「理想の男性」と「現実の未婚男性」のギャップ……結婚離れが加速する本当の理由

日本の未婚化が、いよいよ後戻りできない水準に達しつつあります。厚生労働省の調査によると、2020年時点で50歳まで一度も結婚しなかった人の割合は男性で約28%、女性で約18%にのぼり、どちらも過去最高を更新しました。
10年前と比べると男性は約6ポイント、女性は約5ポイントも上がっています。「結婚したいけれど、なかなかできない」という声はあちこちで聞こえますが、その理由を「出会いが少ないから」の一言で片づけるのは少し早い話です。理想と現実のあいだには、もっと根深いギャップが広がっています。

 

婚活市場が露わにする「理想のスペック」

結婚相談所やマッチングアプリに登録する女性が、相手に求める条件はここ数年でずいぶん可視化されました。国立社会保障・人口問題研究所の調査(2021年)では、結婚を望む女性の約70%が「経済力」を重視すると回答しています。婚活市場でよく耳にする年収の「足切りライン」は400〜500万円前後で、希望年収として600万円以上を掲げる女性も珍しくありません。

ところが現実はどうでしょうか。国税庁の調査(2022年)によると、給与所得者全体の平均年収は約458万円で、未婚男性に絞るとさらに下がります。20代・30代の未婚男性の年収は300〜400万円台が中心であり、600万円以上を稼いでいる未婚男性は全体のほんの数%にすぎません。そこに「高身長」「誠実な性格」「家事もできる」「精神的に自立している」といった条件を積み上げていくと、理想をすべて満たす男性はほとんど存在しないに等しい状況になってきます。

婚活の世界では昔から「3高(高学歴・高収入・高身長)」が女性の理想像として語られてきましたが、最近はそこに「低姿勢・低依存・低リスク」も求められるようになったと言われています。高収入で家事もして、精神的に穏やかで自立している——そんな男性が婚活市場に大量にいるはずもなく、需要と供給のズレがそのまま「婚活難」として表れているのが今の状況です。

 

女性のキャリア向上がもたらした皮肉な逆説

見落とされがちですが、女性の社会進出が婚活に与えている影響も無視できません。総務省の労働力調査(2023年)では、25〜34歳女性の就業率はすでに約80%に達しており、共働き世帯は専業主婦世帯の2倍以上になっています。女性が自分の力で生活できるようになったことは社会の前進ですが、婚活の場では少し皮肉な現象を生んでいます。

自分の収入が上がるにつれて、相手に求める収入水準も上がっていく——これは「上方婚志向」と呼ばれる傾向で、社会学や心理学の分野で長く研究されてきたテーマです。年収500万円を稼ぐ女性が「せめて自分と同じくらいか、それ以上の人と」と考えると、対象はさらに絞られます。一方で、自分より収入の高い女性に対して気後れを感じる男性も少なくないという調査結果もあり、高収入の女性ほど対等に付き合える相手を見つけにくい、という矛盾が生じています。

国立社会保障・人口問題研究所のデータでは、年収600万円以上の女性の未婚率が同年代の平均よりも高い傾向が確認されています。経済的に豊かになるほど「結婚しなくても生活に困らない」という現実が生まれ、それが結婚への踏み出しをためらわせることにもつながっています。キャリアやライフスタイルの選択肢が広がるほど、「そもそもなぜ結婚するのか」という問いが重くなっていくのは、自然な流れとも言えるでしょう。

 

マッチングアプリが生んだ「無限の選択肢」という罠

マッチングアプリの普及で、出会いの機会は格段に増えました。国内のマッチングアプリ市場は2023年時点で約700億円規模に達し、利用者数は累計で数千万人に上ると推計されています。それでも、アプリ経由での成婚率は数%程度にとどまるとも言われており、「出会えているのに結婚できない」という状況が生まれています。

その一因として挙げられるのが、選択肢が多すぎることによる迷いです。心理学者のバリー・シュワルツは「選択のパラドックス」として、選べる選択肢が増えるほど人は満足できなくなり、最終的に選ぶこと自体を先送りにしてしまうと指摘しています。アプリ上では何千人ものプロフィールを眺めることができるため、「もっといい人がいるかも」という感覚が抜けず、目の前の相手と真剣に向き合うことが難しくなってしまいます。

人気の偏りという問題もあります。マッチングアプリのデータを分析した研究では、女性からの「いいね」の大半が上位10〜20%の男性に集中する傾向が確認されています。つまり、大多数の男性にとってアプリは想像以上に厳しい場であり、写真の見栄えや自己紹介文の出来が婚活の成否を大きく左右するという、スペック競争の側面を持っています。

 

結婚観をアップデートする時代に

結婚する人が減っているのは、若い世代がだらしなくなったからでも、努力が足りないからでもありません。働き方・キャリア・ライフスタイルの変化が重なり合った、社会全体の構造的な変化です。非正規雇用の割合が若年層で依然として約30%に上るなか(総務省・2023年)、経済的な不安を抱えたまま「家庭を持つ」という決断をするのは、冷静に考えれば容易ではありません。

一方で、婚活コンサルタントへの調査では、実際に成婚した人の多くが「最終的には条件より、一緒にいて楽な人を選んだ」と話しています。年収や身長といったスペックへのこだわりを手放した瞬間に婚活が動き出した、というケースは多く報告されており、「価値観が合う」「話していて疲れない」という基準への切り替えが、現実的な出口になっているようです。

結婚が「やって当然のこと」ではなくなった時代だからこそ、「自分はどんな暮らしをしたいのか」「なぜ結婚したいのか」を改めて考えてみることが出発点になるはずです。理想と現実のギャップを嘆くよりも、そのギャップがどこからきているのかを知ることが、自分らしい答えを見つける第一歩になるのではないでしょうか。

カテゴリ
人間関係・人生相談

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