XからBlueskyへ、利用者の価値観はどう変わったのか

XからBlueskyへ、人々が移動する理由

SNSは、私たちの日常と切り離せない存在になりました。朝のニュース確認から、仕事の合間の情報収集、夜の雑談まで、多くの人がSNSを通じて世界とつながっています。その一方で、以前のように気軽に楽しめなくなったと感じる声も増えているようです。情報量の多さに圧倒されたり、感情的な投稿に疲れたりする経験を持つ人も少なくないでしょう。

こうした感覚の変化と重なるように、X(旧Twitter)からBlueskyへと利用者が移動する動きが目に留まるようになりました。この現象は、一時的な流行というより、SNSという仕組みそのものを見直そうとする意識の表れと考えられます。誰が空間を管理し、どのように情報が扱われるのか。その点に目を向ける人が増えているように見受けられます。

 

Xに対する疲れと不安が広がった背景

Xは、即時性と拡散力を強みに成長してきましたが、現在では投稿の表示順を決める仕組みや収益モデルの影響により、刺激の強い内容が目に入りやすい環境になっていると指摘されています。怒りや対立を含む表現が繰り返し表示されることで、無意識のうちに気持ちが消耗する状態に陥る人もいるでしょう。

心理学の分野では、怒りや不安といった強い感情を伴う情報ほど人の注意を引きやすいことが知られています。この性質がアルゴリズムと結びつくと、落ち着いた対話よりも刺激的な投稿が優先されやすくなる構造が生まれます。結果として、SNSを見る行為そのものが負担になる場合もあると考えられます。
さらに、近年意識されるようになったのが、投稿データの扱われ方に関する懸念です。Xの利用規約では、投稿された画像や文章がサービス改善や関連技術の開発に利用される可能性が示されています。Xが生成AIを重要な事業領域として位置づけていることから、利用者の間では、自分が投稿した画像や文章がAIの学習や生成技術に活用される可能性を完全には否定できない、という受け止め方が広がりました。

 

AI生成コンテンツがSNS体験を変えた

SNSの空気感を大きく変えた要素として、AI生成コンテンツの増加も見逃せません。文章や画像を短時間で大量に作成できるようになり、投稿数は急激に増えました。技術自体は便利で可能性に富んでいますが、SNS上では別の影響も生まれています。

内容が浅い投稿や、注目を集めることだけを目的とした表現が繰り返し流れることで、情報の質を見極める負担が利用者側に偏りやすくなりました。調査でも、多くの人が「その情報が人によるものか、AI生成か分からないこと」に不安を覚えているとされています。真偽を判断するために常に警戒が必要な環境は、気軽な交流を難しくするといえるでしょう。こうした状況に、先ほど触れた「自分の投稿がAI学習に使われるかもしれない」という懸念が重なることで、Xに対する心理的な距離が広がったと見ることもできそうです。

 

Blueskyが示す別の方向性

Blueskyが支持を集めている理由の一つは、こうした不安に対して異なる方向性を示している点にあります。Blueskyは分散型という考え方を採用し、特定の企業がすべてのデータと人間関係を一元管理する構造から距離を取ろうとしています。

初心者にとって重要なのは、難しい仕組みよりも体験の違いでしょう。Blueskyでは、自分の関心に合った情報の流れを選びやすく、見たくない話題から距離を置くことも可能です。AI生成投稿についても、ラベル付けや表示の調整をコミュニティ単位で行える余地があり、利用者が判断しやすい環境づくりが意識されています。利用者数の推移も、この方向性への関心を示しています。Blueskyは2024年後半から急成長し、同年11月には世界で約2,000万人規模に達しました。研究者や記者、クリエイターなど、情報の扱われ方に敏感な層が早期に参加したことで、落ち着いた雰囲気が形成されていると考えられます。

 

情報を「預ける場所」を選ぶ時代へ

AIによって情報量が爆発的に増えた現在、SNSは単なる発信の場ではなく、自分の言葉や画像をどこに預けるかを選ぶ場所になりつつあります。表示される情報だけでなく、自分が投稿した内容がどのように扱われるのかを意識する人が増えたことは、ごく自然な流れでしょう。Blueskyが示しているのは、情報を浴び続けるSNSから、利用者が主導権を持つSNSへの移行です。安心して発信し、落ち着いた対話に集中できる環境を求める動きは、今後も広がる可能性が見込まれます。

SNSは、私たちの考えや感情が交差する場です。その空間を誰が管理し、どのような目的で使われるのかを自覚的に選ぶことが、これからのインターネット文化を形づくっていくのではないでしょうか。情報に振り回されるのではなく、自分のペースで関わる。そのような姿勢が、次のSNSのあり方を静かに方向づけているように思われます。

カテゴリ
インターネット・Webサービス

関連記事

関連する質問