スマホ時代の新しい目の病気「VDT症候群」とは?

スマートフォンやパソコン、タブレットといったデジタル機器が私たちの生活に欠かせない存在となった現代。移動中にスマホを見て、職場ではパソコンを使い、帰宅後はタブレットで動画を見るなど、一日中画面を見続ける生活を送っている方も少なくありません。しかし、こうした生活の中で、気づかぬうちに私たちの目や体に負担が蓄積されていることをご存じでしょうか。その代表的な症状が「VDT症候群(Visual Display Terminal症候群)」です。

VDT症候群とは何か?

VDT症候群とは、長時間にわたりディスプレイ画面を見続けることによって起こる心身の不調を総称したものです。もともとはオフィスワーカーのパソコン作業に伴う職業病として注目されていましたが、近年ではスマートフォンの普及により、年齢や職業に関係なく、誰もが発症リスクを抱えるようになりました。
特にスマホは、画面が小さく、見る距離も近いため、目の筋肉にかかる負担が大きくなりやすいとされています。現代の私たちは、気づかぬうちに「見ること」を酷使しているのです。

具体的な症状とその影響

VDT症候群の主な症状には、目の疲れやかすみ、視界のぼやけ、充血、ドライアイなどの目の不調が挙げられます。これらは、目の筋肉や視神経が過度に緊張することによって引き起こされます。

また、長時間同じ姿勢で画面を見続けることにより、肩こりや首の痛み、頭痛、さらには倦怠感や集中力の低下といった身体的・精神的な症状も併発することがあります。
特に視神経への負担が蓄積すると、ピントの調節力が低下し、視力の低下を引き起こす可能性もあります。これを放置したままにすると、慢性的な眼精疲労や自律神経の乱れにもつながり、日常生活に支障をきたす恐れがあるため注意が必要です。

PC業務に従事する方は特に注意を

特にオフィスワーカーや在宅勤務者など、日常的にパソコン作業が中心となる職種の方は、VDT症候群のリスクがさらに高まります。業務の多くがディスプレイ画面を通して行われるため、目を酷使する時間が長くなるのはもちろん、同じ姿勢を保ち続けることで首や肩の筋肉も硬直しやすくなります。
実際、1日8時間以上パソコン作業を行う人のうち、6割以上が「目の疲れ」や「視界のぼやけ」を感じているという調査結果もあります。また、ビジネスシーンでは締切や業務効率のプレッシャーから、休憩を取らずに作業を続けてしまいがちですが、これがVDT症候群の慢性化を招く要因となります。

働く目を守るための工夫とは

業務中にできる簡単な対策としては、タスクの合間に意識的に目を閉じる時間を設けることや、画面の高さを調整して目線を自然な角度に保つことが挙げられます。特に、ノートパソコンを使用している場合は、外付けのモニターやスタンドを活用し、姿勢が前かがみにならないよう配慮することが大切です。
また、昼休みや会議の合間など、短時間でも外に出て自然光を浴びたり、遠くの景色を眺めたりすることも視神経のリフレッシュにつながります。ブルーライトカット機能のある眼鏡や、画面フィルターを活用するのも、目の疲労を軽減する有効な手段です。

自分でできる予防とケア方法

VDT症候群を予防するためには、まず使用時間を意識的にコントロールすることが大切です。厚生労働省の指針では、1時間に1回は15分程度の休憩を取ることが推奨されています。

具体的には、「20-20-20ルール」と呼ばれる方法が有効です。これは、20分ごとに画面から目を離し、20フィート(約6メートル)先を20秒間見るというシンプルな方法で、目の筋肉をリラックスさせる効果があります。また、画面の明るさを周囲の明るさに合わせて調整し、文字サイズを大きく設定することで目の負担を軽減できます。ドライアイ対策としては、意識的に瞬きを増やすほか、加湿器の利用や目薬の使用も効果的です。

病院での診断と治療

もし目の疲れが慢性化し、日常生活に支障をきたすようになった場合は、早めに眼科を受診することをおすすめします。病院では、視力や調節機能、ドライアイの程度などを総合的に検査し、視神経への影響がないかを確認します。
必要に応じて、専用のメガネや点眼薬の処方、生活習慣の見直し指導などが行われることがあります。自己判断で放置せず、医師の指導のもとで早めに対応することが、快適な視生活を守る第一歩となります。

まとめ:目をいたわる習慣が、未来の健康を守る

私たちは、便利さと引き換えに、目や体に負担をかける生活を無意識に選んでいます。VDT症候群は、現代人なら誰もが発症しうる「生活習慣病」のひとつです。しかし、日常の中で少しだけ意識を変えることで、そのリスクを大きく減らすことができます。
目を閉じて一息つく、画面を見ない時間を意図的に作る、定期的に眼科を受診する――そうした習慣が、数年後の自分の健康を守る大きな力となります。デジタル時代だからこそ、アナログな「目の休息時間」を大切にしていきましょう。

カテゴリ
パソコン・スマートフォン

おすすめ

記事がありません。

関連記事

関連する質問