急拡大するリユース市場が消費行動をどう変えるのか

使わなくなった服や家電、本やアウトドア用品が、捨てられずに次の持ち主へ渡っていく——そんな光景が当たり前になってきました。フリマアプリやオンラインのリユースサービスが広がり、リユース市場は「不用品処分の場」から「もう一つの購買チャネル」へと位置づけが変わっています。新品と中古を行き来しながら選ぶ消費行動が広がる中で、企業のマーケティングや製品設計の発想も大きく変化しています。
環境への配慮や家計防衛、モノにまつわるストーリーを重視する価値観が広がることで、リユースは単なる節約ではなく、ライフスタイルを表現する選択肢になりました。

 

リユース市場の規模拡大と経済へのインパクト

国内のリユース市場は、この十数年で明らかに存在感を増しました。リユース経済新聞の推計によると、2023年の国内リユース市場規模は約3兆1,227億円で、前年から7.8%増加し、2009年以降14年連続で拡大しています。 小売全体の販売額(約167兆円、2024年、経済産業省推計)と比べるとまだ一部に過ぎませんが、成長率に注目するとリユース市場の勢いは際立っています。

環境省などの資料では、2030年頃には国内リユース市場が4兆円規模に達するとの見通しも示されており、単なる一時的なブームではなく、構造的な成長トレンドとして位置づけられています。 その背景には、物価上昇による生活防衛意識に加え、オンライン取引の普及、商品自体の高性能化により、中古品でも十分に高い価値を維持できることなどが挙げられます。フリマアプリはこの動きを象徴する存在です。大手フリマアプリ「メルカリ」の国内マーケットプレイスにおける流通総額(GMV)は、2024年6月期に約1兆727億円と、単体で1兆円を超える規模に達しました。 一つのサービスでこれだけの中古品が個人間で動いていることは、リユースがもはや「特別な選択」ではないことを示しています。

経済的な視点で見ると、1つの商品が新品として販売された後、複数回の売買を経て長く使われるため、同じ資源から生まれる付加価値の総量が増えます。生産者・小売業者・個人がそれぞれの立場で売り手と買い手になり得ることで、モノを中心とした循環型の経済圏が形成されているところに、リユース市場の大きな特徴があります。

 

消費行動の変化と企業マーケティングへの影響

リユース市場の広がりによって、消費者の意思決定プロセスは確実に変わっています。購入前に「売却価値」「耐久性」「修理のしやすさ」「ブランドの中古流通量」などを考える人が増え、中古市場の評価が新品選びにも影響する状況が生まれました。消費者庁の調査では、エシカル消費への関心が高い理由として「環境や社会への負荷が少ないものを選びたい」が53.3%、「生活費を抑えられる」が50.4%、「社会課題の解決に寄与したい」が49.2%という結果が出ています。価値観・経済性・環境意識が同時に働く行動様式が一般化していることがうかがえます。

この傾向を踏まえ、企業のマーケティングも修正が必要になりました。新品だけを主軸に据える戦略では不十分で、製品のライフサイクル全体を俯瞰した設計が求められています。メーカーによる回収・整備・再販サービスの提供が増え、保証付きの認定中古が普及してきました。こうした取り組みは、消費者の不安を和らげつつ、ブランドへの信頼を高める役割を担っています。

購入後の行動も企業が関与する領域になりつつあります。下取り価格の提示、売却サポート、長期利用を前提にした修理プログラムなど、買ってからの選択肢を示す企業が増え、これが新品購入の後押しにもつながっています。リユースを敵と見なすのではなく、ブランド価値を広げる要素として受け入れる姿勢が重要性を増しています。

 
企業の責任と教育が生み出すサステナブルな選択

リユース市場が成長するほど、企業は環境負荷を考えた行動を求められるようになり、法制度や社会的要請の影響も強まっています。環境省の指針では製品回収や資源循環が企業の重要な役割と位置づけられ、ESG経営の中でも「循環」に関する取り組みが投資家から注目される項目になりました。製造段階から分解しやすい構造や長寿命化を意識する「サーキュラーデザイン」への関心が高まり、リサイクルしやすい素材の採用や部品交換のしやすさが新製品の評価項目として扱われつつあります。製品が長い期間、複数の人に使われることで初めて価値が最大化されるという視点が根づいてきたことが背景にあります。

加えて、消費者の行動を支える基盤として教育も重要です。学校教育ではSDGsや資源循環に触れる機会が増え、環境配慮の考え方が幼少期から身につきやすくなりました。行政による情報発信や地域での学習機会を通じて、日常の選択が社会全体に影響することを理解する土壌が広がっています。社会が持続可能な方向に進むためには、企業・行政・市民の連携が不可欠で、リユース市場の成熟はその象徴と言える存在です。誰もが環境負荷を意識した選択をしやすくなる仕組みが整うほど、リユースを起点とした循環型の価値観が定着していくでしょう。

 
まとめ:リユースが日常の消費を変える新しい基準

リユース市場が拡大し続ける背景には、節約や環境配慮といった要素だけでなく、モノを大切に循環させる価値観が浸透してきたことがあります。こうした流れは、消費者の判断基準を変え、企業の戦略にも線引きの見直しを促しています。新品と中古を柔軟に選び、所有と手放しを連続した行動として捉える生活者が増えるほど、循環型の経済はより強い構造になります。企業にとっては、新品を売るだけではなく、長く愛用される仕組みをつくることがブランド価値を支える要素になり、社会全体にとっても資源の有効活用につながります。

リユースが日常の選択肢として定着することで、消費のスタイルは確実に変わりつつあります。この動きは一過性ではなく、持続可能な未来へ向けた社会全体の変化の一部として広がっていくはずです。

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