ブランドリフト調査の活用術:“見られた”の先を可視化する
SNSやオンラインメディアの急速な拡大により、企業がユーザーに情報を届ける手段は飛躍的に増加しました。広告やプロモーションが「どれほど多くの人に届いたか」は、従来であればインプレッション数やクリック数などで可視化されてきました。しかし、これらの数値だけでは、「ブランドに対する認知や印象がどのように変化したのか」という本質的な効果は見えてきません。そうした“見られた”のその先を可視化する手法として、今注目を集めているのが「ブランドリフト調査」です。
ブランドリフトとは?─ 意識変容を測る新しい指標
ブランドリフト(Brand Lift)とは、広告やメディア露出によって、消費者のブランド認知、好感度、購入意向などがどの程度変化したのかを測定する指標のことです。たとえば、「このブランドを知っていますか?」「この商品を購入したいと思いましたか?」といった質問を、広告接触者と非接触者の双方に行い、その差を分析することで広告の影響を定量的に評価します。
Googleの調査によると、YouTube広告を活用したキャンペーンの約70%で、明確なブランドリフトが確認されているというデータがあります。特に、購買意欲に関する質問では、平均して+13%の向上が見られるなど、広告がユーザーの心理に与える影響を具体的に把握できる点が大きな特徴です。
なぜ今、ブランドリフト調査が注目されているのか
近年のマーケティング環境では、単なる広告出稿だけでなく、ユーザーとの「関係性の構築」や「印象の形成」がますます重要になっています。テレビCMや新聞広告のようなマスメディアに代わり、SNS広告やインフルエンサーマーケティングといった手法が主流になる中で、従来の指標だけではマーケティングの成果を正確に測ることが難しくなっています。
たとえば、Twitter(現X)でのプロモーションキャンペーンでは、リツイート数やインプレッション数が数万単位であっても、「実際にブランド認知が高まったのか」「ユーザーの購買意欲が刺激されたのか」は判断しづらいのが現状です。こうした背景から、“ユーザーの意識変化”を可視化できるブランドリフト調査は、メディア戦略を設計するうえで不可欠な存在となりつつあります。
活用方法と具体的なメリット
ブランドリフト調査の最大の魅力は、マーケティングのあらゆる段階で「仮説と検証」が可能になる点です。たとえば、新商品のローンチにあたり、「20代女性の間で認知が広がっているか」「既存ブランドとのイメージの違いが伝わっているか」といった問いに対して、明確なデータを持って判断することができます。
具体例として、ある飲料メーカーが実施したYouTube広告キャンペーンでは、広告接触者のうち78%が「この商品に好印象を持った」と回答し、非接触者との比較で+22%のブランドリフトを記録しました。この結果をもとに、同社は次回の広告制作において、好印象を与えた要素をさらに強調したクリエイティブを展開し、売上の前年比115%という成果を上げています。
また、SNS広告でのブランドリフト調査では、広告ごとにターゲット層別の効果を測定することも可能です。Instagramを使った化粧品のキャンペーンでは、10代後半〜20代前半の女性層で認知度が+18%、購入意向が+11%向上したというデータが得られ、今後のターゲティングや出稿媒体の選定に大きく役立ったとのことです。
データを武器に、企業戦略と広告をつなぐ
広告は単なる「見せる手段」ではなく、企業のブランディングや経営戦略の一部として設計されるべきです。そのためには、感覚や経験則に頼るのではなく、数値に裏付けられた判断材料が必要です。ブランドリフト調査を活用すれば、マーケティング部門が社内外に対して「どれほど価値のある施策を行ったか」を説明できるようになり、経営層との合意形成もスムーズになります。
特に、複数のメディアを横断的に活用する「統合メディア戦略」では、媒体ごとのリフト効果を比較・分析し、費用対効果の高い配信チャネルを選定することが重要です。これにより、限られた広告予算を最も効率的に活用でき、企業全体のマネタイズ力向上にもつながっていきます。
ブランドリフトは“見られる”を“伝わる”に変える鍵
ブランドリフト調査は、広告が「表示された」ことにとどまらず、「どのように受け取られ、意識にどのような変化をもたらしたのか」を明らかにする強力なツールです。SNSやデジタルメディアが主戦場となった今、こうしたユーザーの“心の動き”を捉える手法は、マーケティングの成功を左右するカギとなるでしょう。
“見られた”だけでは終わらせない、“伝わった”を実感できる広告戦略へシフトすることにより、ブランドリフト調査の導入は、企業とユーザーの新たな関係性を築く第一歩となります。
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