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「教訓が、いのちを救う」——震災の記憶を未来へ伝えるパネル展開催【福島県須賀川市】

ローカリティ!

福島県須賀川市の市民交流センターtette(テッテ)にて、東日本大震災の記憶を未来へとつなぐパネル展「『3.11伝承ロード』・『写真で見る復興10年の歩み』~教訓が、いのちを救う。~」展が開催された。震災から14年が経過した今、あの未曽有の災害からの復興と、前線で立ち上がった人々の歩みを、改めて見直す機会となった本展示は、静かに、しかし、力強く語りかけてくるものであった。

▲南北に対して東西方向の交通網が弱い被災地での救助作戦について説明したパネル(筆者撮影)
写真と映像でたどる「記憶」と「復興」
▲左から仙台空港、福島第一・第二原発、いわき港、相馬市松川浦、いわき市豊間地区(筆者撮影)

パネルでは、「3.11伝承ロード」の活動紹介に加え、発災直後の対応や被災地の航空写真などが紹介された。福島県いわき市・相馬市、宮城県仙台市等の写真を通して、「震災前の日常」→「一変した被災直後」→「復興10年の姿」が、時間の流れを追って並べられていた。

特に、津波によって失われた沿岸部の営みが、年月を経て少しずつ再生していく様子には目を見張るものがある。震災の記憶を風化させることなく、未来の命を守るために何をすべきか—そんな問いかけが、静かに胸に迫ってくる。

▲筆者の祖母は昭和三陸沖地震、チリ地震、そして、東日本大震災と津波を生涯で3回経験した(筆者撮影)

 また、東日本大震災直後から復旧・復興に尽力した建設業界の働きも、計り知れないものがある。しかし、その具体的な貢献について広く知られることは少ない。そのため、震災10年という節目に、団体や企業、社員個人が保有する資料・写真・映像を編集・可視化し、映像アーカイブとして認定することで、貴重なレガシーとして後世に残す事業が始まったという。

映像では、震災後の建設業界の対応やインフラ復旧の取り組みが、日英2カ国語で紹介されていた。言葉にならない混乱の中でも、誰かのために動き続けた人々の姿に、静かな感動を覚えた。目に見えない「支え」の存在に気づかされる、貴重な記録だ。

▲東日本大震災を伝える伝承施設をマッピングした地図も展示された (筆者撮影)
「3.11伝承ロード」とは?

会場の一角では今回のメインでもある「3.11伝承ロード」についても紹介された。この活動の目的は東日本大震災の教訓を後世に伝え、防災意識を高めることだ。震災伝承施設をネットワークでつなぎ、防災に関する知識や意識を向上させることで、災害に強い社会の実現を目指す。この活動は国土交通省の令和6年度「NIPPON防災資産・優良認定」にも選定され、その意義と効果が高く評価された。

今回の展示もその一環であり、「過去を学ぶことが未来を守る力になる」というメッセージを、多くの人に届けている。

▲備えに終わりはない (筆者撮影)
「忘れない」ために、「備える」ために

私はこの展示を通じて、記憶と記憶をつなぐことが、未来を形づくるうえでいかに重要かを深く実感した。震災を「知らない世代」が増え、未曽有の出来事が過去のものとなりつつある今、こうした展示がなければ、被災地で何が起き、どのように立ち直ってきたのかを知ることは難しいだろう。

また、「防災」という言葉に対してどこか他人事のように感じていた自分が、この展示をきっかけに、「災害は日常のすぐ隣にある」という現実を強く意識するようになった。そして、いざという時にどう行動するかを、普段から考えておくことの大切さに改めて気づかされた。

10年を超える復興の歩みと、失われた命からの教訓を今に伝えるこの展示は、震災を「過去の出来事」にとどめず、「未来への備え」へと昇華させる貴重な場となった。このパネル展は4年前から東北各地を巡回しており、今回で22回目の開催となる。より多くの人がこの展示に触れ、震災と防災について考える機会を持つことを願ってやまない。

情報提供元:ローカリティ!

昆愛
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カテゴリ
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