相続対策コンサル市場が拡大、士業以外の参入が相次ぐ理由

相続は一部の資産家だけの問題ではなくなった

相続という言葉を聞くと、多額の財産を持つ人だけに関係する話という印象を持つ方も少なくありません。しかし現在は、ごく一般的な家庭でも相続対策を考える場面が増えています。その背景には、日本の高齢化が急速に進んでいることがあります。総務省の統計では65歳以上の人口は総人口の約3割に達しており、相続を経験する世帯は今後も増加すると見込まれます。

制度の変化も市場を押し上げています。2015年には相続税の基礎控除額が引き下げられ、それまで課税対象ではなかった家庭でも相続税を意識するケースが増えました。国税庁によると、2023年の相続税申告件数は約15万5千件、課税割合は約9.9%となっています。数字だけを見ると約10人に1人が相続税の対象となっており、相続対策は決して特別なものではなくなりました。

一方で、相続に関する悩みは税金だけではありません。不動産の分け方や預貯金の管理、家族間の話し合い、空き家への対応など、検討する内容は多岐にわたります。財産額よりも家族構成や不動産の有無によって難しさが変わるケースも多く、早い段階から相談したいという需要が広がっているといえるでしょう。

 

士業だけでは対応しきれない相談が増えている

相続相談といえば税理士や司法書士、弁護士を思い浮かべる人が多いでしょう。税務申告や登記、法律相談は資格を持つ専門家しか対応できないため、士業は現在も欠かせない存在です。
その一方で、「実家を売却した方がよいのか」「生命保険を活用できるのか」「認知症になる前に財産管理を準備したい」「親が施設へ入居した後の自宅をどうするか」など、一つの相談が不動産や金融、介護、保険まで広がるケースは珍しくありません。

相談する側から見ると、どの問題を誰に頼めばよいのか判断するだけでも負担になります。税理士へ相談した後に不動産会社を探し、登記のために司法書士を訪ねるとなれば、何度も事情を説明しなければなりません。こうした不便を減らすため、相談窓口を一本化し、内容に応じて士業や関連事業者へつなぐ相続対策コンサルが増えています。法律や税務の独占業務には直接関与せず、財産と家族の状況を整理して全体の進行を支える役割に需要が生まれているといえます。

 

異業種が相続市場へ参入する本当の狙い

相続市場へ参入しているのは、コンサルティング会社だけではありません。銀行や証券会社、保険代理店、不動産会社、介護事業者、IT企業など、幅広い業種が相続関連サービスを展開しています。これらの企業が注目しているのは、相続相談の手数料だけではなく、その後に発生する周辺サービスです。

銀行や証券会社であれば、相続した預貯金や有価証券の管理、資産運用、遺言信託などの提案につなげられます。保険会社は納税資金や遺産分割に備える生命保険を案内でき、不動産会社は実家や土地の売却、賃貸、建て替え、空き家管理を扱えます。介護事業者にとっても、高齢者施設への入居と自宅処分を組み合わせた支援は新たな事業機会になります。一件の相続相談から複数の契約が生まれる可能性があるため、企業にとって魅力のある市場だと思われます。

企業が求めているのは、高齢者本人との取引だけではありません。相続を通じて、その財産を受け継ぐ子ども世代とも接点を持てます。金融資産や不動産が親から子へ移る際、取引先まで他社へ移ってしまうことを防ぐ狙いもあるでしょう。相続対策は一度限りの手続きに見えますが、企業側から見ると、家族単位で長く取引を続けるための入口になっていると考えられます。

 

市場の成長とともに求められる相談先の見極め

オンライン面談や財産診断ツールの普及も、新規参入を後押ししています。利用者は店舗へ足を運ばなくても相談でき、簡単な質問に答えるだけで相続税の目安や準備すべき手続きを確認できるようになりました。企業側も全国から相談を集めやすくなり、IT企業による財産管理サービスや専門家紹介サイトも広がっています。相続対策への入り口が増えることで、これまで相談をためらっていた人の利用も期待されます。

一方、市場が拡大すれば、サービスの質には差が生まれます。無料相談を入り口に、自社の金融商品や不動産売却を強く勧める事業者も考えられるため、提案内容が相談者の利益に合っているかを慎重に確認する必要があります。相続対策コンサルを選ぶ際は、報酬の仕組み、提携する士業、得意分野、対応できない業務を事前に確かめることが大切です。

相続対策コンサル市場が拡大している背景には、高齢化や税制改正だけでなく、相続に関する悩みが不動産、金融、保険、介護まで広がっている事情があります。異業種の参入が相次ぐのは、相談者の負担を減らせる一方で、相続を起点に幅広い取引へつなげられるからでしょう。今後は士業と企業が役割を分担しながら、家族全体の課題を支えるサービスが増えていくと見込まれます。

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