福の風が吹く場所で。神社の社務所を地域に開かれたカフェへ【宮城県気仙沼市】
宮城県気仙沼市の神明崎(しんめいざき)に位置する五十鈴(いすず)神社。もともとは村の守り神として山手に祀(まつ)られていたが、漁業の発達に伴い人々が海辺に住むようになっていったことで、五十鈴神社もおよそ380年ほど前に今の場所に移され、海の神様も合わせて祀られるようになったのだという。
そう説明してくれたのは五十鈴神社の宮司を補佐する禰宜(ねぎ)を務める神山昌宏さん。神山さんは禰宜として奉仕する傍ら、神社の境内に2025年5月にオープンした「神明崎ふくふく」でお店にも立っている。
おいしいご飯と心地よい空間に、週末やお昼時はにぎわいを見せる。人をひきつける神社とカフェの掛け算が生まれたわけや、目指すところについて神山さんに伺った。
地域活性の端緒になれば、神明崎ふくふくのはじまり。
全国的な問題である人口減少だが、五十鈴神社もその影響を受けていた。特に東日本大震災以降、地域の人が減っていくにつれて神社の活動規模が小さくなっていったのだという。全国の神社が抱える問題であり、取り組むべき課題でもある。
「ここをオープンしたことによって問題が解決できるとは思っていないけれど、解決のための何かきっかけになればいいなって」
カフェをオープンすることは神社の活動に直結するわけではない。それでも何か現状に変化を生み出す糸口をつかめないかと考えた末のカフェ運営だった。
また、神明崎ふくふくの開店は、五十鈴神社が位置する気仙沼市の内湾エリアにおいて官民連携で進められている街づくりの一貫でもあった。内湾エリアを活性化するにあたって神社のある神明崎の文化的、歴史的価値を見直し、内湾においてどんな役割を果たすべきかを地域の有志等による社会実験を経て検討を重ねた。
そして導き出されたのが「人が集まる場所の一つになる」という役割だった。これは神社が目指していることでもある。
人が集まる場所にもさまざまな種類があるが、神社との相性や営業する時間帯を考慮し、最終的に落ち着いたのがカフェという形態だった。
「昼間のお休みどころ、いろんな人が集まれるようなところを想像したときに、自然に行きついたのがカフェでした」
そして、カフェという運営形態に決まると同時に、飲食物を提供するならば地元の物を使おうと決めたという。神明崎ふくふくには地域の食材を使ったメニューや、水産加工品などを使ったメニューがそろっている。
「色んな地域の方々と関わっていって、地域全体がより良くなっていけばっていうことで。そんなこともあって、地域のものを紹介したりして地域のつながりを大切にしたいなと」
看板メニューの「はれむすび」は気仙沼産米でにぎる塩むすびと地域の水産加工品三種を選ぶプレートで、和食の良さを改めて認識できるやさしい味わいである。
窓からのぞく気仙沼の海、四季折々の眺め
神明崎ふくふくは神社の社務所の一部を改装して設けられている。もともとはお祭りの準備や会合など人の集まる空間だったが、その機会も減っていた。社務所広間の雰囲気を残しつつも地域の古材を使い、窓を広く取ることで境内に調和する空間となっている。
「この眺めはやっぱり良くて、ここをいい感じで見せたいんだと一番こだわったところではありますね」
海に臨む大きな窓から見える景色は、季節によってさまざまな顔を見せる。夏には緑が生い茂りその隙間からのぞく海の青との鮮やかなコントラストが美しく、冬は葉が落ちて外を一望することができ、気仙沼の内湾を見渡すことができる。冬の日が短い時期は窓辺の席で夕日を眺めるのもおすすめだと、教えてくれた。
「ここに立ってるのは間違いじゃない」カフェだからこそできたこと
最初はカフェの方にそれほど立つつもりはなかったと神山さんは話す。禰宜としての職務もありながらカフェの運営にも携わる。そのバランスに悩み葛藤することもある。
しかし、実際に神明崎ふくふくの営業を始めると、カフェに立つことで神社のことや気仙沼という地域のことを聞きたいという人に向けて、神山さん自身の口からお話ができるようになった。
「これまでよりも訪れる人と接して、きちんと色んなことをお伝えできるっていう。そういう機会が得られたっていうのは、ここに立っていて間違いじゃないんだな、それもありなんだなっていう発見がありますね」
神明崎を境内地とする五十鈴神社の役割として、神山さんが考えていたのは神明崎に訪れた人が少しでも長く滞在してくれるような場をつくること。観光で訪れた人が神社のふもとにある浮見堂(うきみどう)まで来て帰ってしまうこともあったが、その動きを参拝へ、滞在へと導ければ。
神明崎ふくふくを開店して間もなく10か月が経過する今、その願いが現実になりつつある。
また、お客さんがそれぞれに思いを持ってやって来て、ふくふくでの時間を通してそれに向き合ったり、忘れて休んだり、それぞれにとって心地よい時間を過ごす。そんな空間を作れているのだとお客さんの雰囲気から感じられたとき、カフェを「やっていて良かった」と思うのだそう。
地域とのかかわりをより深く、神明崎ふくふくのこれから。
「今も地域のものは使っていますが、もっといろんな形で地域の方々と連携して、オリジナルなものを考えられたらいいんだろうなというように思っています」
そのためにも、まずはもっとたくさんの人に来てもらえるようにしていきたいという。地域とのかかわりが深まっていけばと語る神山さんから、ぶれない神明崎ふくふくの目指す姿が見えてくる。
「ふくふく」という店名には、「福の風が吹くところ」という意味が込められている。神明崎という場所に吹く恵みをもたらす風を、やってきたお客さんにも届けたい。
「神社をお参りして、そのあと喫茶の方で神様の力を少し分け与えていただくというような意味もメニューに込められています。皆さんに福が訪れるきっかけになればいいなと願いお待ちしています」
そう笑顔で神山さんは言う。
神明崎ふくふくで一休みはいかがでしょうか。もしかしたら、福の風があなたの背中をそっと押してくれるかもしれない。
情報
神明崎ふくふく
〒988-0013 宮城県気仙沼市魚町2丁目6-7 五十鈴神社社務所
営業時間:10:00-16:00
定休日:水・木曜(祝日は営業)
TEL:070-8329-0753
HP:
https://www.shinmeisaki-fukufuku.com/kissa
Instagram:
https://www.instagram.com/shinmeisaki_fukufuku/
情報提供元:ローカリティ!
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