インターネットが普及し、情報を得る手段として検索エンジンが長らく主流でした。しかし、近年ではユーザーの行動パターンが変化し、検索を介さずに情報を取得するケースが増えています。特にSNSの普及によって、アルゴリズムが個々の興味関心に基づいたコンテンツを提供するようになったことが、この傾向を加速させています。2023年の調査では、Z世代の約70％が「情報収集はGoogle検索よりもSNSを利用する」と回答しており、この変化は今後さらに進むと考えられます。

このような時代において、企業やメディアはどのような戦略を採るべきでしょうか。ここでは、「検索しない時代」に対応するメディア戦略について、具体的なデータを交えながら詳しく見ていきます。

1. ユーザーの情報収集方法の変化

従来、ユーザーは知りたい情報をGoogleやYahoo!などの検索エンジンを使って検索し、目的に応じたサイトを訪問していました。しかし、現在ではこの方法に頼らず、SNSや動画プラットフォームを活用して情報を得るケースが増えています。

たとえば、Twitter（X）やInstagram、TikTokなどのSNSでは、アルゴリズムがユーザーの興味関心に基づいて最適なコンテンツを推薦します。TikTokでは視聴履歴や「いいね」の傾向をもとに関連動画が次々と表示されるため、検索をしなくても興味のある情報にたどり着くことができます。また、YouTubeショートは2023年時点で1日当たり500億回以上再生されており、短い動画形式での情報取得が主流になりつつあります。さらに、LINEオープンチャットやFacebookグループ、Redditのようなコミュニティを通じて、検索エンジンではなく他者の意見を参考にするケースも増加しています。特に、商品のレビューや旅行情報は、SNSの投稿やクチコミが影響を与えることが多くなっています。

また、ニュースアグリゲーションサービスも発展しており、SmartNewsやYahoo!ニュースアプリでは、ユーザーの関心に基づいたニュースが自動的に提供されるようになっています。2024年のデータによると、日本国内でのSmartNewsの月間アクティブユーザー数は2500万人を超えており、ニュースの取得手段として定着していることがわかります。
このような変化により、企業やメディアは検索エンジン経由の流入に依存しない新たな戦略を考える必要があります。

2. 「検索しない時代」におけるメディア戦略

SNSファーストのコンテンツ設計

現在の情報取得の主戦場はSNSであるため、コンテンツもSNS向けに最適化することが求められます。
まず、視覚的なインパクトを重視し、アイキャッチ画像やショート動画を活用することが重要です。特に、InstagramやTikTokのリール形式の投稿は、短時間で多くのユーザーに届く可能性があります。さらに、長文よりも簡潔で要点を押さえた内容が好まれる傾向があるため、1投稿あたりのテキストは140字以内にまとめるのが効果的です。また、ハッシュタグを適切に活用することで、検索エンジンを介さずとも発見されやすくなります。

影響力のあるインフルエンサーとの連携

近年では、SNSのおすすめ機能やフォロワーの投稿から情報を得るユーザーが増加しています。そのため、インフルエンサーや専門家とのコラボレーションが欠かせません。
例えば、フォロワー数が10万人以上のインフルエンサーによる商品レビューは、通常の広告よりも2倍以上のエンゲージメント率を生むというデータがあります。このため、インフルエンサーを活用する際には、単にフォロワー数を見るのではなく、実際のエンゲージメント率やコメントの内容を分析し、ブランドと相性の良い人物を選定することが重要です。

AIを活用したパーソナライズド配信

検索しない時代において、AI技術を活用したコンテンツ配信が重要になります。Netflixのレコメンドエンジンでは、ユーザーごとの視聴履歴を分析し、個々の嗜好に最適化されたコンテンツを提供することで高い視聴率を実現しています。同様に、メディア運営においてもAIを活用し、ターゲットユーザーに合わせた情報提供を行うことで、より高いエンゲージメントが期待できます。

広告モデルの最適化とマネタイズ戦略

従来のSEO中心の広告モデルではなく、SNSや動画プラットフォームに適したマネタイズ方法を導入することが求められます。

たとえば、2023年のデータによると、Instagramストーリーズ広告のクリック率は1.7%であり、従来のディスプレイ広告（0.9%）よりも高い成果を示しています。このようなデータをもとに、ネイティブ広告を活用するほか、サブスクリプションモデルを導入することで、継続的な収益を確保する方法が有効です。

3. 企業が今すぐできるアクション

企業が「検索しない時代」に対応するためには、今すぐに実行できる具体的な行動が必要です。まず、SNSを中心としたコンテンツ戦略を見直し、視覚的に魅力的な短尺コンテンツを増やすことが重要です。次に、影響力のあるインフルエンサーとの連携を強化し、ブランドの認知度を向上させることが効果的です。

さらに、AIを活用してユーザーの興味関心を分析し、ターゲットに適した情報を提供することで、より高いエンゲージメントを確保できます。加えて、SNS向けの広告戦略を最適化し、収益モデルの多様化を図ることも求められます。これらの施策を組み合わせることで、検索エンジンに依存しない強固なメディア戦略を築くことができるでしょう。

まとめ

検索をしなくても情報が得られる時代において、企業は従来のSEOに頼るのではなく、新しいメディア戦略を積極的に取り入れる必要があります。SNSファーストのコンテンツ設計やインフルエンサーとの協力、AIを活用したパーソナライズド配信、さらには収益モデルの多様化など、柔軟に対応することで競争力を高めることができます。変化の激しいデジタル環境の中で、企業は常にユーザーの行動を分析し、最適な戦略を実践し続けることが求められます。