく言ってくれた!」と思っていました。
--あのレイジングブル社による詐欺事件、松田さんがOKWAVEの代表を辞められてから起きたことなのに「犯人は松田だ」と、言われもない噂がネットには飛び交っていたそうですね。
松田:
そうなんですよ。その経験を通じて、私は「ブロックチェーンを使ったメディアを作るというビジネスは面白いだろうな」と考えました。ブロックチェーンは絶対に誰にも書き換えられないですし、情報の発信どころがわかる。誰が何を言ったかが永久に刻まれるわけです。誹謗中傷する者はすぐに特定できますし、その発言は永遠に消えません。
--その技術があれば、野放しになっているSNS上の誹謗中傷も減っていくかもしれませんね。
松田:
はい、そう思います。そして、このメディアなら「真実の言葉」も永遠に残すこともできます。たとえば不祥事を起こしてしまいメディアに出られなくなったタレントさんとか政治家の方などに真実を話してもらう。今の日本は、一度不祥事を起こし記事にされると、説明も許されず、二度と復活できないようになっていますよね。本人がいくら反省していても、いくら過去のことを後悔していても、二度と復活できない。あれはちょっとやり過ぎなのではないかと思うんです。ですから、一度発言したら二度と変更できないブロックチェーン技術を使ったメディアで、その人にとっての「真実」を発言してもらう。名付けて「復活のプラットフォーム」です。それをOKWAVE上で展開できたら面白いんじゃないかなと思っています。
--匿名の罵詈雑言も、懺悔も、真実の告白も、ブロックチェーンの技術なら永遠に書き換えられることなく残るんですね。
松田:
Web2.0の長所ってインタラクティブ、つまり相互に作用するところだと思うんです。色々な人が双方向で発言できたり投稿できたりする点ですね。ただこれはさっきもお伝えしたんですが諸刃の剣なんです。このインタラクティブな会話形式の世界が無くしたものが1つあるんですが、それがモノローグ(独白)なんですね。手記とか独白とか、日常のコミュニケーションから程遠いと思われますが、Web3.0の世界ではこのモノローグこそ、絶大なコミュニケーション・ツールとなる、と思っています。ブロックチェーン上に誰かがモノローグを乗せる、それは誰でも見れるのだけれど、コメントやフィードバックは一切できないんです。そんなブロックチェーン上に記録されているモノローグを、一つのバリューとして扱うメディアが出てくる気がしています。
--それは価値あるメディアになりますね。GFAとOKWAVEが作る新たなプラットフォームが楽しみです。
松田:
ありがとうございます。
--ところで杉浦さんは、松田さんに対する疑念が晴れて、より深い関係を築かれているわけですが、起訴されたOKWAVEの創業メンバーに対しては、どのような思いを抱いていますか。
杉浦:
自分にとってはとても残念な気持ちがあり、今でも複雑な心境です。ただ、そのことも私はnoteに綴っているのですが、兼元さんは福田さんと野崎さんを信じていないかもしれないけれど、私は二人が立ち直れることを信じています。そして20年後ぐらいにまた4人で集まって、思い出話の一つでもできることを願っています。きちんと罪を償って、社会に説明責任を果たした後にまた一緒に何かできればいいな、と。
--共に起業した思いは消えず、ですね。さて、GFAとOKWAVEの事業計画は進んでいますか?
杉浦:
資本業務提携の中で約束されていたWebプロモーションも進んでいますし、OKWAVEコミュニティのポイントをにゃんまるコインに交換できるようにもなりました。2025年6月には私がGFAの社外取締役にも就任しています。まだ始まったばかりですが、これからもいろんな取り組みが立ち上がると思います。
――こうした事業は、松田さんと杉浦さんで進めていらっしゃるのですか?
松田:
はい、そうです。杉浦さんとは毎週経営会議をしています。
--片田さんはどのような役割を?
片田:
私は2人の考え方や理念をどう手早く「お金」にするかを考える役目を負っています。私は、事業で一番大事なのは「お金をどう生むか」だと思っていますので、それを実践する日々です。
--経済は本当に大切ですよね。
片田:
はい、ですが経営者でも、意外とお金の話を嫌がる人って多いんですよね(笑)。一番大切なことだと思うんですが。そこから目をそらす社長も少なくない。誰かを幸せにするには、お金のことをきちんと考えなくてはいけない。私は強くそう思っています。
--資金調達のプロフェッショナルの片田さんと手を携えた杉浦さん、OKWAVEが目指す「共助を生むシステム」を実現するために、なにか具体的な手順があれば教えてください。
杉浦:
そうですね、こんなことを言うと株主の皆様に怒られてしまうかもしれませんが、実は自分の中では、細かな戦略のようなものはあまりなくて(笑)、やり続けた結果の先に何かが見えてくるだろうと思っています。あえて言えば、AIとWeb3.0のテクノロジーを使って、自発的な個人の「互助」のコミュニティを、制度を実装した「共助」の仕組みにしていくということです。創りたい世界というのは具体的に見えています。たぶんこうなっていくだろうなという道筋もあるので、諦めずにやり続けていくだけだと思っています。
そしてGFAが持っているテクノロジーと、OKWAVEの持つ思想を組み合わせると、今まで誰も成し遂げられなかったことができる気がしていて、これを私は「Web4.0の探求」という言葉で表現しています。
--Web4.0、それはどのような世界なのでしょうか?
杉浦:
テクノロジーと感情・思考が融合された世界、でしょうか。感性と理論的なものが融合されるような世界と言い換えてもいいかもしれません。うまく言葉にするのが難しいのですが、人はこれからそういう世界を生き、その世界の中で幸せを追求していくのだと思います。その世界をGFAと一緒に作りきれると、私は信じています。私は社長の座に就いてから、すべてが思った通りになっているとは言えませんし、思った通りにならないことばかりですが、自分が意図していたことや、さらに願っていたこと以上の結果も起こっているし具体化されています。そして多分この先もそうだと信じています。
より具体的な話をしますと、クリプトメーカーであるGFAの強みを使って、GFAの経済圏の中の一社としてミームコインを発行して、たとえばOKWAVEコミュニティでサンクスコインのような使い方をするとか、GFAが推進するミームコインをOKWAVEコミュニティに実装するとか、そういったことを実現させるのが最初の入口だと考えています。
松田:
OKWAVEとの具体的な事業の話は、週1回会議で議論を重ねています。杉浦さんもおっしゃった通り、2025年7月15日にはOKWAVE内での投稿活動でユーザーが獲得したOKWAVEポイントを、暗号資産(ミームコイン)であるにゃんまるコインに交換することができるようになりました。7月15日はOKWAVEの創業日なのですが、それにちなんでその日は「世界ありがとうの日」として制定されています。世界中の人々がお互いに「ありがとう」を伝え合う日として、感謝の気持ちを表現してそれを広く伝えていくことを目的にしています。GFAはOKWAVEとこのように連携し、テクノロジーを通じた「貢献の可視化」と「感謝の循環」を広げていく活動を続けていきます。
--「ミーム(meme)」とは、インターネット上で模倣されたり拡散されたり改変されたりする概念のことを言いますが、このミームの力や可能性は無限大ですね。
松田:
極論かもしれませんが、世の中のすべてはミームでできていると思っています。去年のアメリカ大統領選挙なんかでもミームが使われたりしましたよね。私はミームというのは社会を変えるエネルギーであり、原動力を持っていると考えます。世の中で話題になっていることの多くは、情熱を持った一人が創り出した一つの現象からはじまり熱狂に変わっていきますよね。
この世の中でミームの最高の完成形が「宗教」です。2000年以上も前に生まれたイスラム教とキリスト教ですが、未だに世界中に多くの信者がいますよね。そして未だに宗教が理由で争いが絶えません。
ミームというのは宗教も作れるし通貨も作れる。どうせ使うなら人類が幸せになるような方法で使いたいじゃないですか。だから私はミームを使って「良い人」がもっと認められて、価値を生む社会を作っていきたいんです。
杉浦:
まさに私も松田さんが目指している世界を見ています。たとえばOKWAVEコミュニティで、誰かに良いことをした人に対してOKWAVEが発行するミームコインを付与する。それは評価です。つまり、その人がより「人間らしく」評価される世界なんです。
私がブロックチェーン技術の可能性で期待していることは、松田さんと同じく、ミームコイン・トークンのやり取りを通じて「改ざん困難な履歴を残しておけること」です。それを活用して、OKWAVEでは、「感謝される行動の履歴」をもとに人間性を価値化し、信頼と貢献が循環する新しい経済と社会のあり方を提示していきます。
現代社会においては、目に見えるものや結果しか評価されないことが多いですよね。たとえばお金をたくさん稼いでいる人、仕事であれば営業成績の数字がいい人、処理能力の高い人などです。でもブロックチェーン技術があれば、貢献と感謝のやり取りを通じて、普段はなかなか気づかないこと、たとえば数字には出てこないけれど縁の下の力持ち的にサポートできる能力であるとか、数字をあげているわけではないけれど他人を献身的にフォローする人とか、そういう人が可視化されるんです。そういうことを改ざん困難なブロックチェーンに履歴として残しておくことができれば、人の価値ってもっと豊かで意味があるものになると思うんです。たとえば転職の時などに、企業の採用担当が応募者のそういった人間性を確認して採るか採らないかを判断できるようになると、履歴書と面接だけでは分からない、より「良い人」が評価をされる社会になるのではないでしょうか?
また私は、なにかに挑戦している人はとても必要だと思っていますが、その挑戦する人に共感して応援する人も非常に大切で価値ある行動だと思っています。トークンを使えば、そういった共感や応援の履歴をブロックチェーンに刻んでおけます。OKWAVEは再建の最中に、多数の株主の皆様から出資していただき株主割当増資を行いましたが、ミームコイン・トークンを発行していれば、そういった行動が未来永劫刻まれて残っていくわけです。
たとえば、自分では実現できないけれど、松田さんだったら可能なことがあったとしてそれに対して共感して松田さんを応援する。これが非常に尊いことだと考えていますし、そういった共感社会になれば挑戦がたくさん生まれ、閉塞感など感じない自由で開かれた社会になるのではないでしょうか。私はそういう人の挑戦に共感する人と推進していきたいし、OKWAVEではそういう仲間を増やしていきたいですね。
松田:
それ、Wowbit ですね(笑)!
片田:
Wowbit でしょう(笑)!
杉浦:
良い人、良いおこないをしている人の言動が可視化されて多くの人に見えるようになれば、悪いことをすると恥ずかしいしかっこ悪い。より良いことした方が断然「かっこいい」し「お得」ですね。だからこそ、どんどん良いことをする人が増えて、そんな良心で溢れた世界ができる。それを信じて前進していきます。
--そうした社会が生まれたら、素晴らしいですね。OKWAVEとGFAの事業が進み、実現できることを期待しております。松田さん、片田さん、杉浦さん、本当にありがとうございました。
(おわり)
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