梅雨に体がだるいのはなぜ?東洋医学で読み解く湿邪と美容への影響

梅雨に入ると、毎年のように「なんだか体が重い」「朝起きてもすっきりしない」「肌がくすむ気がする」など、はっきりとした病名はつかないけれど不快な症状に悩まされる方が多くなります。とくに女性にとっては、体のだるさに加えて、むくみや肌トラブルといった美容面の不調も感じやすくなる時期です。
これらの不調は、気温や湿度の変化に身体がうまく適応できないことが原因とされがちですが、東洋医学では“湿邪(しつじゃ)”という概念で説明されます。湿邪とは、身体に悪影響を及ぼす「湿気」のことであり、気血水の巡りを滞らせてさまざまな症状を引き起こすと考えられています。

湿邪とは何か──体を重くする「見えない敵」

東洋医学において、体の不調は「内因」と「外因」によって引き起こされると考えられています。外因のひとつである「六淫(ろくいん)」──風・寒・暑・湿・燥・火──のうち、梅雨の主な原因とされるのが「湿邪」です。湿邪はその名の通り、湿気がもたらす邪気であり、「重たく、粘り気があり、滞る」性質をもっています。このため、体内に侵入すると水分代謝を妨げ、体の内側に余分な水をためこませます。その結果、次第に巡りが悪くなり、体がだるくて動くのがおっくうになる、頭がぼんやりとして集中できない、食欲が落ちて胃が重い、便がゆるくなったりむくみやすくなったりする──こうした変化はすべて、湿邪の典型的な影響とされています。

また、湿気によって脾(ひ)の機能が低下すると、体に必要なエネルギーや血がうまく生成されず、結果として「気虚(ききょ)」や「血虚(けっきょ)」といった状態に陥ることもあります。これにより、集中力の低下や慢性的な疲労感、そして女性にとっては肌のハリ不足やくすみといった美容面の悩みにもつながっていきます。

梅雨の不調と美容トラブル——湿邪は内側からやってくる

湿邪の影響を受けやすい臓腑として、東洋医学では「脾(ひ)」が挙げられます。脾は食べたものから「気(エネルギー)」や「血(栄養)」を生み出し、水分の運搬を担う重要な存在です。
湿邪が脾に影響を及ぼすと、その働きが鈍り、体に必要なエネルギーを生み出す力が弱まってしまいます。結果として体はだるく、疲れやすくなり、同時に水分代謝も停滞するため、むくみや重だるさが起こるのです。

このような巡りの悪さは、美容にも深く関係しています。脾の働きが弱まることで栄養が肌に届かず、肌のくすみやたるみ、吹き出物といったトラブルが現れやすくなります。水分が排出されずにたまることで顔がむくみ、フェイスラインがぼやけてしまうこともあります。また、気血水の流れが滞ることで、肌の透明感が失われ、どんよりとした印象になりがちです。これは単なる肌表面の問題ではなく、内臓の不調が現れているサインとも言えます。

湿邪を排出して巡りを整える、東洋医学的セルフケア

湿邪の侵入を防ぐ、あるいは体外へ排出するためには、まず脾の働きを強化し、体内の巡りを促す生活習慣を意識することが大切です。その第一歩として、食生活を見直すことが挙げられます。

東洋医学では「健脾利湿(けんぴりしつ)」、すなわち脾を強化し湿を除く食材を取り入れることが推奨されます。はと麦、小豆、山芋、生姜、陳皮(乾燥したみかんの皮)、シソ、ミョウガなどは、水分代謝を助ける食材としてよく知られています。これらを食事に取り入れることで、体の内側から湿邪に強い体づくりが可能になります。

体を冷やさないことも重要です。冷たい飲み物やアイスクリームなどは脾の機能を弱め、湿の排出を妨げる原因となります。特に朝や夜の時間帯には、温かいお茶やスープなどを選ぶことで、胃腸の働きを支えることができます。軽いストレッチやヨガ、朝のウォーキングなど、汗をかかなくても“気”を巡らせる動きが、湿邪の停滞を防ぐ鍵となります。また、ぬるめのお湯での入浴は自律神経を整え、体の冷えを和らげ、湿の排出を後押ししてくれます。

美容も体調も整う、梅雨を味方につける過ごし方

梅雨に感じるだるさや肌の不調は、環境に敏感に反応する私たちの体が発している大切なサインです。東洋医学の知恵は、そうしたサインを「異常」ではなく「自然な変化」として受け止め、自分自身の内側と丁寧に向き合うことを教えてくれます。

無理に頑張って乗り越えようとするのではなく、「湿邪を受けやすい時期だからこそ、体をいたわる」と意識を切り替えることが、自律神経の安定やストレス軽減にもつながります。湿邪を敵とみなすのではなく、季節と調和しながら健康と美容を保つ方法を探る──それが東洋医学のやさしいアプローチです。

体の巡りが整えば、肌は自然と輝きを取り戻し、心も軽やかになります。巡る力は、美しさと健やかさの源です。今年の梅雨は、湿邪と賢く向き合いながら、自分の体をより深く知る時間にしてみてはいかがでしょうか。

カテゴリ
美容・ファッション

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