自営業でも遺族年金・障害年金が受け取れる?加入メリットとは
「年金は会社員のための制度」と思っている自営業やフリーランスの方は、意外と多いのではないでしょうか。しかし実際には、国民年金にきちんと加入し、保険料を納付していれば、自営業の方でも遺族年金や障害年金を受け取ることが可能です。万が一の時に自分自身や家族を守るために、年金制度の仕組みと加入のメリットを正しく理解することが大切です。
国民年金と厚生年金の違いとは?
日本の公的年金制度は、すべての人が対象となる「国民年金(基礎年金)」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」の2階建て構造となっています。自営業やフリーランスの方が加入するのは、1階部分にあたる国民年金であり、これは20歳以上60歳未満のすべての人に義務づけられている制度です。
一方、厚生年金は、勤務先を通じて保険料を支払う仕組みであり、収入に応じて保険料や将来の年金額が決まります。そのため、厚生年金に加入している人の年金受給額は、国民年金のみの人よりも多くなる傾向があります。
とはいえ、国民年金にも遺族年金や障害年金といった保障制度が整っており、自営業者でも十分なメリットを享受できます。
自営業でも受け取れる「遺族基礎年金」とは?
たとえば、自営業の方が万が一亡くなった場合でも、一定の条件を満たしていれば、残された家族が「遺族基礎年金」を受け取ることができます。この制度の主な受給対象者は、18歳到達年度の末日(3月31日)までの子どもがいる配偶者、または子ども本人です。障害のある子どもであれば、20歳未満までが対象となります。
受給の条件には、次の2つがあります。
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死亡した人が国民年金に加入中、または60歳以上65歳未満で保険料納付済み期間のある人であること
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保険料の納付状況が、「納付済期間」と「免除期間」を合わせて、全加入期間の3分の2以上あること。または、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
2024年度の遺族基礎年金の年間受給額は、子ども1人の場合で約795,000円です。第2子以降には1人あたり年額223,800円が加算されるため、子どもが2人いる場合は合計約1,018,800円が支給されることになります。
自営業でも対象になる「障害基礎年金」
不慮の事故や病気により、日常生活に支障が出る障害を負った場合、自営業やフリーランスの方でも「障害基礎年金」を申請できます。重要なのは、障害の原因となった病気やけがで初めて病院を受診した「初診日」が国民年金加入中であること、そして保険料納付要件を満たしていることです。
2024年度の障害基礎年金の支給額は、以下の通りです。
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1級(重度の障害):年間993,750円+子の加算(1.25倍)
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2級(中程度の障害):年間795,000円+子の加算
たとえば2級に認定され、子どもが1人いる場合、年額は約1,018,800円となります。これにより、働けない状態になっても一定の生活費を確保することができます。
未納がもたらす深刻なリスクと対策
自営業者の中には、「収入が不安定で保険料を支払う余裕がない」と悩んでいる方も少なくありません。確かに、2024年度の国民年金保険料は月額16,980円と、年間では約203,760円にもなります。負担が大きいと感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、保険料を「未納」のままにしておくと、将来的に遺族年金や障害年金を受け取れなくなる可能性があります。そのため、どうしても支払いが難しい場合には、「免除制度」や「納付猶予制度」を活用しましょう。
たとえば、所得が一定以下の場合、全額免除や一部免除(4分の3・半額・4分の1)が認められ、免除期間も年金受給資格期間に算入されます。また、50歳未満であれば、猶予制度の申請も可能です。これらの制度をうまく活用することで、「未納」の状態を防ぎ、将来のリスクを回避することができます。
自営業者が年金制度に加入する3つのメリット
自営業やフリーランスの方にとって、国民年金に加入するメリットは単なる老後の備えにとどまりません。以下の3点が大きなメリットといえます。
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老後の生活資金として老齢基礎年金を受け取れる
→ 40年間の納付で、2024年度は年額795,000円が支給されます。 -
不慮の事態に備えて障害年金を受け取れる
→ 事故や病気で働けなくなっても一定の収入が保障されます。 -
遺族に年金という形で安心を残せる
→ 家族に経済的負担をかけずに済む仕組みがあります。
加入のメリットを見直して、安心の将来設計を
近年は、フリーランスや副業といった多様な働き方が広がる一方で、社会保障制度との距離が遠くなりがちです。しかし、年金制度は「老後のお金」だけでなく、「人生のリスクに備える保険」の側面を持ち、自営業の方にとっても非常に重要な仕組みです。
加入を迷っている方、保険料を支払う余裕がないと感じている方も、まずは一度、自分の年金状況を確認し、必要であれば市区町村の年金窓口や年金事務所に相談してみましょう。将来の安心は、今の一歩から始まります。
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