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ネット銀行の預金急増、メガバンクからの資金流出とは

ネット銀行にお金が集まる勢いが強まっている

ネット銀行に預けられるお金が増えています。信金中央金庫 地域・中小企業研究所によると、ネット専業銀行9行の預金残高は2025年3月末で38.2兆円となり、10年前の11.4兆円から3倍以上に拡大しました。前年からの増加率も8.2%に達しています。流通系銀行3行を含めた12行では44.4兆円となっており、ネット銀行はすでに大手地方銀行に並ぶほどの預金を集める存在になっています。楽天銀行だけでも2025年3月末の預金残高は11.4兆円に達しており、以前のような「ネット通販の決済に使う銀行」という位置づけから、日常の貯蓄先へ変わってきたといえます。

この流れを後押ししているのが預金金利の上昇です。日本銀行の統計では、普通預金の平均金利は2024年3月の年0.002%から、2025年3月には0.162%、2026年7月には0.255%、8月には0.306%まで上昇しています。ほんの数年前まで普通預金の金利差はほとんど気にする必要がありませんでしたが、金利が上がれば話は変わります。銀行によって預金条件に差が生まれるため、「どこへ預けるか」を比較する意味が戻ってきました。これまで動かなかった個人の預金が、少しでも条件の良い金融機関へ向かいやすくなったと考えられます。

 

「銀行を変える」のではなく「お金の置き場所を分ける」

ネット銀行が選ばれる理由は、高い金利だけではありません。現在はスマートフォンから口座を作り、振り込みや残高確認、定期預金への預け替えまで完結できます。証券口座やクレジットカード、キャッシュレス決済と連携すれば、預金金利やポイントが優遇されるサービスもあります。店舗へ出向く必要がなく、数分の操作で資金を移せる環境が整ったことで、銀行を使い分ける負担はかなり小さくなりました。以前は口座を増やすほど管理が面倒になりがちでしたが、現在はアプリ上で複数の金融サービスを確認できるため、資金を分散させやすくなっています。

その結果、実際に起きているのは「メガバンクを解約してネット銀行へ乗り換える」という動きだけではありません。給与の受取口座や公共料金の引き落としはこれまでの銀行に残し、すぐには使わない貯蓄だけをネット銀行へ移す選択もできます。投資資金は証券口座と連携しやすい銀行へ置き、生活費は別の銀行で管理するといった使い分けも可能です。銀行を一社だけ選ぶ発想から、お金の目的に合わせて置き場所を選ぶ発想へ変わっていることが、ネット銀行の預金増加を支えていると思われます。

 

メガバンクから預金が消えているわけではない

では、ネット銀行へ流れ込んだお金は、すべてメガバンクから移ってきたのでしょうか。実際の数字を見ると、そう単純ではありません。三菱UFJ銀行の国内店舗における個人預金は、2025年3月末の約87.58兆円から2026年3月末には約87.73兆円へ増えています。法人などを含めた預金全体も約169.25兆円から約173.96兆円へ拡大しました。ネット銀行の預金が急増している一方で、大手銀行から同じ金額が失われているわけではないことが分かります。「メガバンクからネット銀行への大規模な資金流出」と表現するだけでは、実態を捉えきれないでしょう。

預金が増える背景には、既存銀行から移された資金だけでなく、家計全体で積み上がった預金や、新たに口座を開いた人の資金も含まれます。そのうえ、同じ人が500万円の預金のうち100万円だけをネット銀行へ移せば、メガバンクにも400万円は残ります。全国銀行協会も2026年6月、各金融機関が預金金利の引き上げに加え、キャンペーンやサービス拡充によって預金獲得を競っているとの認識を示しています。預金者が動きやすくなったことで、銀行側も「一度預けてもらえば、そのお金は長く残る」という前提では競争できなくなっているといえます。

 

預金100万円でも銀行を選ぶ意味が見えてくる

金利差を金額にすると、変化を実感しやすくなります。仮に普通預金金利が年0.1%の銀行と年0.5%の銀行へ100万円を1年間預けた場合、税引前の利息は約1000円と約5000円となり、差は約4000円です。500万円なら約2万円、1000万円なら約4万円まで広がります。実際には利息に税金がかかり、優遇金利には預入額や取引条件が設定される場合もありますが、「どの銀行でもほぼ同じ」と考えていた時代より、預金先を比較する効果は見えやすくなっています。

これからの銀行選びは、メガバンクとネット銀行のどちらが勝つかという話ではなくなっていくでしょう。店舗で相談できる安心感や住宅ローン、相続、法人取引ではメガバンクに強みがあります。一方、ネット銀行は金利や手数料、ポイント、スマートフォンでの使いやすさで利用者を集めています。給与はメガバンク、貯蓄はネット銀行、投資資金は証券口座と連携した銀行という形で、目的によって金融機関を使い分ける人が増えることが見込まれます。ネット銀行の預金急増が示しているのは、単なるメガバンク離れではありません。「銀行を一つ選ぶ時代」から「お金の置き場所を選び分ける時代」へ変わり始めていることではないでしょうか。

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