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高所得者は損?国民年金と付加年金の上手な活用法

「高所得者は年金制度で損をする」と言われることがあります。とくに自営業者やフリーランスなど、国民年金にのみ加入している人にとっては、保険料と将来の受給額とのバランスが気になるところです。

しかし、国民年金には“付加年金”という制度があり、実は高所得者こそ積極的に活用すべきメリットがあります。

 

国民年金の仕組みと高所得者の「不公平感」

国民年金は、20歳から60歳までのすべての国民に加入義務がある制度です。令和6年度(2024年度)の国民年金保険料は、月額16,980円、年間では203,760円です。

この金額は所得にかかわらず一律であるため、年収300万円の人でも1,000万円の人でも支払う保険料は変わりません。一見すると、負担感は高所得者の方が小さく見えますが、実際の受給額も全員同じ「基礎年金」となる点に、不公平を感じる方が少なくありません。

たとえば、40年間すべての月で保険料を納めた場合、将来受け取れる年金は年間約80万円(月額約66,250円)となります。これは年収1,000万円の人でも同じ金額です。つまり、支払額に対して得られるリターンが相対的に小さく感じられることが、「高所得者は損」と言われる理由です。

 

付加年金の仕組みと具体的なメリット

ここで注目すべきなのが、「付加年金」というオプション制度です。これは、国民年金第1号被保険者(自営業者やフリーランスなど)が月額400円を追加で支払うことで、将来の年金受給額が上乗せされる制度です。付加年金の仕組みはとてもシンプルで、「納付月数 × 200円」が年額の上乗せ額として加算されます。つまり、10年間(120か月)付加年金を支払った場合には、200円 × 120か月 = 年間24,000円の年金が上乗せされるのです。

具体的な例を見てみましょう。

  • 付加年金を20年間支払った場合の追加負担は、400円 × 12か月 × 20年 = 96,000円です。

  • その結果、老後に受け取れる年金は、200円 × 12か月 × 20年 = 年間48,000円の上乗せとなります。

この時点で、わずか2年間の受給で元が取れる計算となり、仮に85歳まで生きた場合には、65歳からの20年間で48,000円 × 20年 = 960,000円もの受給額アップになります。

たった96,000円の追加納付が、10倍にして返ってくる――これほど効率的な制度は他にありません。

 

付加年金の注意点と加入できないケース

ただし、付加年金には利用できる条件があるため、すべての人が加入できるわけではありません。まず、会社員や公務員など、厚生年金に加入している人(第2号被保険者)と、その扶養に入っている配偶者(第3号被保険者)は、付加年金の対象外です。また、国民年金基金に加入している人も、付加年金との併用はできません。両方とも「上乗せ年金制度」であるため、どちらか一方を選択する必要があります。

保険料の免除申請や納付猶予をしている期間中は、付加年金の納付もできなくなります。制度の利用を検討する際は、年金事務所やねんきんネットで自分の納付状況を確認し、加入可能かをチェックすることが大切です。

 

高所得者だからこそ活用したい“節税効果”

国民年金の保険料や付加年金の納付額は、社会保険料控除の対象になります。たとえば年間203,760円の国民年金と、年間4,800円の付加年金(400円×12か月)を納付している場合、合計208,560円が所得から控除されることになります。年収が高い人ほど所得税・住民税の税率が高くなるため、この控除によって節税効果が大きくなります。節税と将来の受給増という2つのメリットを同時に得られるのが、付加年金の魅力です。

 

年金制度は「使い方次第」で有利になる

年金制度は一見すると画一的で、不公平に感じられることもあります。しかし、国民年金における付加年金のような制度を正しく理解し、適切に活用すれば、高所得者にとっても決して「損」な仕組みではありません。老後の不安を少しでも軽くするためには、制度を知り、今できる備えをすることが重要です。高所得者であっても、「どうせ少額だから」と切り捨てず、制度の仕組みを味方につけることで、より安定した未来が見えてくるのではないでしょうか。

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