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#MeToo運動から再注目、シスターフッド概念はなぜ今また求められるのか

「私だけの問題」ではなかったと気づかせた#MeToo

「シスターフッド」という言葉を聞いて、女性同士の友情や助け合いを思い浮かべる人は多いかもしれません。けれども、フェミニズムの文脈ではもう少し広い意味で使われています。性差別やハラスメントなど、一人で抱え込みやすい経験を共有し、孤立を防ぎながら支え合う連帯を表す言葉です。その歴史は古く、1960〜70年代に広がった第二波フェミニズムでも、女性たちをつなぐ考え方として語られてきました。

そのシスターフッドを現代の感覚で捉え直すきっかけになったのが「#MeToo」です。活動家タラナ・バークが2006年に始めた性暴力被害者への支援活動を源流とし、2017年10月にSNSを通じて世界へ急速に広がりました。UN Womenによれば、拡散から約1週間で100万人を超える人が「#MeToo」を使って声を上げています。Pew Research Centerの分析でも、2017年10月から2018年9月末までの約1年間に、Twitter上で「#MeToo」が使われた回数は1900万回を超えました。それまで口に出せなかった経験が「私も」という短い言葉で次々につながり、「これは自分だけに起きたことではない」と気づく人が増えていきました。

 

シスターフッドは「女性同士で仲良くすること」ではない

#MeTooがここまで大きく広がった背景には、性暴力やハラスメントが決して珍しい問題ではなかったことがあります。Pew Research Centerが2018年に米国の成人6251人を対象に行った調査では、女性の59%が望まない性的な誘いや性的な言動、身体的なハラスメントを経験したと回答しています。そのうち69%は、仕事に関係する場でも経験していました。米国を対象とした調査なので世界全体にそのまま当てはめることはできませんが、被害がごく一部の人だけに起きる特殊な出来事ではないことは読み取れます。

ここでシスターフッドが意味を持ちます。誰かが経験を語ったとき、「その人に起きた個人的な出来事」で終わらせず、なぜ似た問題が繰り返されるのかまで目を向ける。職場であれば、上司と部下の力関係、相談窓口の使いにくさ、告発後の不利益への不安など、本人だけでは変えにくい事情が隠れていることがあります。UN Womenは2018年、#MeTooをはじめとする各地の運動について、孤立していた経験を世界的なシスターフッドへ変えたと表現しました。「私も経験した」という言葉が広がることで、個人の悩みだと思われていた問題の輪郭が見え始めたわけです。

 

「女性なら分かり合える」では見えなくなるもの

ただし、女性同士がつながればすべて解決するほど単純ではありません。同じ女性でも、働いている場所や収入、年齢、人種や民族、障害の有無、性的指向、家庭環境によって置かれている状況は違います。社会的な立場が違えば、同じハラスメントを受けたとしても、その後に取れる行動は変わります。仕事を辞めても生活できる人と、収入を失えば暮らしていけない人では、「声を上げる」という行動の重さも同じではありません。

この点は、シスターフッドが以前から抱えてきた課題でもあります。女性を一つの集団として語ると、発言力のある人の経験が「女性全体の経験」のように扱われ、別の立場にいる人の声が見えにくくなることがあります。#MeTooも例外ではありません。著名人の発言が世界中へ届く一方、雇用や在留資格、経済的事情などから被害を公表できない人もいます。UN Womenも、農業労働者や家事労働者など社会的・法的な保護を受けにくい立場では、被害を訴えたり問題のある職場から離れたりすることが難しくなると指摘しています。「女性だから同じ」ではなく、「同じ女性でも置かれた状況は違う」。そこから考えたほうが、現代のシスターフッドは理解しやすいでしょう。

 

SNSでつながれる時代ほど「連帯」は難しくなる

SNSは、それまで接点のなかった人同士を結び付けました。職場や家庭では話せなかった経験でも、オンラインなら似た経験をした人を見つけられることがあります。#MeTooはその力を世界規模で示した運動でした。一人の告白に別の人が反応し、その声が別の誰かへ届く。こうして積み重なった経験が、企業や組織の対応、社会制度のあり方まで問い直すきっかけになりました。

一方、つながりやすさは別の難しさも生みます。同じ意見を求める空気が強くなれば、少し違う考えを示した人が批判されたり、集団から排除されたりすることもあります。連帯することと、全員が同じ意見になることは本来別の話です。誰かの経験を聞く、孤立させない、必要な支援先につなぐ、声を上げにくい人にも目を向ける。そうした行動もシスターフッドの一部でしょう。#MeTooが残したものは、ハッシュタグの流行だけではありません。「個人的な悩み」と思っていた経験の背後に、社会や組織の仕組みが隠れている可能性を多くの人が知ったことにも意味があります。

シスターフッドが今も語られている理由も、ここにあるのではないでしょうか。女性同士で無条件に結束するための言葉ではなく、立場も経験も異なる人が、必要な場面でどう支え合えるのかを考えるための言葉です。「私も」と言える人を増やすだけでなく、言えない人がいることにも目を向ける。そこまで含めて考えると、シスターフッドは過去の女性運動から受け継がれた言葉でありながら、SNS時代にあらためて問い直す価値のあるテーマだといえそうです。

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