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年齢別に見る安全資産比率の見直しタイミングを考える

資産を守りながら育てる、バランスの見直しが重要に

長寿化が進み、100年時代と呼ばれる今、私たちの資産運用に求められているのは「増やす力」だけではなく「守る力」です。かつては銀行預金だけで十分とされた時代もありましたが、物価上昇や金利変動、為替リスクなどを踏まえると、今はより柔軟な資産配分が欠かせません。

中でも注目されるのが「安全資産」と「リスク資産」の比率です。安全資産とは、現金や預金、国債など元本割れのリスクが低い資産を指し、リスク資産は株式や投資信託、外貨建て資産など価格変動の大きいものを指します。この割合を年齢やライフステージに合わせて見直すことで、資産の安定性を高めることができます。では、どの年代でどのように比率を変えていくのが効果的なのでしょうか。

 

20〜30代:時間を味方につける「攻め」の資産形成期

社会人としての生活が始まり、将来への貯蓄を意識し始める20〜30代は、リスクを取ることができる貴重な時期です。金融庁のシミュレーションによると、長期・積立・分散を意識した運用を20年以上続けた場合、年率平均リターンはおよそ4〜5%前後とされています。この年代では、全体資産の70〜80%をリスク資産、20〜30%を安全資産に設定するのが一つの目安です。収入が増えやすく、損失を取り戻す時間的余裕もあるため、株式やインデックスファンド、海外ETFなど成長性の高い資産に挑戦しやすい環境があります。
一方で、生活防衛資金として3〜6か月分の生活費を現金で確保しておくことも忘れてはいけません。突発的な支出に対応できる備えがあることで、マーケットの急落時にも冷静な判断ができます。NISAやiDeCoなど税制優遇制度を活用し、少額からでもコツコツと積み立てていくことが、後々の大きな差につながります。

 
40〜50代:守りと攻めのバランスを取る「安定化期」

キャリアや家庭が安定し、子どもの教育費や住宅ローンなどの支出が重なるこの時期は、資産運用の「再設計期」といえます。

全体資産の40〜50%を安全資産にシフトし、リスクの過度な偏りを避けることがポイントです。特に、リーマンショック時のように市場全体が急落する局面では、短期的な資産減少が心理的にも大きな負担となります。そのため、国内債券や定期預金など安定的な資産を増やしながら、一方でインフレ対策として国内外の株式やリートを適度に残しておくことで、リスクとリターンのバランスを取ることができます。

また、この時期は「出口戦略」を意識し始めるタイミングでもあります。定年退職を見据えて、どの資産をどの順序で取り崩すかをシミュレーションしておくことが重要です。税金の観点からも、特定口座の損益通算や損失繰越控除を活用することで、実質的な負担を減らすことができます。家計の流れと投資計画を一体で考え、「使うための運用」を意識することが40〜50代の鍵になります。

 
60代以降:生活の安定を優先する「守りの資産管理期」

定年退職や年金受給の時期を迎える60代以降は、これまでの「増やす運用」から「減らさない運用」へと考え方を切り替える必要があります。

目安として、安全資産を全体の70〜80%に引き上げることが推奨されます。生活費の3〜5年分を現金や定期預金で確保し、それ以外の資産を分配金や配当が得られる商品に回すと、安定的なキャッシュフローを確保しやすくなります。ただし、すべてを現金化してしまうと、インフレによる購買力の低下に弱くなるというリスクもあります。近年の物価上昇率は2%前後で推移しており、現金だけでは実質的な資産価値が目減りする恐れがあります。そのため、残りの一部を国内外の株式ETFなどに投じ、リスクを抑えつつインフレヘッジを図る方法も有効です。
退職金の受け取り方や年金の課税方法も資産寿命に直結します。退職所得控除や公的年金等控除などを理解し、税理士やファイナンシャルプランナーと相談しながら最適な「取り崩し設計」を立てることが、老後資産を守る第一歩になります。

 
定期的な見直しが資産寿命を延ばす鍵に

資産配分は一度決めたら終わりではなく、3〜5年ごと、あるいはライフイベントの節目ごとに見直すことが理想的です。金融庁の家計調査(2023年)によると、60代世帯の金融資産の中央値は約1,500万円で、そのうち現金・預金が全体の6割以上を占めています。安全資産を多く持つことは安心感につながりますが、過剰な現金保有はインフレ下で資産価値を減らす可能性があります。
重要なのは、「リスクを避ける」のではなく「コントロールする」という姿勢です。年齢とともに収入構造や支出内容が変化する中で、資産運用を生活設計の一部として見直していくことが、結果的に資産寿命を延ばす最良の手段といえるでしょう。
資産配分の調整は、単なる数字の問題ではなく「どんな暮らしを長く続けたいか」という人生設計の選択でもあります。年齢に応じた比率を一つの指針としながら、自分自身の目的と価値観に合わせて最適なバランスを探っていくことが、安心と豊かさを両立させる鍵になります。

 

まとめ

安全資産とリスク資産のバランスは「年齢」だけでなく、「目的」と「期間」によっても異なります。20代では積極的にリスクを取り、40代で安定性を重視し、60代以降は守りを固めるという流れが一般的です。

しかし、経済環境や金利動向が変化する現代では、機械的な比率調整ではなく、柔軟な戦略が求められています。自分のリスク許容度を正確に把握し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、安心して将来を見据えた資産運用を続けることが大切です。

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