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施設にかかる費用は医療費控除になる?老人ホームとデイサービスの違いとは

高齢化が加速する日本社会において、介護施設の利用は多くの家庭で現実的な選択肢となっています。親の介護をきっかけに老人ホームへの入居を検討したり、デイサービスを日常的に活用するようになったりする中で、「これらの費用は税制上どのように扱われるのか?」という疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。特に、年末調整や確定申告の時期には、施設利用にかかる支出が「医療費控除」の対象になるのかどうかが重要な関心事となります。

医療費控除の基本

まず、医療費控除とはどのような制度なのかを確認しておきましょう。医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費のうち、一定額を超えた部分について所得から差し引くことができる制度です。この控除により、所得税や住民税が軽減され、還付金を受け取れる可能性があります。
控除額は次の計算式で求められます。

医療費控除額 = 支払った医療費の合計額 − 保険金等で補てんされる金額 − 10万円(または所得の5%のいずれか少ない方)

ここで重要なのは、医療費に含まれるのは病院の診療費だけでなく、条件を満たす介護サービスの費用も対象になる場合があるという点です。したがって、老人ホームやデイサービスの費用についても、内容によっては控除の対象になる可能性があります。

 
老人ホームの費用はどこまで医療費控除の対象になるのか

老人ホームといっても、その種類はさまざまで、医療費控除の適用範囲にも違いがあります。代表的なものとして、「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」などがあり、それぞれ提供するサービスや役割が異なります。医療費控除の対象になるのは、医師や看護師による医療的サービスや、介護保険によって提供される介護サービスの費用です。たとえば、医師の指示に基づいて行われる療養管理や、看護、機能訓練、薬の管理などがこれに該当します。

一方で、生活のための費用——たとえば食費、居住費、光熱費、趣味の活動費といった部分は、たとえ老人ホームで発生したものであっても医療費控除の対象にはなりません。そのため、領収書の内訳をしっかり確認し、どの費用が対象になるのかを明確にしておくことが大切です。

デイサービスは医療費控除の対象になる?

デイサービスとは、要介護認定を受けた高齢者が、日帰りで施設を利用し、入浴、食事、機能訓練などの介護サービスを受ける仕組みです。利用者が在宅生活を続けながらも、適切な介護や交流の場を得ることができる重要な支援手段といえます。

このデイサービスにかかる費用も、条件を満たすことで医療費控除の対象になります。具体的には、要介護認定を受けており、かつ介護保険に基づいて提供される介護サービスに支払った自己負担分が該当します。たとえば、入浴介助や機能訓練、看護職員による健康チェックなどがそれにあたります。
ただし、ここでも注意が必要です。食事代、送迎費、レクリエーション活動にかかる費用など、医療的な意味合いを持たない費用については、医療費控除の対象外となります。デイサービスの利用明細書や領収書を確認し、対象となる項目を整理しておくことが重要です。

医療費控除を受けるには?確定申告の実務とポイント

医療費控除を受けるには、会社員や年金生活者であっても年末調整ではなく、自ら確定申告を行う必要があります。特に高齢者本人ではなく、その家族が施設費用を支払っている場合、その支払者が控除の対象者となります。

申告にあたって必要となる書類は以下の通りです。

  • 医療費控除の明細書(※2020年以降、領収書の提出は不要ですが5年間の保存義務あり)

  • サービス提供施設からの領収書や費用明細

  • 介護保険の給付対象となるサービスの証明書(自治体で発行可能な場合も)

近年では、国税庁のe-Taxを利用すれば、自宅からオンラインで申告することもでき、利便性が向上しています。提出前に不明点があれば、最寄りの税務署や市区町村の高齢者相談窓口で確認すると安心です。

まとめ:知っておきたい税制の知識で介護費用の不安を軽減

老人ホームやデイサービスなど、高齢者施設の利用に伴う費用は、生活費として家計に大きな影響を与えるものです。しかし、医療費控除を上手に活用することで、税金の一部が還付され、経済的な負担を軽減することができます。大切なのは、施設の種類や提供されるサービスの内容を正確に把握し、控除対象となる費用をしっかり区別することです。そのためには、領収書の保管やサービス内容の確認、必要書類の準備など、日頃からの備えが欠かせません。
確定申告時には、サービス内容の内訳や領収書の確認を丁寧に行い、還付を受けるための準備を整えておきましょう。日々の暮らしの中で少しでもマネー負担を減らすために、こうした制度をうまく活用することがこれからの時代には欠かせません。

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