健康に気を遣う人が増えるなか、「サプリメント」を日々の習慣として取り入れている方も多いのではないでしょうか。ドラッグストアや通販サイトでは、ビタミンやミネラル、ハーブなどの多彩な製品が並び、「手軽に始められる健康管理」として人気を集めています。一方で、体の不調や病気の治療には、病院で処方される薬や市販薬の力が欠かせません。
しかし、「サプリメントと薬を一緒に飲んでも大丈夫なのか？」という疑問を持ったことはありませんか？実は、何気なく始めたその併用が、薬の効果を弱めたり、思わぬ副作用を引き起こしたりすることもあるのです。

サプリメントと薬の本質的な違いとは？

サプリメントは、あくまで「健康補助食品」に分類されており、医薬品とは異なります。厚生労働省の定義では、サプリメントは食品の一種とされ、病気の治療を目的としたものではなく、不足しがちな栄養素を補う役割を担っています。たとえば、ビタミンCやビタミンD、鉄分、カルシウム、オメガ3脂肪酸などが一般的に利用されています。これらは食生活の補助を目的とし、薬のように即効性や治療効果を期待するものではありません。

それに対して、薬には「医療用医薬品（処方薬）」と「一般用医薬品（市販薬）」があります。いずれも病気や症状を改善・治療するために用いられ、厚生労働省による厳格な審査と臨床試験を経て、効果と安全性が確認された上で流通しています。成分の含有量も明確で、用法・用量を守ることが求められます。

併用しても問題ないケースとは？

サプリメントと薬を併用しても問題ないケースも、もちろん存在します。特に、医師の許可や指導のもとであれば、相互作用のリスクを避けながら健康を支えることが可能です。

たとえば、貧血の治療を目的として鉄剤を服用している方が、ビタミンCのサプリメントを同時に摂取するケースが挙げられます。ビタミンCは鉄の吸収を助ける働きがあるため、医師の指示に従って併用することで治療効果を高めることができます。また、骨粗しょう症予防の一環としてカルシウムとビタミンDを組み合わせて服用するのも一般的です。糖尿病や高血圧などの生活習慣病の治療中であっても、オメガ3脂肪酸やマグネシウムなどのサプリメントを医師が許可するケースもあり、栄養補助の観点からはむしろ効果的なこともあります。

併用がNGなケースとそのリスク

一方で、サプリメントと薬の併用には注意が必要な組み合わせも多く存在します。実際に、薬剤師会の報告では、薬との相互作用による健康被害は年々増加傾向にあり、特に高齢者や多剤併用中の患者には注意が呼びかけられています。

たとえば、ビタミンKを多く含む青汁やクロレラのサプリメントは、血液をサラサラにする薬「ワルファリン」との併用で薬効を弱める可能性があります。これは、ビタミンKが血液を固める作用を持つため、薬の作用と正反対の働きをしてしまうためです。また、セントジョーンズワート（西洋オトギリソウ）というハーブ成分を含むサプリメントは、抗うつ薬や抗がん剤、さらには経口避妊薬の効果を減弱させる可能性があり、欧米では注意喚起が強くされています。さらに、グレープフルーツ由来の成分は、血圧の薬や高脂血症の薬の代謝を阻害することで、薬の血中濃度を異常に高め、副作用を引き起こす危険性があります。こうした事例は決して少なくなく、薬剤性肝障害や腎障害といった深刻な副作用の一因になることも報告されています。

安全に併用するために心がけたいこと

サプリメントと薬を安全に併用するためには、自己判断を避け、医師や薬剤師と相談することが第一です。特に、病院で複数の処方薬を服用している方や、高齢者、妊娠中・授乳中の方は慎重に対応する必要があります。

薬局で市販薬を購入する際や、ネットでサプリメントを購入する場合でも、事前に専門家に相談することが望ましいです。最近では、「健康サポート薬局」として登録されている薬局では、薬とサプリメントの相互作用についても丁寧にアドバイスを受けることができます。
また、サプリメントは天然由来であっても、長期間大量に摂取すれば肝臓や腎臓に負担がかかることもあります。摂取量や成分、目的を明確にし、「飲み続けること」そのものが目的にならないよう意識することが大切です。

賢く使って健康管理を

サプリメントと薬は、それぞれの目的が異なりますが、上手に使い分ければ健康管理の心強い味方になります。ただし、併用には相応のリスクがあるため、「なんとなく」で選ぶのではなく、確かな知識と医療従事者のサポートを得ながら活用していくことが重要です。
体に取り入れるものだからこそ、安全性を第一に考え、信頼できる情報源から学び続ける姿勢を持ちたいものです。