共同親権だけではない、離婚後の暮らしを支える共同養育とは

離婚しても、親としての関係までは終わらない

離婚すると、夫婦として一緒に暮らす関係には区切りがつきます。それでも子どもがいる家庭では、父母の関わりまで完全になくなるとは限りません。学校行事、進学、病気、習い事、生活費、長期休暇の過ごし方など、子どもの成長に伴って判断が必要になる場面は続きます。厚生労働省の2024年人口動態統計では、離婚件数は18万5,904組でした。単純計算すると1日平均約509組となり、離婚後の子育てをどう続けるかは、多くの家庭に関わるテーマといえます。

そこで知っておきたいのが「共同養育」です。法務省は、共同養育を父母の双方が適切な形で子どもに対する責任を果たすことと説明しています。 これは、離婚した相手と再び仲良くしたり、復縁したりすることを意味しません。必要なのは、学校からの情報を共有する、養育費を決めた日に支払う、子どもの進学について相談するといった、親として必要な部分で協力できる関係です。関係修復という言葉も、「元の夫婦関係に戻る」より、「子どもを育てるための関係に組み替える」と捉えたほうが分かりやすいでしょう。

 

共同親権が始まっても、共同養育が自動的にうまくいくわけではない

日本では2026年4月1日、離婚後の子どもの養育に関する改正民法が施行されました。改正後は、離婚後の親権について父母の一方だけが持つ単独親権だけでなく、父母双方を親権者とする共同親権も選べるようになっています。見直しは親権だけにとどまらず、養育費や親子交流、子育ての分担などにも及びました。法改正の目的には、離婚に直面する子どもの利益を確保し、父母の養育に関する責任を明確にすることが掲げられています。

ただし、共同親権と共同養育は別のものです。共同親権は「誰が法律上の親権を持つか」という制度で、共同養育は「離婚後に父母がどう子育てへ関わるか」という生活上の考え方になります。共同親権を選んだからといって、連絡や費用負担が自然にうまくいくわけではありません。反対に、単独親権であっても、離れて暮らす親が養育費を負担したり、親子交流を続けたりすることは可能です。制度を選ぶことと、実際の生活を回していくことは分けて考える必要があるでしょう。

 
共同養育を左右するのは「仲の良さ」より生活条件

共同養育という言葉から、離婚後も父母が穏やかに話し合う姿を想像する人もいるかもしれません。しかし現実には、連絡しても返事がない、養育費が支払われない、進学先について意見が割れる、親子交流の日程が合わないといった問題が起こります。2024年の統計では、親権を行う子どもがいる離婚も約9万件確認されています。 子どもがいる離婚では、元夫婦の感情だけでなく、勤務時間、住んでいる場所、収入、子どもの年齢、再婚など、さまざまな条件が重なります。どちらかが協力的であれば解決するほど単純ではないと考えられます。

共同養育が続きやすいかを見るなら、「仲良くできるか」ではなく「必要な仕組みを作れるか」という視点が役立ちます。子どもの生活拠点を決められるか、学校や病院の情報を共有できるか、養育費の金額と支払日を決められるか、親子交流の日程を無理なく調整できるかといった条件です。法務省も、子育ての分担、親子交流、養育費について取り決めることを示し、共同養育計画書の作成を案内しています。 電話で感情的になりやすければ、メールやメッセージなど記録の残る方法に限定する選択もあります。善意に頼るより、揉めにくい仕組みを先に整えるほうが現実的ではないでしょうか。

 

共同養育をしない選択が子どものためになる場合もある

共同養育では、子どもの気持ちを置き去りにしないことも欠かせません。親同士が「月に何回会う」と決めても、子どもが成長すれば学校、部活動、友人との予定が増えます。幼い頃に合っていた方法が、中学生や高校生になって負担になることもあるでしょう。法務省も、子育ての取り決めには原則的な形はなく、子どもの声に耳を傾けながら、その子にとって良い形を選ぶ必要があるとしています。 共同養育を続けること自体を目的にせず、子どもの生活に合わせて方法を変えていく柔軟さが求められるといえます。

一方で、すべての家庭が共同養育を目指したほうがよいわけではありません。DVや虐待、強い威圧や支配があるケースでは、元配偶者との連絡そのものが危険につながる場合があります。改正民法でも、子どもの利益や父母の関係などを踏まえて親権のあり方を判断する仕組みが設けられています。 共同養育が難しい家庭で距離を取ることは、失敗とは限りません。直接連絡せず第三者を介する、必要な情報だけ共有する、状況によっては関わりを限定することも選択肢になります。離婚後の関係修復とは、相手を許したり親密さを取り戻したりすることではなく、子どもと親が無理なく生活できる距離を探すことではないでしょうか。共同養育は、そのために使える選択肢の一つとして考えるのが自然でしょう。

カテゴリ
人間関係・人生相談

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