野菜を嫌うのは正常?子どもの成長と味覚の成熟

子どもの偏食はわがままではなく生命を守る防衛反応

子育てをしていると、食事の時間がちょっとした悩みの時間になることがあります。せっかく作った料理を前にして、子どもが首を振ってしまう。特に野菜を残されると、「栄養は大丈夫だろうか」と心配になるものです。多くの親が経験するこの悩みですが、児童心理学や栄養学の研究では、子どもの偏食は必ずしもわがままではないと考えられています。むしろ体を守ろうとする自然な反応の一つと捉えられる場合もあるようです。

子どもは大人より味覚が敏感だといわれています。舌には「味蕾(みらい)」と呼ばれる味を感じる器官がありますが、その数は子どもの方が多く、苦味や酸味を強く感じやすい傾向があります。大人がほんのり感じる苦味でも、子どもにとってはかなり強い刺激として伝わることもあるでしょう。厚生労働省の調査では、幼児期に好き嫌いがあると感じている保護者はおよそ6割にのぼります。多くの家庭で経験されている、ごく自然な成長の姿と考えられています。

偏食でも栄養は足りる?

野菜を食べないと栄養が不足してしまうのではないか。そうした不安を抱く親は少なくありません。しかし栄養学の観点から見ると、特定の食材が食べられないことがすぐに健康問題につながるケースは多くないとされています。子どもの成長において特に重要なのは、体を作るタンパク質とエネルギー源となる炭水化物、そして脂質です。肉や魚、卵、ご飯などをしっかり食べていれば、基本的な栄養はある程度確保できると考えられています。

ビタミンやミネラルも、野菜以外の食材から取り入れることが可能です。ビタミンCは果物やジャガイモにも含まれていますし、鉄分は肉や魚、貝類などから摂取できます。食事全体を一週間ほどの単位で見ていくと、栄養バランスは意外と整っていることもあります。
日本の乳幼児栄養調査では、好き嫌いのある子どもとそうでない子どもの間で、身長や体重の成長に大きな差が見られないという報告もあります。もちろんさまざまな食材に触れることは大切ですが、食事の時間が親子にとってつらい時間になってしまうのは避けたいところです。

食卓の雰囲気が子どもの食習慣を左右する可能性

子どもに食べてもらいたい気持ちが強いほど、「一口だけでも」と言いたくなることがあります。ただ、心理学の研究では、無理に食べさせられた経験がその食材への苦手意識を強くしてしまう可能性があると指摘されています。食事の時間がプレッシャーになってしまうと、食べることそのものが嫌いになってしまうこともあるようです。

そこで大切にしたいのが、食卓の雰囲気です。子どもが自分の意思で「食べてみようかな」と思える環境は、食習慣を育てるうえでとても大切だといわれています。
大人が美味しそうに食べている姿を見るだけでも、子どもにとっては大きな刺激になります。同じ食材を何度も目にすることで、警戒心が少しずつやわらいでいくこともあるでしょう。心理学ではこれを「単純接触効果」と呼びます。食べなくても、食卓にその食材が並んでいるだけで経験は積み重なっています。その積み重ねが、将来の「食べてみよう」という気持ちにつながることがあります。

味覚は成長とともに変わっていく

子どもの味覚は、大人になるにつれて少しずつ変化していきます。子どもの頃は苦手だった食べ物が、大人になると好きになる。そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。味覚の感度が穏やかになり、苦味や酸味を複雑な味として楽しめるようになるためだと考えられています。

家庭でできる工夫としては、食べること以外の体験を増やす方法もあります。スーパーで食材を一緒に選んだり、簡単な料理を手伝ってもらったり、ベランダで野菜を育てたりすることも、食べ物への興味につながるきっかけになるかもしれません。子どもの成長のスピードがそれぞれ違うように、食べられるようになるタイミングも人それぞれです。

もし今、好きな食べ物が一つでもあるなら、それを「よく食べているね」と認めてあげてください。安心できる食卓の時間は、子どもの体だけでなく心も育てていきます。いつか「これ美味しいね」と一緒に笑える日が来る。その日を楽しみに、今日の食卓をゆったり囲むことが、子育ての中で大切な時間になるのではないでしょうか。

カテゴリ
健康・病気・怪我

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