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インデックス投資だけでは足りない?専門家が指摘する資産形成の盲点

インデックス投資だけでは足りないと専門家が警告する理由

「とりあえずオルカンかS&P500を積み立てておけば大丈夫」という言葉を、SNSや投資系メディアで目にしたことがある方は多いでしょう。たしかにインデックス投資は、低コストで市場全体に分散できる優れた手法です。2024年末時点でNISA口座数が約2300万口座を突破したことからも、積立投資への関心が急速に広まっていることが伝わってきます。ただ、資産運用の現場に立つファイナンシャルプランナーの間では、「インデックス投資だけで資産形成が完結するわけではない」という認識が共有されています。これは感情論ではなく、数字と構造に基づいた話です。

S&P500の過去30年間の年平均リターンはおよそ10.7%(ドルベース)とされており、長期投資の観点からは魅力的な実績です。しかし、このリターンはあくまでも過去の平均値にすぎません。IMF(国際通貨基金)は2024年の世界経済見通しのなかで、先進国の潜在成長率が今後10年で鈍化する可能性を示しており、米国株のバリュエーションが歴史的な高水準にあることへの懸念も、複数の経済学者から上がっています。「過去に良かったから将来も同じ」とは言い切れないのが投資の現実です。

 
「市場の平均点」だけでは届かないケースがある

インデックス投資の本質は、市場全体の平均リターンを得ることにあります。裏を返すと、平均を超えることは原理的に期待できません。この点が問題になるのは、個人の目標が「市場平均の届く範囲」に収まらないケースが、思っているよりもずっと多いからです。

具体的な数字で考えてみましょう。30歳の人が月3万円を30年間積み立て、年率5%で運用できたとすると、元本1080万円に対して最終的な運用額はおよそ2490万円になります。一見、十分に思えるかもしれません。ところが総務省の家計調査(2023年)によると、夫婦の老後の生活費は月平均26万円超。公的年金(夫婦モデルで月約23万円)との差額を自己資産で補うとなると、かなりの額が必要になります。

物価の変動も見逃せないポイントです。インフレ率を年1〜2%と仮定すると、30年後の購買力は現在の55〜74%程度まで下がる計算になります。積み立てた金額の「数字」は増えていても、実際に買えるものの量は減っている、という状況が起こりえます。

もうひとつ気をつけたいのが、運用期間が短い場合のリスクです。ドルコスト平均法は長期で威力を発揮しますが、10年以下の短中期では、暴落のタイミング次第で元本割れになることもあります。2008年のリーマンショックではS&P500が約57%下落し、元の水準に回復するまで約5年かかりました。50代以降でインデックス一本に頼っている場合、こうした局面が老後直前に重なるリスクは無視できません。

 
専門家が勧める「インデックス投資との組み合わせ」とは

「インデックス投資だけでは足りない」という言葉は、インデックス投資を否定しているわけではありません。土台として非常に優秀だからこそ、その上に何を積み上げるかが大切だという意味です。専門家が挙げる補完策は、主に三つの方向性に整理できます。

ひとつは、債券やREIT(不動産投資信託)を組み合わせて資産の種類を分散させることです。株式インデックスだけでは、株式市場全体が下がったときにポートフォリオ全体がダメージを受けます。債券は株式と値動きの方向が異なることが多く、組み合わせることで下落時の痛みを和らげる効果があります。ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツが提唱した現代ポートフォリオ理論でも、異なる資産を組み合わせることでリスクを下げられると示されています。

もうひとつは、収入そのものを増やすという視点です。毎月の積立額を1万円増やすことは、運用利率を数パーセント引き上げることと同等か、それ以上の効果を持ちます。スキルアップや転職、副業による収入増を資産形成の戦略に組み込む発想は、特に30〜40代にとって費用対効果の高い選択肢といえます。

三つ目は、税制優遇制度を使い倒すことです。新NISAでは生涯1800万円までの非課税枠があり、iDeCoと組み合わせることで所得控除の恩恵も受けられます。しかし、これらをフル活用している人はまだ少数派です。すでにインデックス投資を始めている方も、制度の使い方を一度見直してみる価値は十分にあります。

 
資産形成は「一本の柱」ではなく「面」で考える

インデックス投資の普及は、資産形成の入口を多くの人に広げた点で大きな意義があります。「難しいことは考えずに市場全体を長期で買い続ける」という戦略が、多くの人にとって合理的な選択であることは変わりません。

ただ、一つの金融商品だけで資産形成を完結させようとすると、構造的な限界にぶつかります。目標額・運用期間・リスクへの耐性・収入の伸び代・税制の活用度、これらをまとめて考えた「面」としての戦略を描くことが、資産形成の本来の姿といえるでしょう。

インデックス投資はその出発点として優秀ですが、ライフステージの変化に応じて戦略をアップデートしていく姿勢が、長期的な成果を左右します。市場も税制も個人の状況も変わり続けるなかで、「今の自分に合った戦略は何か」を問い直すことが、豊かな老後への道を着実に切り開いていくでしょう。

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