賃貸住宅は家族の保証からサービスの保証へ、家賃保証会社が拡大する背景

賃貸住宅を探していると、「保証人不要」と書かれた物件を目にする機会が増えています。以前は親や兄弟などに連帯保証人をお願いする契約が一般的でしたが、現在は家賃保証会社を利用する形が広がりました。国土交通省の調査では、「連帯保証人のみ」の契約は2010年の57%から2018年には18%まで低下しています。一方、家賃債務保証会社を利用する契約は2018年時点で62%に達しており、賃貸契約を支える仕組みが大きく変化していることが分かります。
ただ、「保証人不要」という言葉から、保証そのものがなくなったと受け取るのは少し違います。実際には、これまで家族が支えていた借主の信用を、保証料を受け取った企業が補う形へ移ってきたと捉えるほうが実態に近いでしょう。その背景には単身世帯の増加や高齢化だけでなく、貸主が家賃滞納のリスクを抑えたいという事情もあります。保証人不要化は部屋探しを便利にするだけではなく、日本の賃貸住宅で「誰が信用を支えるのか」という考え方そのものを変える動きといえます。
家族に頼る保証から企業が支える保証へ
家賃保証会社は、借主が家賃を滞納した場合、契約内容に応じて貸主へ家賃などを立て替える役割を担います。借主は契約時などに保証料を支払い、保証会社による審査を受けます。貸主は滞納による損失を抑えやすくなり、借主は親族に連帯保証人を頼めなくても部屋を借りられる可能性が広がります。「親が高齢なので頼みにくい」「親族が遠方に暮らしている」といった事情を抱える人にとって、住まいを確保する選択肢を増やす仕組みとして機能していると考えられます。
こうしたサービスが必要とされる背景には、家族のあり方の変化があります。単身で暮らす人が増え、高齢になってから賃貸住宅へ住み替えるケースも珍しくありません。家族が近くに暮らし、安定した収入のある親族が保証人になれることをすべての借主に求める仕組みは、現在の暮らし方とは合いにくくなっています。家賃保証会社の普及は、家族関係が変化したというだけではなく、家族が担ってきた機能の一部を外部サービスで補う流れの一つともいえるでしょう。
「保証人不要」でも信用チェックはなくならない
注意したいのは、「保証人不要」と「誰でも借りられる」は同じ意味ではない点です。個人の連帯保証人を求めない代わりに、指定された保証会社への加入を契約条件としている物件があります。その場合、保証会社は収入や勤務状況、家賃とのバランスなどを確認し、自社の基準に沿って契約できるかを判断します。国土交通省の資料でも、年齢では高齢者、属性では生活保護受給者や外国人などで審査に通りにくい傾向が示されています。保証人を用意するという壁が低くなった一方、企業による信用審査が新しい入口になっていると考えられます。
利用者には保証料の負担も生じます。金額や更新方法は保証会社や契約によって異なるため、「保証人不要」という表示だけで物件を決めると、入居時や入居後にかかる費用を見落とす可能性があります。保証会社が滞納家賃を立て替えた場合も、借主の支払い義務までなくなるわけではなく、その後は保証会社から請求を受けることになります。家族に信用を借りる必要が減った代わりに、保証料を支払い、企業の審査を通じて信用を補ってもらう仕組みに変わったと見ることができるでしょう。
貸主にも家賃保証会社を利用したい理由がある
家賃保証会社が広がった理由は、借主側の事情だけではありません。貸主にとって家賃滞納は、賃貸経営を続けるうえで避けたいリスクの一つです。個人の連帯保証人がいても十分な支払い能力があるとは限らず、滞納後に保証人へ連絡して支払いを求める負担もあります。保証会社を利用すれば、契約条件の範囲内で滞納リスクを企業へ移しやすくなり、家賃収入の安定にもつながります。不動産会社にとっても、保証会社を利用することで契約や家賃管理の手続きを一定程度そろえやすくなると考えられます。
住宅市場を取り巻く環境にも変化が見られます。総務省の2023年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%となり、いずれも過去最高でした。ただし、この数字には賃貸市場に出ていない住宅も含まれるため、保証会社の普及と直接結びつけることはできません。それでも人口や世帯構成が変化するなか、地域によっては貸主が入居条件を厳しくするだけでは借り手を確保しにくくなることも予想されます。保証会社を利用して滞納リスクを抑えながら受け入れられる入居者を広げる考え方は、今後の賃貸経営で存在感を増していくと思われます。
家賃保証会社は住まいを支えるインフラになるのか
家賃保証会社には、滞納時に家賃を立て替えるだけではなく、住宅を借りにくい人の入居を支える役割も求められ始めています。2025年10月には改正住宅セーフティネット法に基づく「認定家賃債務保証業者制度」が始まりました。住宅確保に配慮が必要な人が利用しやすい保証会社を国が認定する仕組みで、対象となる契約で家賃債務の保証人を求めないことや、緊急連絡先を親族などの個人に限定しないことなどが認定基準に含まれています。2026年7月31日時点では12事業者が認定されており、保証会社を住宅政策の一部として活用する動きが進んでいるといえます。
家賃債務保証会社には別に国土交通省の登録制度もあり、2026年8月13日時点で123者が登録されています。登録には純資産額1,000万円以上、適切な求償権の行使、相談や苦情への対応体制など一定の基準が設けられています。登録自体は任意ですが、利用者が保証会社について確認する際の判断材料になるでしょう。賃貸住宅は、家族に保証してもらう仕組みから、企業や社会制度によって信用を補う仕組みへ移りつつあります。保証人不要になれば誰もが無条件で住宅を借りられるわけではありませんが、家族の事情だけで住まいの選択肢が狭まらない環境づくりにつながることが期待されます。家賃保証会社は単なる家賃滞納への備えではなく、これからの賃貸住宅を支える存在へと役割を広げていくのではないでしょうか。
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