ロジカルシンキングを遊びで鍛える、ボードゲームの楽しみ方

デジタルに囲まれた日常で、私たちが失いかけているもの

私たちの暮らしは、スマートフォンやオンラインサービスによって、かつてないほど便利になりました。連絡は瞬時に届き、遠く離れた人とも画面越しに会話ができます。その一方で、言葉は交わしているはずなのに、気持ちがうまく伝わらないと感じる場面が増えてはいないでしょうか。

文字や映像を通したやり取りでは、声の間合いや視線の動き、沈黙に含まれる意味が抜け落ちやすく、意図しない誤解が生まれることも少なくありません。

こうした感覚のずれに気づいたとき、あらためて価値を持ち始めるのが、同じ空間で何かを共有する時間だと考えられます。その中でも、静かな広がりを見せているのが、ボードゲームという存在です。とくに欧州発のボードゲームには、運よりも思考や対話を重視するものが多く、限られた資源をどう使うか、他者とどう関係を築くかが問われます。その構造は、現代の仕事や組織の在り方とどこか重なって見えてきます。

盤を囲むことで見えてくる、人の考え方の違い

ボードゲームをしていると、参加者それぞれの考え方が自然と表に出てきます。慎重に様子を見てから動く人、多少のリスクを取ってでも先に進む人、周囲の動きを見ながら調整役に回る人。

普段の職場では役割や立場に隠れて見えにくい一面が、ゲームの中では驚くほど分かりやすくなります。

こうした違いが共有されると、「なぜあの人はあの判断をしたのか」が理解しやすくなります。考え方の背景が見えることで、意見の食い違いも対立ではなく違いとして受け止めやすくなるでしょう。

また、ゲームでは失敗しても大きなリスクはありません。うまくいかなかった手を笑いながら振り返り、「次はどうする?」と話し合える時間が生まれます。この安心感が、率直な意見交換を支える土台になっていきます。

遊びながら育つ、視野の広さと対話の感覚

多くのボードゲームでは、自分の都合だけで行動すると、思うように進まなくなります。相手がどのような選択をしそうか、盤面全体がどう変化するかを想像しながら判断する必要があります。この視点の切り替えは、日常生活においても欠かせない力です。

人との関係は、自分の考えだけで成り立つものではありません。相手の立場や背景を想像できるかどうかで、会話の行方は大きく変わります。

交渉や協力が求められるゲームでは、相手にとっての利点を示しつつ、自分の目的もかなえる道を探ります。言葉の選び方やタイミングによって、関係が深まることもあれば、すれ違いが生じることもあります。この経験は、頭で理解するだけのコミュニケーション論とは異なり、身体感覚として残りやすいと考えられます。遊びの中で得た感覚が、日常の対話を支える下地になっていく可能性も十分にあるでしょう。

遊びが人と人の距離をやわらかくする理由

なぜ遊びは、人の心を近づけるのでしょうか。それは、評価や役割から一時的に離れられる時間だからだと思われます。年齢や立場に関係なく、同じ条件のもとで同じ目的に向かう体験は、人を自然と対等な位置に戻します。
特にボードゲームを通じて交わされる会話は、結論を急がず、寄り道を許します。その余白があるからこそ、思わぬ発見や笑いが生まれます。効率や正解ばかりを求めがちな日常の中で、こうした時間は貴重です。

デジタルの便利さを否定する必要はありません。ただ、その隙間を埋めるものとして、アナログな対話の場を持つことには大きな意味があります。ボードゲームという小さな盤上の世界は、私たちの働き方や人との向き合い方を、少しだけやさしく見直すきっかけを与えてくれるでしょう。

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趣味・娯楽・エンターテイメント

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