• トップ
  • マネー
  • 気候変動と仮想通貨:マイニングと環境の意外な関係

気候変動と仮想通貨:マイニングと環境の意外な関係

仮想通貨と気候変動。この2つは、一見するとまったく異なる領域に見えるかもしれません。しかし近年、デジタル資産の広がりとともに、その背後にあるエネルギー消費や環境負荷が世界的に注目されるようになってきました。とりわけ「マイニング」と呼ばれる仮想通貨の生成・取引承認プロセスは、膨大な電力を必要とし、その多くが化石燃料に依存している現状があります。
さらに、気候変動による自然災害やエネルギー価格の変動が、マイニングの事業継続性や通貨の収益性にまで影響を及ぼし始めています。私たちが仮想通貨に投資する際も、単なる価格変動だけでなく、その環境的側面を考慮することが、今後ますます重要になるでしょう。

 

高性能コンピュータが支える仮想通貨の舞台裏

仮想通貨の多くは、「分散型台帳」と呼ばれるブロックチェーン技術に支えられており、取引の正当性を保つために“承認”というプロセスが必要です。特にビットコインなどでは、「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」という仕組みを採用しており、膨大な計算作業によってブロックを生成し、その報酬として仮想通貨を得る仕組みになっています。

この作業、いわゆる「マイニング」は高性能なコンピュータを使って24時間体制で行われ、大量の電力を消費します。ケンブリッジ大学の統計では、ビットコインの年間電力使用量は約120TWhに達しており、これはスウェーデン1国の消費量にも匹敵するほどです。
こうした電力が、再生可能エネルギーではなく石炭火力や天然ガスに由来している場合、マイニングは地球温暖化を加速する要因にもなり得ます。

 

気候変動がマイニング事業に与える直接的な影響

一方で、地球規模の気候変動は仮想通貨の生産構造にも影響を与えています。たとえば中国・四川省は、かつて水力発電による安価な電力供給があり、多くのマイナーがこの地域に集中していました。しかし近年の干ばつにより水力発電量が大幅に低下し、結果として電力価格が上昇し、採算が取れなくなった企業が続出しました。
また、熱波や寒波によって電力需要が逼迫すると、エネルギーコストが高騰し、マイニングの利益率は大きく変動します。天候や季節といった自然要因が、仮想通貨の運用や資産形成にまで影響するという事実は、これまであまり語られてきませんでしたが、今後は重要な投資判断材料になると考えられます。

 

イーサリアムが示す“環境との共存”への道

こうした中、注目を集めているのがイーサリアム(Ethereum)の動きです。イーサリアムは、ビットコインに次ぐ規模の仮想通貨であり、単なる通貨としての機能だけでなく、NFTやDeFi(分散型金融)といった次世代サービスの基盤として活用されています。

かつてはビットコインと同様にPoW方式を採用していたイーサリアムですが、2022年9月に「マージ(The Merge)」と呼ばれる技術的転換により、「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」方式に完全移行しました。この新しい仕組みでは、コインの保有量に応じて取引承認の権利が与えられるため、大量の計算処理を必要とせず、エネルギー消費を大幅に抑えることができます。実際、イーサリアム財団によると、この移行によって99.95%以上のエネルギー削減が実現したと報告されています。環境負荷の低減に成功したことで、イーサリアムはESG投資家からの評価も高まり、今後の成長性にもポジティブな影響を与えると期待されています。

 

資産形成とサステナビリティの両立を目指す時代へ

仮想通貨は、これまで主に収益性や投資効率という視点で語られてきました。しかし今後は、環境へのインパクトを含めた「トータルでの価値評価」が重要になる時代に入っています。とくに若年層の投資家やESGを重視する企業の間では、「どの通貨を選ぶか」が地球への意思表示とも言えるようになっています。
再生可能エネルギーで運営されるマイニング施設の存在や、PoS型通貨へのシフトは、その代表的な動きです。資産運用の選択肢が広がるなかで、私たち一人ひとりが“持続可能な選択”を意識することが、未来をより良いものにする第一歩になるのではないでしょうか。

 

まとめ:仮想通貨と気候の関係を見直す視点を持つ

仮想通貨は、技術革新と資産運用の新しい形として注目され続けています。しかしその一方で、環境への影響という側面が見逃せなくなってきました。マイニングによる電力消費、気候変動によるインフラリスク、そして環境配慮型の技術進化。こうした要素を意識することで、投資の視野が広がり、より長期的かつ持続可能な戦略を立てやすくなるはずです。
環境と経済は相反するものではなく、両立を目指す時代に入っています。仮想通貨の選び方ひとつにも、私たちの意識が問われています。これからの投資は、未来をつくる一歩でもあります。環境に配慮した判断が、資産形成だけでなく、地球の健やかな未来にもつながっていくのではないでしょうか。

カテゴリ
マネー

関連記事

関連する質問