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本業・副業・投資の三本柱で収入リスクを分散する、現代のキャリア設計術

収入の一本足打法が抱えるリスク

毎月の給与だけを頼りに生活を維持する——日本の会社員にとって、長い間それが「普通の働き方」でした。ところが、その前提が少しずつ崩れてきています。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、実質賃金は2022年から2024年にかけて2年以上マイナスで推移しており、物価の上昇に賃金の伸びがまったく追いつかない状況が続いています。大手企業でも早期退職の募集は珍しくなくなり、2023年度には上場企業だけで約1万3000人規模の早期退職が実施されています(東京商工リサーチ調べ)。

給与一本に頼る生活は、職を失ったとき、あるいは会社の業績が急に悪化したとき、家計全体が一気に揺らぐ構造になっています。企業経営に置き換えると、「売れ筋商品が一つしかなく、それが止まれば即座に経営危機」という状態と変わりません。個人の収入設計にも、同じようなリスク管理の発想が必要な時代になっています。

こうした背景から、「本業・副業・投資」という三本の収入源を組み合わせるキャリア設計が、多くのビジネスパーソンの間で真剣に検討されるようになりました。三本の柱はそれぞれ性質が異なるため、一つが揺れても他の二つが支えとなり、家計全体の安定性を保ちやすくなります。重要なのは、「どれかを選ぶ」ではなく「三つを同時に育てる」という発想の転換です。

 

本業を土台として最大化するという考え方

三本柱を育てるうえで、本業はあくまでも「土台」です。本業を後回しにして副業や投資に注力するのは、基礎工事を省いたまま二階建てを建てるようなもので、いずれどこかに無理が出てきます。まず本業での評価を高め、給与や賞与、昇進という形で安定収入を確保することが、副業と投資を育てる原資になります。

本業収入を上げるには、スキルアップへの継続的な投資が欠かせません。パーソルキャリアの調査では、リスキリング(学び直し)を実践した社会人のうち約4割が給与アップまたは昇進を経験したと答えています。専門性が上がれば社内外での市場価値も高まり、より条件のよいポジションに移るチャンスも生まれます。エンジニアやデータサイエンティスト、マーケターといった職種では、2023年時点で中途採用の求人倍率が全職種平均を大きく上回っているというデータもあります(doda調べ)。

本業を土台として位置づける理由はもう一つあります。副業や投資を始めるための「時間的・精神的余裕」は、本業で手応えを感じていないと生まれにくいからです。本業で一定の達成感を得られている人ほど、副業でも創造的に動けるという傾向は、多くのフリーランス・副業経験者の声からも見えてきます。本業を整えることは、三本柱全体のパフォーマンスを底上げする行為です。

 
副業で「時間を収入に変える」経験を積む

副業とは、本業とは別の労働や活動によって収入を得ることです。政府の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が2018年に改定されて以降、副業を解禁する企業は急速に増え、2022年時点でパーソル総合研究所の調査では副業実施率が全体の約9.7%に達しています。副業を通じて得られるものは、収入だけではありません。本業とは異なるスキルセット、人脈、ビジネス感覚が磨かれ、キャリア全体の幅が広がります。

副業の形態は大きく分けると、「時間労働型」と「資産型」の二種類があります。ライター・デザイナー・エンジニアとしてクラウドソーシングで案件を受ける、あるいはコンサルティングや講師として時間を提供するのが前者です。後者は、YouTubeチャンネルやブログ・電子書籍・オンライン講座など、一度作成したコンテンツが継続的に収益を生む仕組みを指します。時間労働型は即収益化しやすい反面、時間を使い続けなければ収入が止まります。一方、資産型は立ち上げまでに時間がかかるものの、軌道に乗ると本業と並行して収益が積み上がっていく特徴があります。

理想的なのは、時間労働型で副業の実績とスキルを積みながら、徐々に資産型にシフトしていくプロセスです。月3万円から5万円程度の副業収入を安定的に得られるようになると、生活防衛資金の充実や投資の元手に回す選択肢が広がります。副業収入は本業給与と異なり、自らの行動次第でコントロールできる部分が多い点も、精神的な安心感につながるでしょう。

 
投資で「お金に働かせる」仕組みを整える

三本柱の中で、自分の時間をほとんど使わずに収入を生み出せるのが投資です。本業と副業が「自分の労働力」を資本とするのに対し、投資は「お金そのもの」を動かして資産を育てます。この違いが、長い時間をかけて資産形成のスピードに大きな差をもたらします。

2024年からNISA制度が大幅に拡充され、年間最大360万円まで非課税で投資できる枠組みが整いました。つみたて投資枠と成長投資枠を合わせた生涯非課税枠は1800万円です。金融庁のシミュレーションによれば、毎月5万円を年率5%で20年間積み立てた場合、元本1200万円に対して運用資産は約2060万円になると試算されています。

投資初心者が陥りやすいのは、「一気に大きなリターンを狙おうとする」姿勢です。しかし投資の本質はリスク管理であり、インデックスファンドを中心とした分散投資が長期的には個別株の銘柄選択を上回る成績を示すことが、多くの学術研究によって示されています。S&P500に連動するファンドの過去30年間の平均年率リターンはおよそ10%前後(ドルベース)で、長期保有の優位性は歴史的に証明されています。投資は「儲けを狙うもの」ではなく「時間の経過とともに資産を育てる装置」として位置づけると、本業・副業との組み合わせにおける役割が明確になります。

本業で安定収入を得ながら副業で収入の幅を広げ、その余剰資金を投資に回して資産を育てる——この三本柱が機能し始めると、収入の一本足打法では感じることのできなかった、経済的な選択肢の多さを実感できるでしょう。どれか一本が揺らいでも全体が崩れない構造こそ、不確実な時代における個人の最も堅実な収入設計といえます。

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