メンタルヘルスと食の深い関係:日常に溶け込む「ゆる薬膳」の取り入れ方
「ゆる薬膳」という考え方
毎日の食事は、私たちの身体をつくる基盤であり、明日の気力や集中力を左右する大切な要素です。ただ、栄養バランスを完璧に整えようと意気込みすぎると、かえって負担になってしまうことも少なくありません。そこで、無理なく続けられる健康習慣として注目を集めているのが「ゆる薬膳」という考え方です。
ゆる薬膳は、中国伝統医学である中医学の知恵をベースにしながらも、現代の生活に合わせて柔軟に取り入れる点が特徴といえます。特別な生薬や難しい調理法を必要とするものではなく、身近な食材を通じて体調を整える姿勢そのものが中心にあります。
中医学では「医食同源」という言葉が重視されてきました。これは、日々の食事が治療と同じほど身体に影響を与えるという考え方です。雨が続いて身体が重く感じるときに小豆やハトムギを意識する、目の疲れを感じた日に黒ごまやクコの実を選ぶ。そのような小さな判断の積み重ねが、ゆる薬膳の本質だといえるでしょう。
身体の声を聞き、自分の体質を知ることから始める
ゆる薬膳を実践するうえで欠かせないのが、「今の自分の状態を知る」という視点です。中医学では、人の身体は「気・血・水」という三つの要素で成り立っていると考えられています。このバランスが崩れることで、病気未満の不調、いわゆる未病が現れるとされてきました。
現代人に多いのは、ストレスによって気の巡りが滞る「気滞」や、慢性的な疲労や栄養不足による「血虚」の状態です。厚生労働省の調査でも、睡眠の質の低下や疲労感を抱える人が多いことが示されています。イライラしやすい、ため息が増えたと感じるときには、香りの良い春菊や柑橘類を取り入れる工夫がおすすめです。
また、冷えに悩む人は少なくありませんが、単に身体を温めるだけでは根本的な改善に至らない場合もあります。ショウガやシナモンのように、身体の内側から熱を生み出す力を補う食材を日常的に取り入れることで、徐々に体質が整っていくと考えられます。
体質は固定されたものではなく、季節や生活環境によって変化します。その変化に気づき、自分に問いかける習慣を持つこと自体が、ゆる薬膳の大切な一歩なのかもしれません。
四季の流れに寄り添う、旬の食材の力
日本の四季は、私たちの身体にも確かな影響を与えています。ゆる薬膳では、その季節ごとの特徴を踏まえた食材選びを重視します。
春は自律神経が乱れやすく、冬に溜まったものを外へ出す時期です。菜の花やふきのとうなど、ほろ苦さを持つ食材が身体を整える助けになります。夏は熱がこもりやすく、トマトやキュウリなどの夏野菜が熱を冷まします。スイカに塩を添える昔ながらの食べ方も、理にかなった知恵といえるでしょう。
秋は乾燥の影響で呼吸器系が弱りやすくなります。レンコンや梨、白きくらげなど、潤いを与える食材が肌や喉を守ってくれます。冬は生命力を蓄える季節であり、黒ごまや黒豆、根菜類が身体の土台を支えてくれます。
旬の食材は、栄養学的にも非旬期に比べてビタミンやミネラルが豊富であるとされています。店頭で今いちばん輝いて見える食材を選ぶことが、結果として身体を整える選択につながるのではないでしょうか。
無理なく続く、暮らしのなかの薬膳マインド
ゆる薬膳を長く続けるコツは、頑張りすぎないことにあります。毎日完璧な献立を目指す必要はありません。外食や惣菜を選ぶ場面で、少し体調を意識するだけでも十分です。
食事の環境も大切な要素です。慌ただしい「ながら食べ」ではなく、ひと口ずつ味わう時間を持つことで、消化吸収の効率も高まります。その時間は、心を整える穏やかなひとときにもなるでしょう。
ウェルビーイングという言葉が広まるなか、ゆる薬膳は自分の身体を自分で整える感覚を取り戻す手段として注目されています。白湯を飲む、乾物や木の実を常備するなど、日常に取り入れやすい工夫は数多くあります。こうした小さな選択の積み重ねが、自分の身体を自分で整えているという感覚につながり、未来の健康につながっていくはずです。
身体が整うことで、日常の景色が少し違って見えてくるかもしれません。自分をいたわる習慣が、穏やかな変化をもたらしてくれることを願っています。
- カテゴリ
- 美容・ファッション
