カメラがつないだ地域との絆─まちの暮らしに宿る“心の風景”を写して【福島県石川町】

ローカリティ!

地域の日常にそっと寄り添うような風景や人々の姿を切り取った写真展「まち、ひと、風景」が、石川町で開催されています。主催するのは、町内で活動する「いしかわカメラサークル」のメンバーで、地域の自治運営にも関わる志賀一隆(しが・かずたか)さん。特別な機材ではなく、自然光や空気感を大切にしながら、心がふと動く“いつもの風景”を写し出す作品の数々が、訪れる人々の心を温かく包み込んでいます。

-今回の写真展「まち、ひと、風景」を開催することになったきっかけを教えてください。

いしかわカメラサークルに入っていたのがきっかけです。町役場の生涯学習課の職員から「一緒にやってみませんか?」と声が掛かり、やってみようという流れになりました。
サークルは20人くらいで、月1回集まっています。初心者も多くて、講師の方のアドバイスを受けながら、みんなで撮影や作品の講評をしています。僕も時々アドバイスをしたりして、和気あいあいと楽しい雰囲気ですね。

-テーマの「まち・ひと・風景」には、どんな思いを込められたのですか?
 
そうですね、特別な場所じゃなくても、普段の生活の中に心が動く瞬間ってたくさんあると思っています。そういう“いつもの風景”の中にある美しさを伝えたいなと思って、このテーマにしました。身近な中にある“あたたかさ”を感じてもらえたらうれしいですね。

なかでも特に思い入れのあるのは町内の有松ノブさんというおばあちゃんを撮った写真です。もともとはカフェの写真を撮るのが好きだったのですが、次第に風景や人物も撮るようになりました。この作品で初めて全日本写真連盟賞を受賞したことで、「自分の写真でも人の心に届くんだ」って実感し「もっと上手く撮りたい」と思うようになりました。自分にとって、大きな転機になった一枚ですね。

-会場に設置された感想ノートにも温かい言葉がたくさんありますね。

そうですね。仕事が終わった後に「今日はどなたがいらっしゃったのかな」と思って見に行くのですが、このノートを見るのが本当に癒やしであり、励みになっています。子どもたちの言葉も多くて、すごく感動しますね。ここまで温かい言葉をいただけるのが、本当にうれしいです。

-撮影場所は町内外いろいろだそうですが、どんなところを選ばれていますか? 

石川町の中では、あさひ公園とか今出川とか、水がある風景を撮るのが好きです。自分がこの町の出身なので、「また帰ってきたいな」って思えるような懐かしい風景を撮りたいという気持ちがありますね。町外でも、自然と人が調和しているような場所に引かれます。

-撮影のときに意識していることや、こだわっているポイントはありますか? 

見た人が癒されるような写真を撮りたいです。激しさよりも、穏やかであたたかい雰囲気を大事にしています。「ほっこりするね」って言ってもらえるのが一番うれしいですね。

また、人物撮影ではその人の人生やストーリーが伝わるように撮りたいですね。一瞬の派手さよりも、表情やしぐさの中ににじむ“生き方”を感じてもらえるように意識しています。撮らせてもらう人の気持ちが写真に写るような、そんな一枚を目指しています。

-写真を通して伝えたいメッセージはありますか? 

日常の中にこそ美しさがある、ということですね。普段見慣れている風景の中にも、ふと心が動く瞬間ってありますよね。そういう瞬間を見つけて撮るのが、僕にとっての喜びです。また、写真で「情緒」や「和やかさ」を表現するために意識しているのは、やっぱり“空気感”ですね。その場のあたたかい空気や光の柔らかさをどう残すか。見る人が優しい気持ちになれるような写真を撮りたいと思っています。

特別な機材は使っていないんですけど、光の入り方には気をつけています。自然光の柔らかさを生かした写真が好きです。

▲写真展のようす

-志賀さんは中谷自治センターにお勤めだとか?

はい。石川町に中谷という地区がありまして、そこに自治センター、いわゆる旧公民館があります。地域のコミュニティ拠点として建てられた施設で、生涯学習だけでなく、まちづくりや福祉など、地域の困りごとを何でも相談できる場所です。私は今、その中谷自治センターの事務長として配属されています。

-ちなみに写真を始めたきっかけは? 

自治センターの運営に関わる中で長寿会や地域行事の写真を携帯で撮る機会が多くなり、当時のセンター長だった根本忠さんに「カメラ始めてみたら?」って勧められたのがきっかけです。始めたのは5年前くらい、コロナ前の2018年か2019年くらいです。「いい趣味だよ」「いろんな人とつながれるよ」と勧められ、人生の幅が広がると思って始めてみたんです。それまでいろんな趣味をやってきましたけど、ここまで続いたのはカメラが初めて。食べ歩きやカフェ巡りも好きで、出かけるたびに写真を撮ってインスタに上げたりしていました。カメラを持つようになって、さらに楽しくなりましたね。

今後は日常の暮らしの中にある人々の姿や風景をもっと撮ってみたいです。派手な場面じゃなくて、普段の生活の中にある温かさとかリアルな瞬間を残していけたらいいなと思っています。

-最後に来場される方へのメッセージをお願いします。

身近な風景の中にも、こんなに素敵な瞬間があるんだなって感じてもらえたらうれしいです。何気ない日常の中にも“心の風景”がある、ということを伝えたいです。「これってどこなんだろう?」って探すより、「あ、自分の身近にもこういう光景あるな」って感じながら見てもらうといいと思います。難しく考えずに、心のままに見て、ほっとしてもらえたらうれしいですね。

-ありがとうございました。

展示会情報

「志賀一隆 まち、ひと、風景 写真展」
テーマ: ~日常の瞬間を映す、心の風景~
期間:令和7年9月18日(木)~10月27日(月) 9:00~21:00
場所:モトガッコ 2階 展示スペース

志賀一隆さんインスタグラムアカウントはkazutakashiga1215

情報提供元:ローカリティ!

昆愛
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カテゴリ
[地域情報] 旅行・レジャー

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