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姿を変え続け今も活気あふれる秋葉原。世界中の人を魅了する日本アニメの評価からみる日本人の価値観【東京都千代田区】

ローカリティ!

最近日本の観光地を訪れる訪日外国人をたくさん見るようになりました。今回取材をした「秋葉原」もその場所の一つ。かつては「電気街」として名をはせた秋葉原は、今はゲームやフィギュアなど日本発のコンテンツにまつわる商品がとくに人気となっているようです。時代の変化とともに全く違う街へと変貌(へんぼう)を遂げた秋葉原の歴史を振り返るとともに、世界中の人をこの地に引き寄せるもの、とくに日本のアニメの魅力について、海外の方にインタビューを試みましたので、これについて以下にレポートをしたいと思います。

2024年 年間訪日外国人数は過去最高の3,687万人に到達

最近「インバウンド」という言葉をよく耳にするようになりました。「インバウンド」とは、英語「inbound(内側に向かう)」に由来する言葉で、とくに観光やビジネスにおいて「外国人が日本を訪れること」を意味する言葉です。
訪日外国人数の推移を見てみると、2020年以降感染症の影響により激減した訪日外客数1)はその後回復し、2024年には過去最高となる年間訪日外客数3,687万人2)となりました。

グラフは出典情報2)のデータを元に筆者が作成。2003~2023年は確定値、2024年は暫定値

外国人に人気の日本の観光地はたくさんありますが、中でもここ「秋葉原」はとくに人気の場所。ここで売られる様々な商品やその街の様子を一目見ようと、世界中の人々が集まり今日もたいへんなにぎわいをみせています。

家電からPC・ソフト、ホビー、アミューズメントへと、その看板を掛け替えては発展し続ける「秋葉原」。変わらないのは「世界最大級と技術力」
右側に見えるのがJR秋葉原駅の「電気街口」。現在はアニメのキャラクターに囲まれています
JR秋葉原駅中央改札口の様子
「秋葉原電気街」の形成とバブル崩壊後の不況

元々秋葉原が「電気街」となった背景には、以下のような歴史3)があります。

戦後東京は焼け野原となり完全な物不足の状況。人が集まる駅周辺には当時様々なものを売る闇市が形成されていきました。

そのような状況の中、秋葉原に電気店が集まる一つのきっかけとなったのは、近くの電機工業専門学校(現東京電機大学)の学生がアルバイトで始めたラジオの組み立てと販売。これが当時のラジオ人気の中、爆発的に売れたといいます。当時のラジオは完成品があまりなく、真空管、スピーカーなどの部品を組み合わせて作る「組み立て式ラジオ」が主流でした。

この学生が始めた商売を見て、周りの露天商も商材としてラジオ部品を取り扱うようになります。

都電を含む鉄道のアクセスの良さも手伝って、多くの電気店がこの地に集まっていきました。

やがて戦後復興の街づくりのため、GHQの令により露店は撤廃され、これら電気店はガード下とその周辺に移転をすることになります。こうして現在のような「秋葉原電気街」が作られていきました。

ラジオの販売に続いては、「白黒テレビ・冷蔵庫・洗濯機」の「三種の神器」が普及していくことでさらに活況を呈することになります。

1960年代になると、カラーテレビ、クーラー、ステレオが販売され、高度成長の真っただ中で家電業界はさらに成長を遂げていきました。

70年代に入ると度重なる円高不況や二度のオイルショックに見舞われながらも、これを乗り越え発展していった家電業界。その勢いはバブル崩壊とほぼ時を同じくして失墜し、その後不況へと落ち込んでいくことになります。

併せて当時、郊外型の家電量販店や宅配による販売が普及し、マスコミにも取り上げられるほど秋葉原の集客力は地に落ちてしまうのでした。

集客力を回復し、ポップカルチャーの聖地へ

回復のきっかけとなったのは、1980年代中頃からのPCブーム。Apple社がマッキントッシュ、日本IBMがDOS/V機、マイクロソフトはWindows3.0を発売します。

さらに1995(平成7)年には、Windows95が発売され、これが起爆剤となり秋葉原はPCの街へと完全に変容を遂げていくのでした。

続くインターネットの普及によりIT業界はめざましい発展を遂げますが、2000年には「ITバブル」が崩壊します。

この2000年を境に再び秋葉原は大きな変容を迫られることになります。
PC関連商材を求めて秋葉原に来ていたPC愛好家(通称「オタク」)がゲーム、アニメ、フィギュアに興味を示したことを背景に、メイド喫茶などが登場するようになり、それらが一般大衆にも受け入れられるようになっていくことで、「ポップカルチャーの聖地」へとその看板を掛け替えていくのでした。

その背景にあるとされるのは、時代の大きな変化の中で、新たな時代を生き抜くため自ら変化を生み出していった街の「エネルギー」、そして日本だけでなく世界の舞台でも引けを取らない「最大級」の品ぞろえ、どんな分野の商品にも共通する高い「技術力」でした。

フィギュア、ゲームが街にあふれる現在の秋葉原。そのカオスな街並みと人々の活気は今も健在
街全体がアミューズメントパーク

それでは今現在、秋葉原の街はどのように変化しているのでしょうか。

現在は、とくにアニメやゲームのキャラクターから作られたフィギュアを販売する店舗がとても多くなっており、さらには商品を販売するだけでなく、ゲームやコンセプトカフェのような体験型の娯楽施設がたくさんあって、まるで街全体がアミューズメントパークのようになっています。

所狭しとたくさんのフィギュアが並ぶフィギュア専門店
元となる作品の名場面を思い起こさせるフィギュアも並んでいる
9階全てがゲームフロアのビル。かつてここはあの秋葉原を代表する大型電気店「ロケット」でした
このビルの1階から4階は上記のような景品ゲームのフロア。景品の多くがフィギュア
お弁当のおかずのウィンナーまでかわいらしいキャラに
6~8階の音楽ゲームフロアにあったゲーム。遊び方が想像つかない筆者にはドラム洗濯機にしか見えませんでした
外ではカートを楽しむ人も
街から感じる「たくましさ」は今なお健在

変わりゆく秋葉原の街において、今でも変わらないのはアジアによく見られる混沌(こんとん)としたカオスな街の雰囲気。整然とした欧州の街並みには見られない、何かエネルギーを感じる「たくましさ」と人々の「活気」は今も健在です。

中央通りから見える街の全景
看板は変わっても変わることがないカオスな街の雰囲気
なぜこんなにも世界中の人々を引きつけるのか?

秋葉原でこんなにたくさんフィギュアが販売されているのは、何といってもその元になる漫画やアニメ、ゲームなど、日本発のコンテンツが世界中で人気となっているからです。
それでは日本のアニメはなぜそのように世界で受け入れられ人気となっているのでしょうか?

今回はとくに海外から来ている方々にその魅力について、現地でのインタビューを試みました。

質問:日本のアニメの魅力はどんな点にあると思いますか?

回答例:

「大人が見ても楽しめる(欧米のアニメではまだまだ少ない)。予期せぬ驚きがある」(ロシアからの1名、他多数)

「絵がきれい。細かいところまで精緻(せいち)に描写がされている。」(米国からの2名、他多数)

「映画やテレビドラマなど、現在の欧米のコンテンツはシナリオのパターンが決まっていて、次の展開が予想できてしまう。日本のアニメは次の展開がどうなるのかわからないので面白い」(ドイツからの2名)

「ストーリーの中にメッセージがある」(米国からの2名)

「キャラクターの行いが礼儀正しい」(インドネシアからの2名)

「うまく言葉では説明できないが見ていて面白い」(中国からの3名、他多数)

以上、母数は少ないですが、およそ上記にあるような回答でした。

これらの回答から、そのようなアニメを制作する日本人の価値観には以下の特徴があることが伺えます。

アニメは子どもだけでなく大人も楽しめる ⇒ 決め付けやレッテル張りのない物の見方・とらえ方細かいところまで精緻に描写する ⇒ 細かいところにも気を配る精神、職人気質(美意識)礼儀正しいキャラクター ⇒ 秩序や調和を重んじる価値観

自分のことについて、他人の方がむしろよく分かっていることがあるように、日本文化の特徴は外国の方の視点から見た方がよく理解できる場合があると思います。

これらが特徴として挙げられているということは、言い方を変えるとこれらは海外では当たり前ではないとも言える訳です。

このような回答とそこから伺える点については、改めて納得できるところを感じたり、意外な点があることに気付かされるなど、人それぞれ様々な意見があるのではないでしょうか。

また一方で、
・ここに挙げられた特徴について、我々はおよそ正しく認識できているのだろうか?
・周りに影響され、自分の欠点ばかりを見て、今むしろ自分たちの特徴や強みを手放そうとしてはいないだろうか?

そんなことも今回の取材を通じて改めて考えさせられました。

時代の変化に適応し、その姿を変幻自在に変化させることで、今なお活気を失わない街「秋葉原」。
その姿は実に「日本的」であると感じるのは筆者だけでしょうか。

秋葉原だけでなく、日本全体が時代の荒波を乗り越え、活力ある社会をまた取り戻せるよう願ってやみません。そのためのヒントになるものが、ここ秋葉原にはあるのかもしれません。

最後に今回の取材でご協力いただいた方々、改めて感謝申し上げます。

路上に設置されているカプセルトイ販売機(通称「ガチャガチャ」)

取材地:東京都千代田区秋葉原

(以下出典情報等)

「訪日外客数とは、法務省集計による出入国管理統計に基づき、算出したものである。訪日外客は、外国人正規入国者から、日本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き、これに外国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者のことである。駐在員やその家族、留学生等の入国者・再入国者は訪日外客に含まれる。なお、上記の訪日外客には乗員は含まれない。」
(引用元:日本政府観光局(JNTO)2025年5月21日報道発表資料「訪日外客数(2025年4月推計値)」
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/_files/20250521_1615-1.pdf)
データ出典:「日本政府観光局(JNTO)」ホームページ内「訪日外客統計/時系列推移表」
(https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/)。
グラフは本データを元に筆者が作成。2003~2023年は確定値、2024年は暫定値。参考資料:秋葉原電気街振興会・秋葉原アーカイブス
(https://akiba.or.jp/archives)
画像3, 4及びアイキャッチ画像:協力 Game Panic秋葉原、画像5~8:協力 株式会社アストップ

情報提供元:ローカリティ!

愛智なおゆき
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カテゴリ
社会

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