子供に当たってしまう自分への嫌悪感。心の余裕を取り戻すヒント
子どもにきつい言葉を向けてしまった日の夜、胸の奥がずっとざわついて眠れない。寝顔を見ながら「どうしてあんな言い方を」と後悔し、自分が嫌になる――そんな時間を過ごしたことはありませんか。
厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」や「少子化社会対策白書」などの関連データを見ると、育児に「負担を感じる」と回答する保護者は6割前後にのぼる年もあり、孤立感や不安を抱える家庭が決して少数派ではないことが読み取れます。核家族世帯は全体の約8割に達し、育児の責任が家庭内に集中しやすい構造も背景にあると考えられます。
子どもを大切に思っているからこそ生まれる後悔。その痛みは、親としての真剣さの裏返しともいえます。まずは「自分だけがおかしい」という思い込みから、距離を置くことが出発点になるのではないでしょうか。
怒りは“弱さ”ではなく、疲れのサインかもしれない
「どうして私はすぐ怒ってしまうのだろう」と思うことがありますが、怒りは単なる性格の問題ではないといわれています。睡眠不足が続くと、感情をコントロールする前頭前野の働きが弱まりやすいことが神経科学の研究で示されています。子育て世代の平均睡眠時間は6時間未満というデータもあり、慢性的な疲労状態にある人が多いことがうかがえます。怒りは心理学で“二次感情”と呼ばれ、その奥には不安や悲しみ、焦りが隠れていることが少なくありません。「わかってほしい」「ちゃんと育てたい」という思いが強いほど、裏切られたように感じる瞬間があるのかもしれません。
アンガーマネジメントでは、怒りのピークは数秒から十数秒で落ち着くと説明されます。深呼吸をゆっくり数回するだけでも自律神経が整いやすくなるとされ、衝動はやわらぐことが期待されます。その場をいったん離れることも、逃げではなく心を整える時間と考えられます。怒らない親になることより、怒りに飲み込まれにくい自分を育てることのほうが現実的ではないでしょうか。
「ちゃんとしなきゃ」を少しだけ手放してみる
SNSや雑誌に映る理想的な家庭像は、気づかないうちに基準を引き上げます。毎日手作り料理、いつも穏やかな笑顔、整った部屋。そんな姿に比べてしまうと、自分は足りないと感じてしまうかもしれません。しかし総務省の統計によれば、共働き世帯は全体の7割を超え、時間に余裕のない家庭が多数派です。その中で「完璧な親」であることを自分に課し続けるのは、あまりにも重い負担といえそうです。
自治体の一時保育やファミリーサポート制度の利用者は年々増加傾向にあり、外部支援を活用することは特別な選択ではなくなりつつあります。支援を受けている家庭ほど育児満足度が高い傾向にあるという研究報告も見られます。助けを借りることは手抜きではなく、持続可能な育児戦略と捉えるほうが現実的といえそうです。
また、「やらないこと」を決める勇気も重要です。完璧さを目指すより、笑顔で向き合える時間を増やすことのほうが、子どもにとって価値が高いのではないでしょうか。
自分にやさしくできた分だけ、子どもにもやさしくなれる
声を荒らげてしまった後にできることは何もない、そう思ってしまいがちですが、関係修復の機会は残されています。落ち着いた後に「さっきは言いすぎたね」と伝える姿勢は、子どもにとっても「失敗してもやり直せる」という学びになると考えられます。心理学では修復行動が親子の信頼関係を強めると報告されています。
セルフコンパッションという概念をご存じでしょうか。自分に対して思いやりを向ける態度は、ストレス耐性や回復力を高めると多くの研究で示されています。自分を厳しく叱責するよりも、「今日はよくやった」と認めるほうが、翌日の余力につながることが見込まれます。
子どもを一日安全に過ごさせたこと、食事を用意したこと、それだけでも十分価値のある行動です。完璧でなくても、今日を乗り切った自分を認めてあげる。その積み重ねが、穏やかな明日につながるのではないでしょうか。育児は、子どもを育てる時間であると同時に、自分の感情と向き合い、少しずつ整えていく時間でもあります。自己嫌悪に沈む夜があったとしても、それはあなたが真剣に向き合っている証かもしれません。
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