仕事に家庭、さまざまな人間関係――現代社会において、時間に追われながら日々を過ごしている方は少なくありません。通勤・仕事・家事・育児と、気づけば一日があっという間に終わってしまう――そんな毎日を送る忙しい人にこそ、ぜひ取り入れていただきたいのが「花と健康」を結びつけた新しいライフスタイルです。

花の力が心と体に与える影響とは？

「花を飾ることが健康につながる」と聞くと、少し大げさに感じる方もいるかもしれません。しかし、花が私たちの精神状態に与える影響は、すでに多くの研究で明らかになっています。花を目にすることで脳内のドーパミンやセロトニンといった「幸福ホルモン」の分泌が促されることがわかっており、これは自然と気分を明るくし、ストレスを和らげてくれる効果へとつながっているのです。
また、花の持つ香りは嗅覚を通じて自律神経に働きかけ、交感神経の過剰な緊張を鎮めてくれます。特にラベンダー、カモミール、ジャスミンなどの香りにはリラックス効果があるとされており、不安感や不眠といった症状の緩和にも役立つとされています。

忙しい人でも続けられる、花のある暮らし

「花を飾るのは手間がかかる」「時間も余裕もない」と感じる方にこそ、無理なく楽しめる花の取り入れ方を知っていただきたいです。たとえば、週末の買い物のついでに一束の季節の花を購入し、キッチンや洗面所、デスクに飾るだけでも、空間の印象がぐっと明るくなり、自分自身も癒されるのを実感できるはずです。
水替えが難しいと感じる方には、ドライフラワーやプリザーブドフラワーもおすすめです。これらは手間いらずで長く楽しむことができ、インテリアとしてもおしゃれな存在感を放ってくれます。忙しい朝の時間には、ミントやシトラス系のアロマとともに花を飾ると、シャキッとした目覚めが得られ、夜にはローズやゼラニウムなど、落ち着いた香りとともに一日の疲れを和らげてくれるでしょう。

花とともに季節のリズムを感じる暮らし

四季折々の花を暮らしに取り入れることは、単なる装飾以上の意味を持ちます。春にはチューリップやスイセン、夏にはひまわりやアジサイ、秋はコスモスやダリア、そして冬にはシクラメンやポインセチアといったように、季節ごとに花を選ぶことで自然とその時期を感じながら日々を送ることができます。
こうした季節の変化を意識することは、心の安定にもつながります。日々の忙しさに追われていると、いつの間にか季節の移ろいすら感じる余裕を失ってしまいがちですが、花は静かに私たちに「今」を知らせ、心を今ここに戻してくれる存在なのです。

医療や福祉の現場でも注目される“花セラピー”

近年では、医療や介護の現場でも「フラワーセラピー」が注目され始めています。病院や福祉施設でのアクティビティとして、花の香りや色彩に触れたり、実際にアレンジメントを楽しんだりすることが、患者や高齢者のストレス緩和、心身の活性化につながると報告されています。これは、花が単なる観賞用ではなく、私たちの“生きる力”に寄り添う存在であることを示しています。
自宅にいながらでも、こうした効果を取り入れることは可能です。たとえば、在宅ワークの合間に、ほんの数分だけ花をじっと見つめて深呼吸してみる――それだけで、目の奥の緊張がほぐれ、気持ちが落ち着いてくるのを感じられるはずです。

忙しい日々に“花と健康”を取り入れるという選択

健康とは、単に病気でないことを意味するのではなく、心も体も整っている状態を指します。そうした“ウェルネス”を目指す上で、花のある生活はとても有効な手段です。慌ただしい毎日でも、自分自身をほんの少し立ち止まらせてくれる花の存在は、心の余白をつくり、暮らしの質を底上げしてくれます。
大げさなことをしなくても大丈夫です。一輪の花を飾ることから始めてみてください。それがやがて、香りを楽しむ時間になり、季節を感じる習慣へとつながり、結果として、あなた自身の心と体をゆっくりと整える“健康の習慣”へと育っていきます。

おわりに

「時間がない」「余裕がない」と感じるからこそ、ほんの少し立ち止まって、花とともに深呼吸する時間を持ってみてはいかがでしょうか。花は決して多くを語らず、ただそこにあるだけで、私たちに大切なことを教えてくれます。それは、健やかに生きるということの本質かもしれません。