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iDeCoでもらえる?“退職所得控除”と税金のリアルを解説

将来の資金計画を左右する「iDeCo受け取り時の税金」

iDeCoは掛金が全額所得控除となり、運用益も非課税で積み上げられることから、老後資金づくりに強い効果を期待できる制度といえるでしょう。ただ、その一方で、実際の受け取り時にどのような税負担が生じるのかを理解できていないケースが少なくないとも考えられます。とくに「iDeCoでも退職所得控除が使えるのか」「退職金と同じ年に受け取るとどうなるのか」といった疑問は、その後の手取り額を左右するため、早い段階から知っておきたいテーマでしょう。

国税庁が示す退職所得控除の計算式では、勤続年数20年以下は1年につき40万円、20年超の場合は800万円に加えて超過分1年につき70万円を加算する形が取られています。たとえば勤続30年の場合、控除額は1,500万円となり、かなり大きな非課税枠が確保されることになるでしょう。この控除がiDeCoの一時金にも適用される仕組みであることは、老後の税金対策として非常に重要なポイントといえそうです。

 

iDeCoの一時金は退職所得控除の対象になる

iDeCoの受け取り方法には一時金、年金、併用の3つがあり、とくに一時金は退職所得控除の対象になる点が大きな魅力でしょう。控除後の金額はさらに1/2に圧縮されるため、最終的な課税負担がかなり小さくなる可能性が見込まれます。

ただし、退職金と同じ年に受け取ると控除枠が共有されるため、思わぬ課税が生じることもありえます。たとえば退職金1,200万円に加えてiDeCo一時金500万円を同一年に受け取った場合、合計1,700万円となり、勤続30年分の退職所得控除1,500万円を超える200万円の半分である100万円が課税所得となります。この金額に5〜20%の税率がかかるため、10〜20万円前後の税負担が生じるケースも考えられるでしょう。

一方で受け取りタイミングを翌年などにずらすことで、控除枠を単独で使える可能性が高まり、結果的に税負担を抑えられるパターンが多いといえます。金融庁も、受取年を分けることが節税に大きく影響するケースが多いと示しており、出口戦略として検討する価値は非常に高いでしょう。

 

年金形式での受け取りは雑所得として扱われる

年金形式でiDeCoを受け取る場合、税区分は雑所得となり、公的年金等控除が適用されます。65歳以上であれば年間110万円が最低控除額となるため、受給額がその範囲に収まる人は課税されない可能性が高いでしょう。ただし、積立残高が大きく、年金として受け取る金額が増えると、課税ラインを超えてしまう可能性も否定できないといえます。

株式比率の高いポートフォリオで運用している場合、年率5〜8%の成長を達成した年度には想定以上に残高が増えることもあり、受取額の増加が雑所得課税へ影響する可能性があるでしょう。また、NISAと併用している場合は、NISAは非課税で引き出せる一方、iDeCoは受け取り時に課税が発生する仕組みであるため、両者をどの順番で取り崩すかが老後資金の安定性に影響すると考えられます。

為替や金利が動きやすい環境では、資産価値の変動が生活設計に影響しやすく、受取方法を柔軟に検討する意義はより高いといえるでしょう。

 

税負担を抑えてiDeCoを最大化するために必要な視点

iDeCoを効果的に活かすには、受け取り方法の選択とタイミングが極めて重要になってくるでしょう。一時金の場合、退職所得控除を適切に利用することで税負担をほぼゼロにできるケースが多く、退職金との時期調整によって大きな差が生まれる可能性があります。年金形式の場合も控除制度が機能するため、家計の状況や老後の収入見通しに合わせて柔軟に判断していくことが求められます。

老後の資産には、不動産、預金、投資信託、企業型DC、NISAなどさまざまな選択肢があります。これらは金利や為替の変化の影響を受けやすく、長期的に見れば価値の増減が起こる資産といえるでしょう。そうした中で、iDeCoの税制優遇をどのように組み合わせるかは、老後の安心度を大きく高める鍵になると考えられます。

老後の生活期間が20〜30年規模に及ぶことを見据えると、受け取り方の最適化によって手取り額を守れる可能性が高く、iDeCoは「積み立てるときの優遇」だけではなく、「受け取るときの優遇」をどう活用するかで本当の価値が変わります。自分に合った出口戦略を設計することで、将来への不安を和らげ、より確かな資金計画につながっていくのではないでしょうか。

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