• トップ
  • 社会
  • ジェネレーションZの消費行動──所有から“参加”へと移る価値観の変化

ジェネレーションZの消費行動──所有から“参加”へと移る価値観の変化

消費という行為が、単に「モノを買う」ことではなく「意味を選ぶ」ことに変わりつつあります。特に1990年代後半から2010年代前半に生まれたジェネレーションZ(Z世代)は、この変化の最前線にいます。
彼らは、所有よりも「共感」や「体験」を重視し、企業や社会との関わり方を再定義しています。この価値観の転換は、経済活動だけでなく、テクノロジーや文化のあり方、そして私たちの暮らし方にまで影響を及ぼしています。モノからコトへ、さらに「共に創る」という参加型の消費へ。Z世代の行動変容は、次世代の社会モデルを映す鏡といえるでしょう。

 

“持つ”より“関わる”──Z世代が求める体験型の価値

Z世代の消費行動を特徴づけるのは、「自分ごととして関わる」姿勢です。内閣府が2024年に実施した消費意識調査では、20代の68.3%が「企業の社会的姿勢を考慮して商品を選ぶ」と回答しました。環境配慮型の商品やエシカルファッションが若者に広がっている背景には、こうした価値観の変化があります。
彼らにとって買い物は“支持表明”の手段であり、購入行為そのものが社会的メッセージになっています。再生素材を使うブランドや、動物実験を行わないコスメブランドなど、価値観の透明性を重視する企業が選ばれやすい傾向にあります。
この流れを支えているのが、サブスクリプションやシェアサービスといった“所有を前提としない”仕組みです。矢野経済研究所の調査によれば、日本のサブスク市場は2023年に1兆2,000億円規模へと拡大し、今後も年率8%前後で成長が見込まれています。モノを持たない自由さと、必要なときに使う利便性を両立させたこの仕組みは、まさにZ世代のライフスタイルに合致しているといえます。

 

テクノロジーが生む“共創型消費”──SNSからメタバースへ

デジタルテクノロジーの進化は、Z世代の消費行動をさらに多様化させています。SNSやメタバースを通じて、消費者はブランドやクリエイターと対話しながら、新しい価値を共に生み出す存在になっています。
アパレルブランドがSNS上でユーザーの意見を反映したデザインを採用したり、アーティストと共同で限定アイテムを制作したりといった事例が増えています。Z世代は“受け取る側”ではなく、“共に創る側”としてブランドと関わることに魅力を感じています。
Deloitteの2025年レポートによれば、Z世代の72%が「モノより体験にお金を使いたい」と回答しています。AR(拡張現実)によるバーチャル試着や、デジタル空間でのライブイベントなど、テクノロジーによって生まれる体験の共有は、従来の「購入中心の経済」から「共創型の経済」への転換を後押ししています。

 

シェア文化がもたらす“つながりの消費”

こうした動きを支えているのが、シェアリングの文化です。個人がすべてを所有するのではなく、他者と共有することで新しい価値を見出す考え方が広がっています。
経済産業省のデータによると、日本のシェアリングエコノミー市場は2023年時点で約2兆6,000億円に達し、2030年には5兆円を超えると予測されています。カーシェアやコワーキング、コリビングなど、柔軟な働き方・暮らし方を実現する仕組みが、Z世代の生活スタイルに深く溶け込んでいます。
さらに博報堂生活総合研究所の調査(2024年)では、Z世代の約6割が「環境負荷の少ない製品を選びたい」と回答しています。持続可能な社会を支えるために、自分の消費行動がどのような影響を与えるかを意識しているのです。消費が社会貢献の一形態として機能し始めているともいえるでしょう。

 

“参加”が未来を動かす──新しい社会のデザインへ

Z世代の消費は、「買う」から「共に作る」へと発展しつつあります。企業はこれまでのように製品を提供するだけでなく、消費者と価値を共有するパートナーになることが求められています。
共感を軸にしたストーリー設計や、消費者が主体的に関われるコミュニティの形成が、ブランドの信頼を育てる時代に入りました。マーケティングも単なる販売促進ではなく、共感を通じて持続可能な関係を築く取り組みへと進化しています。
この流れは、経済構造の変化にとどまらず、社会のあり方そのものを問い直す契機になっています。所有に価値を置く社会から、共創と共有を重んじる社会へ。Z世代が示す“参加する消費”は、より包摂的で持続可能な未来を形づくる力となっています。

カテゴリ
社会

関連記事

関連する質問