2026年ヒット予測の鍵は五感回帰にある?“懐かしいのに新しい”が売れる理由
デジタル疲れの時代に浮かび上がる「触れる体験」という潮流
私たちの生活は、ここ数年で大きく変わりました。総務省「情報通信白書2024」によれば、スマートフォンの平均利用時間は1日3〜4時間、若年層では5時間を超える層も存在するとされています。連絡も買い物もエンタメも、ほとんどが画面の中で完結する時代です。
利便性は飛躍的に高まりましたが、その一方で、どこか満たされにくさを感じる人も少なくないのではないでしょうか。情報は豊富でも、体験の“手応え”が薄い。そんな空気のなかで、2026年のヒット予測として注目されているのが「大人のシール」と「コグマパン」です。一見すると小さな流行に見えますが、そこには現代の消費心理を映す共通点があると考えられます。
触れることで、体験は少しだけ濃くなる
画面の中の体験は無駄がありません。ただ、そこには重みや質感、温度といった感覚はほとんど含まれていません。触れるという行為は、思っている以上に人の記憶や感情と結びついているといわれています。
実際に手で触れ、力を込め、少し抵抗を感じる。そのプロセスがあるだけで、体験の印象は変わるのではないでしょうか。
外食市場は2023年に約25兆円規模まで回復しています。味や価格だけではなく、「どう楽しめるか」という体験そのものが重視される傾向が強まっています。写真に撮りたくなる、誰かに見せたくなる、割る瞬間にわくわくする。そうした小さな感情の動きが、商品価値を左右する時代に入っているといえそうです。
コグマパンが示す「知っているのに新しい」戦略
韓国語でさつまいもを意味する「コグマ」を冠したコグマパンは、見た目が本物の芋に酷似している点が特徴です。外側の質感から割った瞬間の色彩まで徹底的に再現されており、視覚と味覚を同時に刺激します。日本人にとってなじみ深い食材を用いているため、心理的な距離が近く、挑戦的すぎない点が支持を集めている理由と考えられます。
完全に未知の食品よりも、安心できる素材を新しい形で提示するほうが受け入れられやすい傾向があります。「懐かしさ」と「意外性」の組み合わせが、SNSでの拡散を後押ししているといえるでしょう。単なる映え商品ではなく、割る瞬間の高揚感まで含めて体験設計がなされている点に、2026年型ヒットのヒントがあるのではないでしょうか。
大人のシール市場が拡大する理由
文具市場はおよそ4,000億円規模で推移しており、そのなかでシールやマスキングテープは安定したカテゴリーとされています(矢野経済研究所)。近年では1枚数百円の高付加価値商品も珍しくありません。子ども向け玩具の延長ではなく、質感やデザイン性を重視した“大人仕様”が支持を集めています。
背景には、平成期にシール交換を楽しんだ世代が可処分所得を持つ年代に達したという構造があります。過去の記憶にある楽しさを、より高品質な形で再体験したいという心理が働いているのでしょう。収集にとどまらず、手帳やパソコン周りを装飾することで自分らしい空間を作る行為は、自己表現の一形態ともいえます。貼るという行動そのものが集中状態を生み、短時間ながら没入感をもたらすことが期待されます。
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