ビジョナリー・カンパニーが「やっていること」── 偉大さを支える5つの行動原則

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ビジョナリー・カンパニーが「やっていること」── 偉大さを支える5つの行動原則

前回のおさらいと今回の問い
前回(#97連動)は、ジム・コリンズ著『ビジョナリー・カンパニー』の本質── 「時を告げず時計をつくる」「カリスマは不要」「基本理念を維持し進歩を促す」── を読み解きました。
今回は問いを一段下ろします。「では、ビジョナリー・カンパニーは具体的に何をやっているのか?」── 本書が抽出した5つの行動原則を、現代の経営文脈に照らして解説します。

原則①:社運を賭けた大胆な目標(BHAG)を持つ
BHAG(ビーハグ)は Big Hairy Audicious Goals の略。「単なる目標」とは違い、明確で説得力があり、集団の力を結集させる目標を指します。
象徴的な事例がケネディの「月面着陸」宣言。専門家の多くが懐疑的だった計画を、国家規模の動員で成し遂げました。フォードの「大衆のための乗用車を作る」も典型的なBHAGで、1907年にこれを掲げて30社以上の競合から業界トップへ駆け上がりました。
ただし注意点もあります。フォードはBHAGを達成した後、次のBHAGを設定しなかった。その間隙にGMが「フォードを追い抜く」というBHAGを掲げ、立場が逆転しました。BHAGは達成したら終わりではなく、次を設定し続けることが重要です。

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原則②:カルトのような文化を持つ
現代では「カルト的」という言葉にネガティブな響きがありますが、本書が言うのは「理念への徹底したコミットメント」です。
ビジョナリー・カンパニーの職場は、合う社員にとっては素晴らしい場所だが、誰にとってもいい職場ではない。基本理念に合わない社員が働ける余地は意図的に少ない、という設計思想です。
ディズニーは時給の清掃スタッフでも最低2回の面接を行います。厳しい身だしなみ規則に対するストライキが起きた際、会社は規則を維持し、指導者を解雇しました。これは「誰にとってもいい職場」を捨て、「理念に共感する人にとって最高の職場」を選ぶ覚悟の表れです。

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原則③:大量に試して、うまくいったものを残す
BHAGが「あの山に登ろう」(目標明確)なら、こちらは「いくつもの方法を試そう」(道筋は曖昧)── 進化による進歩の発想です。
ウォルマートのモットーは「何でもやってみて、手直しして、試してみる」。有名なのが「挨拶係」の事例です。ある店長が万引き対策として、人当たりのいい老人を入口に配置しました。客は歓迎されて気持ちよく買物でき、万引き犯には抑止力として働く。この小さな実験の効果が証明され、全店に展開されたのです。
BHAGで山を決め、頂上への道は「進化による進歩」で探る── この組み合わせが、変化に強い組織をつくります。

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原則④:生え抜きの経営陣を持つ
本書の発見の中でも特に印象的なのが、この事実です。18社の合計113人のCEOのうち、社外招聘はわずか3.5%。残り96.5%は内部昇格でした。
差をもたらす最大要因は「経営者個人の質」ではなく「優秀な経営陣の継続性」── 継続性によって基本理念が維持されるからです。外部からCEOを招聘するリスクは、基本理念からの乖離と、経営の断絶による足踏み。これを避けるための原則と言えます。

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原則⑤:決して満足しない
ビジョナリー・カンパニーは「明日にはどうすれば、今日よりうまくやれるのか」と常に問い続けます。自己満足こそが衰退の入り口だからです。
そのために彼らは「不安感を生み出す」仕組みを内蔵しています。ボーイングは管理職に「競争相手の立場でボーイングを壊滅させる戦略」を立案させる。ノードストロームはSPH(1時間当たり売上)ランキングで同僚比較を行う── 絶対基準がないため「達成してほっとする」ことがありません。
意図的に居心地を悪くする仕組み── これがビジョナリー・カンパニーの自己更新装置です。

おわりに:実装するのはNo.2の仕事
5つの原則を眺めると、いずれも「掲げる」のはトップでも、「実装し続ける」のはNo.2の仕事だと気づきます。BHAGをマイルストーンに分解する、カルチャーを採用基準に翻訳する、実験の仕組みを設計する、後継者を育てる、不安感を制度化する── これらはすべてNo.2の領域です。
「偉大な企業の裏には、必ず規律ある二番手がいる」── 本書を二番経営の視点で読むと、この言葉が腑に落ちます。次回(#102連動)からは続編『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』に進みます。

本記事の内容はポッドキャスト番組「二番経営」でもテーマとして取り上げています。さらに詳しい内容はぜひポッドキャストでお聴きください。

 

 

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著者:勝見 靖英(株式会社オーツー・パートナーズ取締役)

(株)オーツー・パートナーズ 取締役■Podcast「二番経営 〜組織を支えるNo.2の悲喜こもごも〜」パーソナリティ■コンサルタント歴20年以上、管掌業務:経営企画/会計/人事総務/組織開発/IT/マーケティング/広報等
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ビジネス・キャリア

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