20代で投資すべきは資格より「愛嬌」?長期キャリアを支える無形資産

20代の成長を左右する「愛嬌」という力

20代というキャリアのはじまりの時期、多くの人は「何を身につければ評価されるのか」を真剣に考えます。専門知識や語学力、ITスキル、論理的思考力。どれも確かに大切で、将来の選択肢を広げる土台になるでしょう。ただ、数年働いてみると、少し違う景色が見えてくることがあります。成果を出し続ける人は、能力だけでなく、周囲から自然に応援されているという事実です。その背景にあるのが「愛嬌」という対人スキルではないかと考えられます。

愛嬌という言葉には、軽さや愛想の良さといったイメージがつきまといますが、ビジネスの場ではもっと本質的な意味を持ちます。それは、相手への敬意や素直さがにじみ出るコミュニケーションのあり方です。経験の浅い20代にとって、周囲の知恵や経験をどれだけ引き出せるかは成長速度を大きく左右します。完璧に見せようとするよりも、真剣に学ぼうとする姿勢のほうが、結果として多くの機会を引き寄せるのではないでしょうか。

 

感情が意思決定を左右する組織のリアル

私たちは仕事の世界を合理的なものだと捉えがちですが、実際の意思決定には感情が深く関わっています。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは、人の判断が直感に大きく左右されることを示しました。つまり「一緒に仕事をしたい」と感じるかどうかが、無意識のうちに選択へ影響していると考えられます。
心理学の「プラットフォール効果」も、そのヒントになります。1966年に行われた実験では、有能な人物が小さな失敗を見せたとき、親しみやすさが増すという結果が出ました。完璧無欠であるよりも、人間味が感じられるほうが好意を持たれやすいということです。少しの隙や謙虚さは、信頼を遠ざけるどころか、むしろ近づける要素になり得ます。
組織の中でも同じことが起きています。大事なプロジェクトの人選や商談の同席者を決めるとき、最終的な決め手になるのは「安心して任せられる」という感覚であることが少なくありません。ハーバード大学の長期研究でも、良好な人間関係が幸福度や仕事満足度に強く関係していることが示されています。職場でも、関係性の質が成果にじわりと影響しているといえるでしょう。

 

失敗を成長に変える土壌をつくる

挑戦がなければ成長はありませんが、失敗を恐れる環境では挑戦の回数が減ってしまいます。エイミー・エドモンドソンが提唱した「心理的安全性」は、安心して意見を言い、試せる状態を指します。Googleの「Project Aristotle」でも、高い成果を出すチームの共通点として心理的安全性が最も重要だと報告されています。
愛嬌のある人は、日頃のコミュニケーションの積み重ねによって、この安全性を高めやすい存在になります。失敗したときに「次は一緒に頑張ろう」と声をかけてもらえる関係性があれば、萎縮せずに再挑戦できるでしょう。挑戦の回数が増えれば経験も増え、成長が加速することが期待されます。もちろん、愛嬌は責任逃れとは違います。誠実に取り組み、自分の未熟さを認めて改善しようとする姿勢があってこそ、周囲は支えようとします。不器用でも真剣であること。その上に笑顔や素直さが重なったとき、人は自然と応援したくなるものです。

 

長期キャリアを支える無形資産としての価値

世界経済フォーラムは、今後数年で労働者のスキルの約40%が変化の影響を受ける可能性があると指摘しています。専門スキルは更新が必要になりますが、人から信頼される力や共感力は価値を失いにくい資産です。だからこそ、愛嬌は長期的に効き続ける力だといえます。20代で築いた信頼の土台は、役職が上がった後も支えになります。リーダーになったとき、威圧ではなく親しみやすさで人をまとめられる存在は、組織に安心感をもたらします。孤軍奮闘するのではなく、周囲と力を合わせて前に進むスタイルは、持続可能な働き方につながるでしょう。

ビジネスの本質は、人を動かすことです。論理は大切ですが、行動を後押しするのは感情の温度です。20代という柔軟な時期に、愛嬌を処世術ではなく、敬意と誠実さの表現として磨いていくこと。その積み重ねが、10年後、20年後の自分を支える力になると考えられます。目の前の仕事に真摯に向き合いながら、周囲への感謝を忘れずに過ごすこと。それが結果として、大きな信頼と成果へとつながっていくのではないでしょうか。

カテゴリ
ビジネス・キャリア

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