できる人ほど仕事を抱え込むのはなぜ?タスク過多から抜け出す考え方

仕事が順調に進んでいるように見える人ほど、知らないうちに多くのタスクを抱え込んでしまうことがあります。会社の中で信頼を積み重ねてきた結果、「この人に任せれば安心」「対応が早い」という評価が集まり、業務が集中しやすくなるためでしょう。本人も責任感が強く、仕事の質を保ちたいという思いから、依頼を断ることにためらいを覚えがちです。

一方で、タスクを抱え続ける働き方は、長い目で見ると本人のパフォーマンスやキャリアに影響を及ぼす可能性があると考えられます。厚生労働省の調査では、業務量が多い状態が続く人は、疲労感や集中力低下を訴える割合が約1.4倍に高まる傾向が示されています。できる人ほど無理が表に出にくいため、問題が見過ごされやすい点も特徴ではないでしょうか。

 

タスク抱え込みがもたらす見えにくい影響

タスクを自分で処理することは、一時的には効率的に感じられるかもしれません。ただ、業務が常に詰まった状態では、考える余白が失われやすくなります。判断を急ぐ場面が増え、優先順位の見直しや改善のための時間が確保しにくくなるでしょう。その結果、重要度の高い仕事に十分な集中が向けられなくなることも考えられます。

さらに、業務が特定の人に偏ることで、他のメンバーが経験を積む機会が減り、組織としての成長速度が落ちる可能性があります。海外の人材開発調査では、業務委任が適切に行われているチームは、そうでないチームと比べ、プロジェクト完了までの時間が平均で約20%短縮されたという報告があります。個人の頑張りが、結果的にチームの非効率につながってしまうこともあるのではないでしょうか。

 

抱え込まないために意識したい考え方

タスク抱え込み問題を解決するためには、「任せること=手抜き」という思い込みを見直す必要があるでしょう。仕事を分担することは責任放棄ではなく、成果を最大化するためのスキルの一つと考えられます。
有効なのは、すべてのタスクを可視化し、重要度と緊急度の軸で整理することです。全体像が見えることで、自分が関与すべき仕事と、他者に委ねられる仕事の境界が明確になりやすくなるでしょう。

また、依頼の仕方を工夫することも重要です。単に仕事を振るのではなく、目的や期待する成果、期限を共有することで、相手の不安を減らし、任せた後の修正コストを下げる効果が期待されます。心理学の分野では、裁量が与えられた仕事の方が、当事者意識が高まり成果につながりやすいとされています。
任せる側が完璧を求めすぎず、7割程度の完成度を許容する姿勢を持つことも、長期的には双方の負担軽減につながるのではないでしょうか。

 

できる人が次の段階へ進むための視点

タスクを手放すことは、単なる業務調整ではなく、働き方やキャリアの転換点ともいえるでしょう。個人の処理能力で評価される段階から、チームや組織として成果を出す役割へ移行できるかどうかは、その後のキャリアに大きく関わります。多くの企業が管理職に求める要素として、業務委任や人材育成を挙げている点からも、その重要性がうかがえます。

仕事を抱え込まないことで生まれる時間は、判断の質を高め、視野を広げる余白になるはずです。できる人ほど、すでに「頑張り続けることで評価される段階」は越えているのかもしれません。自分一人で抱える働き方から、チームと成果を共有する働き方へ意識を移すことが、長く安定して力を発揮し続けるための鍵になると考えられます。

カテゴリ
ビジネス・キャリア

関連記事

関連する質問