氷河期世代の上司とZ世代の部下 なぜ仕事への考え方はこんなに違うのか

同じ職場でも「仕事の常識」が違っている

「最近の若手はすぐ答えを求める」「上司が何を期待しているのか分からない」。職場でこうしたすれ違いが起きたとき、つい「世代が違うから仕方がない」と片付けたくなります。ただ、氷河期世代の上司とZ世代の部下の違いを、単なる年齢差や性格の問題として見ると本質を見失いやすくなります。大きく違うのは、それぞれが社会に出た時期の雇用環境です。厚生労働省は、就職氷河期をおおむね1993年から2004年に学校卒業期を迎えた世代としています。バブル崩壊後の採用縮小に直面し、希望する会社への就職そのものが難しかった時代でした。2018年時点でも、この世代の不本意非正規雇用の割合は14.1%で、全体の12.8%を上回っていました。

その環境では、いったん入った会社で経験を積み、多少つらくても簡単には辞めないことが、キャリアを守る現実的な選択になった人もいます。「若いうちは苦労して覚える」「任された仕事は最後までやる」といった考え方には、当時の働き方が反映されている場合があります。一方、現在の若手は転職サイトや企業口コミ、SNSなどを通じて、自分の会社以外の働き方を日常的に確認できます。2026年のパーソル総合研究所の調査では、働く人の71.0%が転職を総合的に「よいことだと思う」と回答し、「現在の会社で管理職になりたい」は15.7%でした。世代だけで説明できる数字ではありませんが、会社に残ることだけがキャリアの正解ではなくなった社会の変化は読み取れるでしょう。

 

「我慢して覚える」と「理由を知って動く」がぶつかる

氷河期世代の上司が若手だったころ、「まずやってみろ」「仕事は見て覚えろ」という指導を受けた人もいるでしょう。苦労しながら仕事を身につけ、その結果として昇進した経験があれば、その方法を「成長につながった」と評価するのも自然です。ところが、その成功体験をそのまま部下に当てはめると、すれ違いが生まれます。上司が「考える力を身につけてもらいたい」と仕事を任せたつもりでも、部下には「目的も基準も教えてもらえない」と映ることがあります。残業を頼む場面でも、上司は「ここを乗り越える経験が必要」と考え、部下は「なぜ今日やる必要があるのか」と受け止めるかもしれません。同じ出来事でも、意味づけが違っています。

Z世代が説明を求めることを、「指示待ち」「打たれ弱い」と決めつけるのも実態とは合いません。リクルートマネジメントソリューションズが2025年の新入社員を対象に行った調査では、上司に期待することとして「相手の意見や考え方に耳を傾けること」が49.7%、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が47.9%でした。2026年調査では「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が50.1%となり、初めてトップになっています。一方で「言うべきことは言い、厳しく指導すること」も24.0%まで上昇しました。若手が求めているのは単なる優しさではなく、納得できる説明と成長につながる指導だと考えられます。

 

Z世代が会社から距離を取るのには理由がある

「昔は会社の飲み会にも参加した」「若いうちは仕事を優先した」。そうした経験を持つ上司から見ると、勤務時間が終わればすぐ帰る若手や、会社の集まりを断る部下に戸惑うこともあるでしょう。しかし、仕事と私生活を分けようとする感覚をZ世代特有の価値観と見るのは少し乱暴です。働き方そのものが大きく変わっています。パーソル総合研究所の2026年調査では、平均残業時間は月9.7時間、在宅勤務を行っている人は25.7%でした。終身雇用を前提に会社と生活を強く結び付ける働き方から、自分の時間やキャリアを含めて仕事を選ぶ方向へ、社会全体が動いているといえます。

若手が会社との距離を測る背景には、選択肢が見えやすくなったこともあります。2025年の新入社員調査では、「現在の会社で勤め続けることにこだわらない」「どちらかといえばこだわらない」と回答した割合が計49.5%で、「定年まで現在の会社で勤めたい」「どちらかといえば勤めたい」の計42.7%を上回りました。これは「すぐ辞めたい」という意味ではありません。会社に残るかどうかを最初から決めるのではなく、自分が成長できるか、納得できる仕事ができるかを見ながら判断する姿勢とも読めます。会社に自分を合わせることが合理的だった時代から、自分に合う会社を選ぶことも合理的な時代へ変わった影響が表れていると思われます。

 

世代の差ではなく「成功体験の差」と考えてみる

氷河期世代とZ世代の関係を改善するために、どちらかが相手の価値観へ完全に合わせる必要はありません。見直したいのは、自分にとって当然だった働き方を相手にも当然だと思ってしまうことです。上司が「金曜日までにまとめて」とだけ伝えるより、「来週の会議で判断材料に使うので、売上の変化と原因が分かる状態までまとめてほしい」と伝えれば、仕事の意味が見えやすくなります。部下も分からないことをすぐに「古い考え方」と判断するのではなく、「なぜこの進め方が必要なのか」と聞けば、上司が経験から重視しているポイントが見えてくるでしょう。

氷河期世代には、厳しい環境をくぐり抜けた経験や、簡単に結果が出なくても粘り強く取り組む力があります。Z世代には、既存の仕事をそのまま受け入れず、「もっと効率よくできないか」「この作業に意味はあるのか」と問い直す視点があります。どちらかが正しく、どちらかが間違っているわけではありません。それぞれが違う時代で、仕事を続けるために合理的な行動を身につけてきたと見ると、職場のすれ違いは理解しやすくなります。「最近の若者は」「昔の上司は」で終わらせず、相手がなぜその考え方を持つようになったのかまで想像できれば、世代の違いは対立ではなく、仕事の進め方を見直す材料になるのではないでしょうか。

カテゴリ
人間関係・人生相談

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