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「結婚しなくても子どもを持ちたい」——新しい家族の形と少子化の未来

「結婚しなくても、子どもを持って育てたい」。 そんな声が、いま確実に社会の中で広がりつつあります。 かつて日本では、家族といえば「結婚して子どもを持つ」というスタイルが当然としてきました。 しかし、価値観の変化とともに、結婚に縛られない多様な家族の形が見え始めています。

結婚に縛られず親になるという選択

今年の調査によると、20代〜30代の未婚者のうち約6割が「将来的に子どもを持ちたい」と考えています(国立社会安全・人口問題研究所調べ、2022年)。しかし、その中には「結婚」という形にこだわらず、パートナーと協力しながら子どもを育てたいと考える人や、経済的・精神的に自立したシングルで子育てを望む人も含まれています。さらに、LGBTQの人々の間でも、子どもを持ちたいという願いは強く、民間の調査(にじいろかぞく調べ、2023年)では、同性カップルの約45%が将来的に子どもを持つことを希望していると回答しています。

制度にこだわった「結婚前提」の壁

日本の育児支援制度の多くは、「結婚している夫婦」が前提に設計されているのが現状です。 例えば、出産育児一時金や児童手当、育児休業制度などは法的な婚姻関係を基準にしており、未婚や同性カップル、パートナーシップ制度を利用する家庭にとっては、利用しにくいケースが注目されます。

実際に、未婚の母親が子どもを出産する場合、戸籍の手続きや父親の認知、養育費の取り決めにおいて不利な立場に置かれることも少なくありません。 それに加えて、周囲からの偏見や孤立感が精神的な負担となり、安心して子育てができる環境とはいえないのが現実です。

海外では「家族の多様化」が少子化対策に直結

一方、海外では既に多様な家族形態への対応が進んでいます。 同様にスウェーデンでは、婚姻せずに共同生活する「サムボ」制度が獲得されており、未婚でも子育てに関する法的・社会的支援を受けられます。 出生率は1.6前後と日本より高く、育児休暇や男女平等な子育て支援制度も充実しています。また、カナダやオランダなどでは、同性カップルの養子縁組や人工精授、里親制度も整備されており、LGBTQの人々が法的に親となることが可能です。子どもを育てる意志を尊重し、家族の形に関係なく支援する姿勢が社会全体に浸透しています。

日本社会はどこへ向かうべきか

日本が少子化という難題に真正面から向き合うためには、「結婚した夫婦」だけを対象から脱却する対策が必要です。 多様な家族の形を尊重し、未婚者、シングル、LGBTQカップル、共同育児など、あらゆる親子関係を支援対象とすることが求められます。

そのためには、まず以下のような制度整備が急務です。

  • 未婚や同性カップルでも親権を共有できる法の整備

  • 子育てに関する給付や支援制度を、婚姻状況に応じて平等に適用

  • 保育や教育の現場での差別的対応の排除

  • 社会全体への啓発活動と教育の強化

また、経済的な不安から子育てを諦めるケースも多いため、住宅支援や成果補助、育児と仕事の両立支援など、生活基盤を整えるサポートも含まれます。

「自分らしい家族」の実現が未来をつくる

「結婚しないと子どもを育ててはいけない」という思い込みが解けたとき、社会は一歩前へ進むのかもしれません。 大切なものは、結婚の前提ではなく、「子どもを大切に育てたい」という意志と環境です。
多様な価値観が共存する社会では、どの家族の形も尊重され、支援されるべきです。そして、誰もが「自分らしい家族の形」を選べることが、社会の持続可能性と幸福度を高める鍵になるのではないでしょうか。

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