朝食を抜いて太る人と太らない人、その差をつくる生活習慣とは
結論から言うと、犯人は朝食じゃない
朝食欠食と体重増加の間に、直接的な因果関係はないと考えられます。これは「朝食を抜いても大丈夫」という単純な話ではありません。「朝食を抜いたことで起きる行動の連鎖が問題を生む」という、一段深い話です。
発端は1992年にアメリカで行われた大規模な調査です。朝食を抜く人ほど肥満率が高いというデータが出たことで、「朝食欠食=太る」という図式が一気に広まりました。でもここに落とし穴があって、この調査が示しているのは「一緒に起きている事実」であって、「原因と結果」ではありません。朝食を抜く人は、深夜に食事をしていたり、運動をほとんどしていなかったり、睡眠が慢性的に足りていなかったりする傾向があります。太った本当の原因はそちらにあった可能性が高く、朝食を抜いたこと自体が直接の原因とは言い切れません。
「でも朝食を食べると代謝が上がるって聞いたことがある」という方もいるでしょう。これは半分本当で、食事をとると体温が上がってエネルギー消費が一時的に増える「食事誘発性熱産生」という現象があります。ただし増える消費量は食べた量の約10%程度。朝食400kcalを食べたとして、消費されるのはせいぜい40kcal前後です。この40kcalのために朝食を食べるべきかどうかは、生活習慣全体と合わせて考えないと意味がありません。
太る仕組みを3段階で掘り下げると見えてくること
朝食を抜いた後、体の中では何が起きているのかを順番に見ていきましょう。
まず起きるのは「グレリン」という食欲ホルモンの増加です。空腹が続くほど分泌量が増え、次の食事で「もっと食べたい」という衝動が強くなります。2013年の栄養学専門誌の研究では、朝食を抜いた人は昼食で平均200kcal多く食べていたと報告されています。毎日200kcalの差が積み重なると、1ヶ月で6000kcal、体脂肪に換算するとおよそ800グラム分の蓄積になる計算です。
ではなぜ、同じように朝食を抜いても食べすぎない人がいるのでしょうか。ここで関係してくるのが睡眠です。睡眠が6時間未満の状態では、食欲を抑えるレプチンというホルモンが減り、グレリンがさらに増えることが複数の研究で確認されています。シカゴ大学の研究では、睡眠を制限された人は通常通り眠った人より1日平均300kcal多く食べていたという結果が出ています。つまり「朝食を抜くと昼に食べすぎる」問題の裏には、多くの場合、前の晩の睡眠不足が隠れています。
さらにその睡眠不足の背景を辿ると、深夜の食事習慣にたどり着きます。夜遅くに食べると、脂肪を蓄えやすくする体内タンパク質「BMAL1(ビーマルワン)」の分泌が活発な時間帯と重なるため、昼間に同じものを食べるより太りやすくなります。深夜に食べる→よく眠れない→翌朝食欲がない→朝食を抜く→昼に食べすぎる→また深夜に食べる、というサイクルが回り続けることで、「朝食を抜く人は太りやすい」という統計上のパターンが生まれているわけです。朝食欠食はこのサイクルの通過点に過ぎません。
太る人と太らない人を分ける条件とは
日本の研究グループが2020年に発表したデータでは、1日の総カロリーを一定に保ちながら朝食の有無だけを変えた場合、8週間後の体重変化に統計的な有意差は確認されませんでした。食べる時間よりも、総量と時間帯のほうが体重管理においては決定的な要因です。
朝食を抜いても太りにくい人の条件を具体的に整理すると、以下の通りです。昼夕食の食べすぎが起きていないこと、夜22時以降の食事を避けられていること、週2〜3回以上の筋トレや有酸素運動で筋肉量を維持していること。これら三つが揃っている場合、朝食の欠食が直接的な体重増加につながるリスクは低いと考えられます。
逆に、朝食を抜くリスクが高いのは、運動習慣がなく筋肉量の少ない女性です。空腹時間が長くなると体は筋肉のタンパク質をエネルギーとして分解し始めます。筋肉量が落ちれば基礎代謝も低下するため、同じ食事量でも太りやすくなる悪循環が生まれます。「朝食を抜いたのに痩せるどころか太った」という経験のある人は、このパターンに当てはまっている可能性が高いでしょう。
自分に朝食が必要かどうかを判断する問い
ここまで読んで「じゃあ自分はどうすればいいの?」と思った方のために、シンプルな判断基準をお伝えします。
夜21時までに夕食を終えられているか、睡眠を7時間以上とれているか、週2回以上体を動かす習慣があるか、昼食や夕食で食べすぎを自覚していないか。この4つすべてに問題がないなら、朝食を抜いても体重管理への影響は小さいと考えられます。
一つでも当てはまるものがある場合は、朝食でタンパク質を意識的に摂ることをおすすめします。卵2個とギリシャヨーグルト100gで約20gのタンパク質がとれ、これだけでグレリンの過剰分泌をかなり抑えられます。朝にどうしても食欲がなければ、プロテイン飲料を一杯飲むだけでも十分な代替になるでしょう。
「朝食を食べるか食べないか」という問いに正解はありません。それより先に、夜の食事・睡眠・運動という生活の土台を整えることが、体重管理と美容の両立に向けた一番の近道となるでしょう。
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