スマホ利用時間と学力の関連性、最新研究から読み解く
学生に浸透するスマートフォンと学習環境
スマートフォンは、もはや学生の生活から切り離せない存在となりました。SNSでの交流、動画視聴、ゲームのほか、学習アプリやオンライン授業にも活用され、日常のあらゆる場面に組み込まれています。総務省の「通信利用動向調査」によれば、10代後半から20代前半のスマホ保有率は95%を超え、1日の平均利用時間は3〜4時間に及びます。大学生に限れば6時間以上利用する人も珍しくなく、朝から深夜まで常にスマホに触れているという状況が広がっています。
一方で、長時間利用が学力や思考力にどのような影響を及ぼすのかについては、教育関係者や研究者の間で議論が続いています。便利さを享受できる一方で、集中力を奪い、学習効率を下げる可能性があると指摘されているためです。
利用時間と学力低下を示す研究データ
国内外の調査結果からは、スマホ利用と学力の関連性を裏づける具体的な数値が示されています。東京大学とベネッセ教育総合研究所が2023年に行った調査では、中高生を対象に学習時間とスマホ利用時間を比較したところ、1日5時間以上スマホを使用する生徒は2時間未満の生徒に比べ、学力テストの平均点が国語で12点、数学で15点低いという結果が得られました。特に論理的思考や記述力を必要とする科目で差が大きいことから、スマホの長時間利用は学習の基盤部分に影響していると考えられます。
海外でも同様の傾向が確認されています。米国ミシガン大学の研究では、高校生を対象にSNS利用と学業成績を分析した結果、1日3時間を超えてSNSを利用する生徒は、課題提出の遅れや集中力低下を示す割合が20%以上高いと報告されています。英国ロンドン大学の研究チームも、スマホ依存傾向が強い学生は短期記憶力が平均8%低下し、読解力にも影響を及ぼす可能性があると発表しました。
ただし、スマホが常に学力を阻害するわけではありません。英語学習アプリやオンライン教材を使ったケースでは、単語テストの正答率が平均で15%上がったという調査結果もあります。つまり、問題は「利用時間の長さ」よりも「利用の仕方」にあるといえるでしょう。
ゲーマー世代にみる利用スタイルの差
学生の中には、スマホを娯楽の中心に置く層と、パソコンを通じてゲームや学習を行う層が存在します。NPO法人の教育調査によると、高校生のPCゲーム利用時間は平均2時間前後であるのに対し、スマホゲーム中心の生徒は3.5時間に達していました。テストの成績を比較すると、スマホゲーム利用が長い層ほど数学や理科の得点が低い傾向が見られます。ゲーム自体が問題というより、スマホの特性が影響を与えていると考えられます。
スマホは通知やSNSの更新など外部からの刺激が多く、学習の合間に「ちょっとだけ」と手に取る習慣が積み重なり、集中を細切れにしてしまいます。これに対し、パソコンは学習や資料作成といった能動的な活動に結びつくことが多く、知識やスキルを積み上げやすいという側面があります。ゲーマーの世界でも同じで、PCゲームは長時間没頭する一方でプレイヤー層が限定的であり、スマホほど広範囲の学生に影響を及ぼすことはありません。利用スタイルの違いが、思考力や学習態度に少なからず影響していることは見逃せないポイントです。
学力向上につなげるための活用法
スマホの影響を正しく理解するためには、単純に「使うな」と制限するのではなく、どう活用するかを考える視点が求められます。文部科学省の調査によれば、1日の利用時間を2時間以内に抑えている生徒は学力テストで安定した成績を示し、学習意欲も高い傾向が見られました。適度な利用は、生活と学習のバランスを保つうえで効果的といえます。
教育現場では、授業でのスマホ活用が少しずつ広がっています。オンライン教材や辞書アプリを使うことで、自分のペースで学べる環境を整えたり、AIを活用した学習支援アプリで弱点を効率的に補ったりする取り組みが進んでいます。家庭でも、SNSや動画視聴の時間を区切るルールを共有すれば、子どもが主体的に利用を管理できるようになります。
スマホは学力を下げるリスクを持つ一方で、使い方次第では新しい学びを支える強力な道具となります。利用スタイルを工夫し、学習の一部として適切に取り入れることが、今後の教育にとって重要な課題といえるでしょう。
まとめ
スマホ利用時間と学力には密接な関連性があり、長時間の使用は集中力や基礎学力に悪影響を及ぼす可能性が国内外の研究で示されています。特に、注意を細切れにするスマホ特有の特性が、学習習慣に影響を与えている点は大きな課題です。ただし、学習目的での活用は成果を上げる効果もあり、使い方によっては学力向上につながることも明らかになっています。重要なのは利用時間をただ制限するのではなく、学習と娯楽のバランスを整え、主体的に管理することです。スマホを生活の一部に取り込みながら、学習の味方として活かす姿勢こそが、学生にとって将来の学力や思考力を支える基盤になるでしょう。
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