少年ジャンプ「友情・努力・勝利」と資本主義・ポスト資本主義の交差点

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はじめに:ポスト資本主義の言説から

近年、「ポスト資本主義」や「ポスト成長」といった言葉を耳にする機会が増えています。
経済学者ティム・ジャクソンは「無限の成長ではなく、持続可能な暮らしと社会を目指すべき」と提唱し、また投資家ルチル・シャルマは「現代資本主義は過度な政府介入や巨大企業の寡占により“死の千の切り傷”に苦しんでいる」と批判しています。

こうした言説が注目を集める背景には、資本主義が「成長」を前提としたシステムであること、そしてその成長がいつか限界に突き当たるのではないかという不安があります。

では、この「成長」というテーマを、私たちが日常的に親しんできた 少年ジャンプのキャッチフレーズ「友情・努力・勝利」 から読み解いてみたらどうでしょうか。


ジャンプを象徴する「友情・努力・勝利」
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「友情・努力・勝利」は、1968年の創刊時に初代編集長・長野規氏が掲げたとされる言葉で、非公式ながら広く認知されているジャンプのアイデンティティです。

すべての作品がそうではありませんが、

  • 『ドラゴンボール』『ONE PIECE』『鬼滅の刃』等のバトル系作品

  • 『キャプテン翼』『SLAM DUNK』『ハイキュー!!』等のスポーツ系作品

これらはまさに「友情・努力・勝利」を体現した人気作と言えるでしょう。


「友情・努力・勝利」に潜む資本主義的なサイクル

この言葉を改めて眺めると、単なるスローガンではなく 「成長」を生み出すサイクル に見えてきます。
このスローガンが誕生したのが1968年という日本の高度経済成長期の真っ只中であったことも象徴的です。


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スタートアップの起業サイクルとの対応関係

スタートアップ企業の成長プロセスと「友情・努力・勝利」は驚くほど似ています。

  • 起業時:志を同じくする仲間を集める → 友情

  • 挑戦期:開発や営業など、それぞれの持ち場で奮闘する → 努力

  • 成果期:収益を上げ、上場や業績拡大へ → 勝利

  • 次のステージ:さらにサイクルを回し「成長」

スタートアップ経営者に『ONE PIECE』のルフィ好きが多いのも、この構造が共感を呼ぶからかもしれません。


成長の光と影

健全な「友情・努力・勝利」は、個人や組織を前進させます。
しかし過度な加速は、危険な影の側面をもたらします。

強さのインフレと冗長類型化から陥る「総力戦」構造

成長サイクルが加速しすぎると、過度な業績主義に突入し、仲間が離脱し、組織崩壊につながる、というのはスタートアップあるあると言えるかも知れません。

漫画の世界においても、キャラクターが成長により強化されていく事から得られる派手さやドーパミン的効果(人気=業績Up)から主人公や敵キャラの能力がインフレしていき、ストーリーが冗長化・類型化していく現象が見られます。
『鬼滅の刃』『僕のヒーローアカデミア』『呪術廻戦』といった近年の人気作品の終盤を振り返ると、刺激を求めた強化の加速によりいずれも敵のボスがインフレ強敵化しすぎ、味方全員による総力戦への展開で決着するという一種類型化した結末に繋がっている様に感じます
(※これらの作品いずれも私自身は大好きです)。


資本主義と「ポスト成長」の接点

適度な成長は健全ですが、無限の成長を追い求めることは、崩壊の引き金となり得ます。
これはまさに資本主義が抱える構造的課題であり、同時に「ポスト資本主義」的な議論が生まれる理由でもあります。

「友情・努力・勝利」のサイクルも、こと漫画の世界においては、成長の推進力であると同時に、崩壊への危うさを内包しています。
だからこそ「どこで止めるか」「どう循環させるか」が決定的に重要なのです。


おわりに

少年ジャンプの「友情・努力・勝利」というシンプルなフレーズの中には、

  • 成長の希望

  • 資本主義の構造

  • ポスト資本主義的な課題

これらが凝縮されています。

みなさんは、この視点から見て思い浮かぶ作品やビジネスの事例はありますか?ぜひコメントで教えていただけると嬉しいです。


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著者:勝見 靖英(株式会社オーツー・パートナーズ取締役)

(株)オーツー・パートナーズ 取締役■Podcast「二番経営 〜組織を支えるNo.2の悲喜こもごも〜」パーソナリティ■コンサルタント歴20年以上、管掌業務:経営企画/会計/人事総務/組織開発/IT/マーケティング/広報等
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ビジネス・キャリア

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