「教訓が、いのちを救う」——震災の記憶を未来へ伝えるパネル展開催【福島県須賀川市】
福島県須賀川市の市民交流センターtette(テッテ)にて、東日本大震災の記憶を未来へとつなぐパネル展「『3.11伝承ロード』・『写真で見る復興10年の歩み』~教訓が、いのちを救う。~」展が開催された。震災から14年が経過した今、あの未曽有の災害からの復興と、前線で立ち上がった人々の歩みを、改めて見直す機会となった本展示は、静かに、しかし、力強く語りかけてくるものであった。
写真と映像でたどる「記憶」と「復興」
パネルでは、「3.11伝承ロード」の活動紹介に加え、発災直後の対応や被災地の航空写真などが紹介された。福島県いわき市・相馬市、宮城県仙台市等の写真を通して、「震災前の日常」→「一変した被災直後」→「復興10年の姿」が、時間の流れを追って並べられていた。
特に、津波によって失われた沿岸部の営みが、年月を経て少しずつ再生していく様子には目を見張るものがある。震災の記憶を風化させることなく、未来の命を守るために何をすべきか—そんな問いかけが、静かに胸に迫ってくる。
また、東日本大震災直後から復旧・復興に尽力した建設業界の働きも、計り知れないものがある。しかし、その具体的な貢献について広く知られることは少ない。そのため、震災10年という節目に、団体や企業、社員個人が保有する資料・写真・映像を編集・可視化し、映像アーカイブとして認定することで、貴重なレガシーとして後世に残す事業が始まったという。
映像では、震災後の建設業界の対応やインフラ復旧の取り組みが、日英2カ国語で紹介されていた。言葉にならない混乱の中でも、誰かのために動き続けた人々の姿に、静かな感動を覚えた。目に見えない「支え」の存在に気づかされる、貴重な記録だ。
「3.11伝承ロード」とは?
会場の一角では今回のメインでもある「3.11伝承ロード」についても紹介された。この活動の目的は東日本大震災の教訓を後世に伝え、防災意識を高めることだ。震災伝承施設をネットワークでつなぎ、防災に関する知識や意識を向上させることで、災害に強い社会の実現を目指す。この活動は国土交通省の令和6年度「NIPPON防災資産・優良認定」にも選定され、その意義と効果が高く評価された。
今回の展示もその一環であり、「過去を学ぶことが未来を守る力になる」というメッセージを、多くの人に届けている。
「忘れない」ために、「備える」ために
私はこの展示を通じて、記憶と記憶をつなぐことが、未来を形づくるうえでいかに重要かを深く実感した。震災を「知らない世代」が増え、未曽有の出来事が過去のものとなりつつある今、こうした展示がなければ、被災地で何が起き、どのように立ち直ってきたのかを知ることは難しいだろう。
また、「防災」という言葉に対してどこか他人事のように感じていた自分が、この展示をきっかけに、「災害は日常のすぐ隣にある」という現実を強く意識するようになった。そして、いざという時にどう行動するかを、普段から考えておくことの大切さに改めて気づかされた。
10年を超える復興の歩みと、失われた命からの教訓を今に伝えるこの展示は、震災を「過去の出来事」にとどめず、「未来への備え」へと昇華させる貴重な場となった。このパネル展は4年前から東北各地を巡回しており、今回で22回目の開催となる。より多くの人がこの展示に触れ、震災と防災について考える機会を持つことを願ってやまない。
情報提供元:ローカリティ!
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