救急車を呼ぶべきか迷ったときの判断基準とは
突然の体調不良や思わぬ事故――そんなとき、救急車を呼ぶべきかどうか迷った経験はありませんか?「呼びすぎたら迷惑では?」「これくらいなら自分で病院へ行けるかも」といった戸惑いは、多くの人が抱える共通の不安です。
しかし、命に関わる事態で一刻を争うようなケースでは、ためらわず119番に連絡することが必要です。逆に、緊急性が低いのに救急車を利用すると、本当に必要な人の搬送が遅れてしまうリスクもあります。
救急車を呼ぶべき「緊急性の高い症状」とは
最も重要なのは、「今すぐに命を守るための対応が必要かどうか」を見極めることです。以下のような症状が現れている場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。
まず、呼びかけに反応がない、意識が朦朧としている、呼吸が浅いまたは止まっているといった状態は、極めて危険な兆候です。これは脳や心臓に関わる疾患、または外傷の可能性があり、迅速な医療介入が命を救う鍵になります。さらに、突然の激しい胸の痛みが出た場合は、心筋梗塞など重篤な循環器疾患の可能性があります。また、ろれつが回らない、片方の手足が動かない、顔が歪んでいるなどの症状は、脳卒中のサインかもしれません。
けいれん発作、広範囲のやけど、大量出血、また交通事故での大きなけがや打撲、骨の変形なども、速やかに搬送が必要です。
判断に迷ったときは専門の相談窓口に連絡を
「症状がそこまでひどくないように見えるけれど、判断が難しい」「夜間で病院に行く手段がない」といった場合、各自治体が設置している救急相談窓口を活用することで、専門家のアドバイスを受けながら落ち着いて判断することができます。
たとえば東京都では「#7119」の番号にかけると、24時間体制で医師や看護師が電話対応をしてくれます。症状を丁寧に聞き取った上で、「救急車を呼ぶべきか」「翌日受診で良いか」といった判断をサポートしてくれます。他の地域でも同様の窓口が整備されており、地方自治体の公式ホームページで確認できます。
また、厚生労働省が提供する「Q助(全国版救急受診アプリ)」は、スマートフォンで症状を入力するだけで緊急度の目安や必要な対応が表示される便利なツールです。急な事態にも落ち着いて対応するため、事前にインストールしておくと安心です。
救急車を呼ぶときに備えておきたい情報と持ち物
救急車を呼ぶと決めたら、救急隊が到着するまでの数分でできる準備があります。まず、患者本人や家族が症状の経過を説明できるように、「いつから」「どんな症状が」「どう変化したか」を整理しておきましょう。たとえば「1時間前から嘔吐が続いている」「転倒後、意識がないまま」など、具体的に伝えることが大切です。
また、次のような持ち物をまとめておくと、搬送先での診療がスムーズに進みます。
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健康保険証
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お薬手帳(服用中の薬がわかるもの)
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持病やアレルギーの記録
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家族の連絡先や緊急時のメモ
本人が話せない状態のときに備えて、日頃から家族と健康状態や薬の情報を共有しておくことも重要です。救急隊員は限られた時間で判断しなければならないため、こうした事前の備えが命を守る手助けになります。
冷静な行動が命をつなぐ
かつては「自分で我慢する」「迷惑をかけたくない」といった気持ちから救急車の利用をためらう方が多くいました。しかし、現代では正しい判断を支える仕組みが整ってきています。重要なのは、「呼ぶ・呼ばない」ではなく、「迷ったら相談する」という選択肢を知っておくことです。判断に迷うことは、決して悪いことではありません。むしろ、その迷いの裏にある「適切に行動したい」という気持ちこそが、冷静で誠実な対応につながります。救急医療は社会の共有資源であり、使うべき時に正しく使うことが、地域全体の命を守ることにもつながるでしょう。
今一度、家族と一緒に「いざというとき、どうするか」を話し合い、日頃から相談窓口の番号やアプリの使い方を確認しておきましょう。それが、未来の自分や大切な人の命を救う第一歩となります。
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