ソロレジャーの市場拡大:一人で楽しむ旅行・アクティビティの新潮流

「一人で過ごす時間を、もっと自由に、もっと豊かに楽しむには?」ーーそんな問いに応える新しいライフスタイルとして、「ソロレジャー)」が注目を集めています。

かつて、旅行やアクティビティは家族や友人と共有するのが当たり前でしたが、現代では「一人で過ごす時間」そのものに価値を見出す人が急増しています。SNSや共感型メディアの影響もあり、「一人=孤独」という否定的なイメージは次第に薄れ、「一人=自由で豊か」という前向きなイメージが広がっているのです。

この変化は、趣味やレジャーに限らず、旅行、ホテル、地域観光など幅広い業界に新たな需要を生み出しています。

 

拡大するソロレジャー市場とユーザー層の変化

2023年に株式会社JTBが実施した「一人旅に関する意識調査」では、全国の20〜60代のうち、**37.1%が「年1回以上、一人旅をしている」**と回答しました。特に20代後半から40代前半の女性層では、一人旅の経験率が年々増加しており、都市部を中心に「ソロ活」がライフスタイルとして定着しつつあります。

これは単なる一時的なブームではなく、長期的な市場形成の兆しと見られています。背景には、働き方の柔軟化や未婚率の上昇、趣味の多様化に加え、SNSによる情報共有の浸透があります。「#ソロ活」「#ひとり時間」「#一人旅」などのハッシュタグはInstagramで累計100万件以上投稿されており、「ひとりでも楽しめる」を証明する投稿が、次のソロユーザーを後押ししています。

 

SNSとメディアが後押しする「共感」の時代

ソロレジャーが広がる原動力の一つが、SNSやYouTubeといった個人発信メディアの存在です。Vlog形式で一人旅の楽しみをリアルに紹介する動画や、「ソロ温泉旅」「ソロフェス」などの体験レポートが、同じ価値観を持つ人々の共感を集めています。

とくにZ世代やミレニアル世代の間では、「誰かと行く」よりも「自分が行きたいから行く」という行動原理が重視される傾向があり、ソロレジャーはその象徴的な選択肢となっています。
さらに、「人と一緒でなければならない」という社会的プレッシャーから解放される場として、ソロレジャーはメンタルヘルスの観点でも注目されており、自己肯定感の向上やストレス解消にも寄与しています。

 

一人で楽しめる施設と体験の進化

市場の成長に呼応するかたちで、各業界もソロユーザー向けのサービス展開を進めています。

たとえば温泉地では、一人専用の露天風呂付き客室や夕食を個室で提供するプランが登場しており、コロナ禍以降、「静かに過ごしたい」というニーズにマッチしています。

また、アクティビティ分野では、東京都内で展開されている陶芸教室やサウナ施設、ボルダリングジムなどが「一人利用歓迎」の明示をすることで、参加のハードルを下げています。2023年の文化庁のデータによると、国内アクティビティ参加者のうち15.2%が「一人での参加が最も心地よい」と回答しており、今後もこの層へのアプローチは拡大していくと考えられます。

 

地方観光と経済効果にも波及

ソロレジャーの波は地方にも広がっています。とくに平日や閑散期の宿泊需要の底上げに寄与しており、たとえば長野県の軽井沢町では、「一人旅専用プラン」導入後、平日稼働率が前年比+14%を記録しました。

これは団体旅行とは異なる需要を掘り起こした好例であり、地域の宿泊・飲食・体験業に新たな収益源を提供しています。
さらに、ひとりで楽しめることを前提とした「リトリート施設」や「自然療養型ホテル」の整備も進んでおり、「誰かと楽しむ」ではなく「自分と向き合う」ための旅行が新たな価値として評価されはじめています。

 

テクノロジーと融合する「スマートソロ」時代

ソロレジャーは、今後さらに進化していくと考えられます。AIによる旅程提案、スマートロックを用いた非対面チェックイン型ホテル、VRを活用したバーチャル下見体験など、デジタルとの親和性も高く、ユーザーは自分に最適な体験を簡単に見つけられる時代になりました。
「一人でも、ここまで楽しめる」と感じられる体験が、これからのレジャー市場の新常識になる日は、そう遠くないのかもしれません。

カテゴリ
趣味・娯楽・エンターテイメント

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