在宅介護と施設介護、後悔しない選び方とは?

親や家族が介護を必要とする状況になったとき、まず向き合うことになるのが「どこで介護するか」という問題です。住み慣れた自宅で支えるのか、それとも専門施設の手を借りるのか。どちらの選択にもそれぞれの良さや難しさがあり、迷いながら結論にたどり着く方は少なくありません。
選び方を誤ると、介護者にも要介護者にもストレスが積み重なり、後悔や疲弊につながることがあります。しかし、生活環境や経済状況、本人の希望、地域の制度といった多角的な要素を丁寧に見ていくことで、納得のいく判断ができるようになります。

 

親の介護が始まったら、まず何をすればいい?

突然、親が転倒したり、認知症の症状が見られたりと、ある日を境に介護が現実となることがあります。そんなときに慌てないためにも、最初にやるべきことを順序立てて把握しておくことが大切です。

第一に行うのは、「要介護認定」の申請です。市区町村の介護保険課に連絡すれば申請方法を教えてもらえます。認定を受けることで、訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなど、介護保険の対象となるサービスを利用する準備が整います。次に、地域包括支援センターに相談することをおすすめします。ここでは、ケアマネジャーが中心となって介護のプランを一緒に考えてくれます。親の健康状態や希望をもとに、在宅と施設のどちらが現実的かを判断する材料を得ることができます。

同時に、家族間で役割分担や今後の方針についての話し合いも始める必要があります。介護が長期化することを考え、誰がどこまで関わるのか、無理のない範囲で意思を確認し合っておくことが、後々のトラブル回避につながります。

 

「在宅」か「施設」か、それぞれの現実と向き合う

在宅介護は、自宅で家族が要介護者の生活を支えるスタイルです。慣れ親しんだ空間で過ごせる安心感がある一方、家族の生活には少なからず変化が求められます。仕事や育児と両立しながら介護を担うことになれば、心身の負担が大きくなり、結果的に「介護離職」という選択を迫られるケースも存在します。
一方、施設介護は専門スタッフによるケアを受けながら集団生活を送る形です。医療的な支援や見守り体制が整っており、家族の負担は軽減されます。しかし、理想的な施設にすぐ入居できるとは限らず、待機期間が発生する場合や、月額費用が予想以上にかかることもあります。

介護の現場では「どちらが正しいか」という二択ではなく、それぞれの事情に合わせて柔軟に選ぶ必要があるという考えが重要視されつつあります。どちらの道にも納得感を持てるかどうかが、後悔を防ぐ鍵となります。

 

費用と暮らしのバランスをどう取るか

選択において避けて通れないのが経済的な視点です。たとえば在宅介護の場合、訪問介護、デイサービス、福祉用具のレンタルといったサービスを組み合わせることで対応します。介護保険を活用しても、自己負担は月に3万円〜7万円程度になることが多く、これに加えて介護する家族の時間的な犠牲や精神的な疲労も無視できません。
施設介護になると、サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームでは月15万円〜30万円が相場とされ、入居一時金が数百万円かかる施設もあります。家計や貯蓄、年金収入の状況によっては、長期的な見通しを持って選ばなければなりません。

いずれを選ぶにしても、「今の家計でどこまで介護に充てられるか」「将来の収支バランスはどうなるか」といった観点で、具体的に数字を把握しておくことが大切です。支出の不安がある場合は、市町村の窓口で相談することで、利用できる制度や減免措置を案内してもらえる可能性もあります。

 

制度や情報を味方にすることが第一歩

介護に関する支援制度や情報源は数多く存在しますが、必要なときにうまく活用できていない人が少なくありません。たとえば、介護保険制度では要介護認定を受けることで、在宅介護・施設介護のいずれにおいても一定のサービス費が公費でまかなわれます。さらに、介護休業制度を利用することで、働きながら短期的な支援を行うことも可能です。
地域包括支援センターでは、ケアマネジャーによる相談支援を無料で受けることができますし、SNSやコミュニティサイトを活用すれば、同じ立場の人たちの実体験を参考にすることもできます。情報の多さに戸惑うこともありますが、信頼できる公的機関と個人の体験談を照らし合わせながら判断することで、より具体的な道筋が見えてきます。

 

最も大切なのは「家族で話し合う時間」

どんなに制度が整い、費用面で準備ができていたとしても、要介護者本人や家族の気持ちが置き去りになってしまえば、介護はうまくいきません。本人が自宅での生活を強く望んでいるのか、あるいは安心してプロに任せたいと思っているのか、率直な気持ちを聞くことが最初の一歩です。
家族の中でも、誰がどれだけ関わるか、どのように分担するかといった点を、感情的にならずに話し合える環境をつくることが重要です。介護は1人で背負い込むものではなく、地域、制度、家族といった複数の支えの中で続いていくものです。

ときには「今は在宅で支え、いずれ施設を検討する」という段階的な選択も必要になるかもしれません。柔軟に見直しながら、無理なく続けられるスタイルを模索していく姿勢が、後悔のない介護への近道になります。


介護は突然始まることもあり、心の準備が追いつかないまま判断を迫られる場合もあります。しかし、制度を理解し、情報を集め、家族で話し合うことを少しずつ積み重ねていけば、どんな選択であっても「自分たちで決めた」と納得できるはずです。後悔のない介護のスタートは、「迷ったときに頼れる場所」を知ること、そして「一人で抱え込まないこと」から始まります。

カテゴリ
生活・暮らし

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