副業市場のパラダイムシフト:人手確保から知見獲得への転換
副業は「解禁された働き方」から、企業の設計テーマへ変わった
2026年の日本で、副業は特別な選択肢ではなくなりつつあります。象徴的なのが、企業側の姿勢の変化です。パーソル総合研究所の調査(2025年10月公表)では、企業が社員の副業を認める「副業容認率」は64.3%に達し、過去最高水準となりました。さらに、副業する人材を外部から受け入れる「副業受入率」も29.1%へ上昇しています。
一方で「約半数」という結果もあります。エン・ジャパンが2025年10月に公表した企業向け調査では、社員の副業・兼業を「認めている/一部認めている」は49%でした。
数字が割れるのは、調査対象(企業規模・業種)や設問(全面容認か、一部容認を含むか)などの設計が異なるためです。ここから読み取れるのは、「どの調査でも増加傾向は共通している」一方で、「まだ企業間の温度差も大きい」という現実でしょう。
制度面でも地ならしは進み、厚生労働省は2018年1月にモデル就業規則を改定し、従来の一律な禁止規定を見直した経緯があります。副業が“例外”ではなく、前提として扱われ始めたことが分かります。
人手不足対策から外部知見の獲得へ、副業活用の目的が変わった理由
副業が広がり始めた頃、企業が期待していたのは不足する労働力の補填でした。しかし、いま主役になりつつあるのは「外の知見」です。DXや新規事業、業務改革のように正解が一つではないテーマでは、社内の経験則だけで回すほど判断が内向きになりやすいからです。
この変化は、個人側の動機にも表れています。パーソル総合研究所の同調査では、副業理由が「収入補填」中心から、「キャリア形成・自己実現」へシフトしていることが示されています。さらに、正社員の副業実施率は11.0%で過去最高となりました。
「副業は転職の手前にある」という言い方も、印象論だけではなくなっています。同調査では、副業経験者の6.7%が副業先へ転職したという結果が示され、20代では13.6%と高い水準でした。受入企業側も55.6%が“副業人材が自社に転職してきたことがある”と回答しています。
副業は、個人にとっては「相性確認の場」、企業にとっては「実務を通じた見極めの場」になり得る。そう捉えると、働き方の変化というより、採用と育成の境界が溶け始めた現象として理解しやすいでしょう。
副業が当たり前になるほど重要になる、リスク管理と仕組みづくり
副業が一般化するにつれ、企業に求められる管理の質も変わってきました。過重労働や情報漏洩といった初期の懸念は、制度整備やツールの進化によって一定の対応が進んでいます。現在の焦点は、副業経験をどう社内に還元するかという点に移っています。
せっかく外で得た学びが個人の中だけに留まってしまえば、企業にとっての価値は限定的です。そのため、副業で得た知見を共有する仕組みや、人事評価と連動させる動きが広がっています。副業が「黙認される活動」から「組織的に活かす活動」へと昇華しつつある状況だといえるでしょう。
さらに、副業マッチングのプラットフォームも進化しており、スキルや実績の可視化が進んだことで、企業と個人のミスマッチは減少しつつあります。こうした環境整備が進んだことで、副業は一部の挑戦的な人だけのものではなく、多くのビジネスパーソンにとって現実的な選択肢になったと考えられます。
副業容認率の先にあるのは、共創できる会社かどうかという評価軸
副業を認める企業が増えるほど、企業の競争は「許可したか」から「どう活かしているか」へ移ります。個人は社外で学び、会社はその学びを事業に変換する。この循環を回せる企業は、給与だけでは説明できない魅力を持ちやすくなります。
副業の普及は、働き手の側にもメッセージを突きつけます。副業は自由度を上げる一方で、自分のスキルを説明し、成果を示し、学びを言語化する力が求められます。会社に依存しないというより、会社と対等に学び合う関係へ近づく、と言ったほうが近いかもしれません。
今後は、複数の組織やプロジェクトに関わる働き方がさらに広がっていく可能性があります。その中で企業に求められるのは、知や人材を束ね、共創へと導く力でしょう。副業を前向きに受け止められる企業こそが、変化の激しい時代をしなやかに生き抜いていくと考えられます。
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