ちょっと歩くだけで希少価値の高いものに出会える、世知原の炭鉱跡と石橋群をめぐる旅【長崎県佐世保市】
お茶どころとして有名な世知原町。かつては炭鉱のまちとして栄え、石炭運搬のために鉄道や石橋も造られました。炭鉱閉山後は冷涼な気候を生かしたお茶の栽培が盛んにおこなわれ、全国的に高い評価を受けています。炭鉱の歴史や石橋群、独特のグルメなどちょっと歩くだけでたくさんの魅力に出会えるコースです。
世知原バス停をスタート、躍進の泉公園へ(世知原駅跡)
炭坑が盛んだった頃、石炭の積み出しのための鉄道が通っており、その終着駅が世知原駅でした。炭坑の閉山とともに役目を終え、現在は公園となっています。公園内には蒸気機関車の動輪が展示され、世知原町の発展に尽力し、石橋建設を進めた政治家中倉万次郎の顕彰碑もあります。
毎日バスが通っている現役の石橋「倉渕橋」
2分ほど歩くと世知原町に17基あるアーチ式石橋群の中で最大の橋「倉渕橋」に到着します。単一アーチの石橋では九州でも大きい部類に入ります。1919(大正8)年の建設ですが、現在も毎日バスが通っている現役の橋です。佐々川に降りることもできるので、真下から見学できる珍しい橋でもあります。
長崎県の文化財、石造りの「世知原地区炭鉱資料館」
倉渕橋から歩いて5分。世知原地区炭鉱資料館に到着です。炭鉱が盛んだった時代に炭鉱会社の事務所として使われていました。大正時代初めの建築で、長崎県北部では珍しい石造洋風建築として長崎県の文化財に指定されています。現在は世知原地区で栄えた炭鉱の歴史や資料を展示する資料館となっています。
「真弓精肉店」の揚げサンドで腹ごしらえ
炭鉱資料館から道路を挟んで細い路地を5分ほど進むと、地元のお肉屋さん、真弓精肉店に着きます。ここの名物料理が「揚げサンド」。甘いマヨネーズのポテトサラダとハムを挟んだサンドイッチを豪快に揚げたで、地元の人にとってはソウルフード的な存在です。
樹齢数百年のオガタマの木がお出迎え「山口神社」
7分ほど歩くと、かつては世知原町の村社として信仰を集めていた神社、「山口神社」に到着します。境内には樹齢数百年になるオガタマの木があり、神秘的な雰囲気に包まれています。神社の拝殿でお参りを済ませると社務所の脇から境内の外に出てみましょう。
架けられた当時の姿を残す「山口橋」
山口神社の社務所脇から細い道に出ることができます。この道はすぐ川を渡りますが、ここにもアーチ式石橋がかかっています。これが山口橋です。すごく小さな石橋ですが、岩盤を削った橋台や低い欄干が残るなど、架けられた当時の姿をよく残しています。
100年を超える歴史がのこる「泉橋」
山口橋を渡って道なりに進むと車道との交差点に出ます。この交差点のところに佐々川を渡る橋が架かっていますが、この橋に並平行するようにアーチ式石橋の泉橋が架かっています。1924(大正13)年に架け掛けられた橋で、この橋も低い欄干などかけられた当時の様子をよく残しています。
ほとんど残っていない貴重な遺構「石炭ホッパー跡」
4分ほど歩くと道路からコンクリートの箱状の構造物が見えます。これは炭鉱時代の遺構の一つで石炭を貯め、貨車に積むためのホッパーという施設で、炭鉱には必ず造られた施設です。炭鉱を象徴する施設でしたが、もうほとんど残っていない貴重な遺構です。
皇室にも献上された茶もなかが人気「冨重製菓」
歩いて2分ほどで、1952(昭和27)年創業の和洋菓子店、「冨重製菓」につきます。世知原町特産の世知原茶を使った様々なお菓子が売りです。なかでも皇室へも献上された「茶もなか」はファンが多い逸品です。
世知原を領有していた武将のお館があった天満宮(世知原氏館跡)
徒歩7分で到着するのは「天満宮」。天満宮のある周辺は戦国時代に世知原を領有していた武将「世知原氏」の館跡です。ところどころに点在する古い墓石がわずかになごりを留めています。
桐ノ木橋の近くでのんびりすごそう
9分ほど歩くと、1926(大正15)年に架け掛けられたアーチ式石橋「桐ノ木橋」です。両岸の親柱や低い欄干、未舗装の路面など、架け掛けられた当時の姿を完全に残している貴重な存在です。周辺の田園風景とマッチした橋で、世知原の石橋群を代表する橋の一つです。ミニ公園として整備されており、川に降りてしばらくのんびりするのもいいかもしれません。
江戸時代の梵鐘とその発注書が今なお残る「曹洞宗洞禅寺」
曹洞宗洞禅寺には桐ノ木橋から歩いて9分で到着。戦国時代に世知原を領有した武将世知原氏が菩提寺として建立したと伝えられています。境内には江戸時代の1780(安永9)年に鋳造された梵鐘(ぼんしょう)が残されています。それを発注した際の古文書が寺に残されており、とても貴重なものとして佐世保市の文化財に指定されています。
18基目のアーチ式石橋が新たに見つかった稲荷神社
1716(享保元)年創建と伝えられている稲荷神社は洞禅寺から徒歩10分。稲荷神社とは稲作の神様でキツネを神の使いとして祭っています。京都の伏見稲荷神社が総本山です。この稲荷神社の入口にもアーチ式石橋がかかっていますが、これは数年前に発見された世知原町内18基目のアーチ式石橋です。
世知原はちょっと歩くだけで希少価値の高いものに出会える街です。ぜひ一度足を運んで、その希少価値を楽しんでみてください。
(川内野篤さんの投稿)
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