なぜ企業はコンサルに厳しくなったのか、成果主義が広がる背景を探る

コンサルに求められる価値が「提案」から「成果」へ変わり始めた

かつて企業がコンサルティング会社に期待していたのは、自社にはない専門知識や客観的な分析、経営課題を解決するための提案でした。市場調査や競合分析を行い、数十ページに及ぶ報告書をまとめる。経営陣はその内容をもとに意思決定し、実行は社内の担当部署が担う。こうした役割分担が、長くコンサルティング業界の基本的なビジネスモデルとなっていました。しかし現在、その関係が変わりつつあります。クライアントが求めるのは、優れた戦略を示すことだけではありません。
売上がどれだけ伸びたのか、業務時間をどの程度削減できたのか、投資した費用に見合う効果が得られたのか。提案の質だけでなく、実際の経営成果まで問われる場面が増えている状況です。

背景には、企業を取り巻く経営環境の厳しさがあります。人手不足や人件費の上昇、デジタル投資の拡大によって、企業は限られた予算をどこに振り向けるべきか、以前にも増して慎重に判断するようになりました。総務省・経済産業省の「2021年経済センサス‐活動調査」に基づく中小企業庁の集計によると、日本の中小企業は358.9万者で、企業全体の99.7%を占めています。特に経営資源が限られる企業にとって、外部専門家への支出は簡単に増やせるものではないでしょう。
数百万円を投じて経営改善を依頼しても、現場の仕事が変わらなければ費用対効果を説明しにくくなります。コンサルへの期待値が先鋭化しているのは、単にクライアントの要求が厳しくなったからではなく、投資に対する説明責任が強まっていることも影響していると考えられます。

 

生成AIの普及がコンサルの専門性を問い直している

コンサルティング業界に大きな変化をもたらしているのが、生成AIの普及です。
従来、コンサルタントが時間をかけて行っていた情報収集、資料の要約、競合比較、企画案の作成などは、AIによって短時間で進められるようになりました。総務省の「令和7年版情報通信白書」によると、2024年度の調査で生成AIを利用した経験がある個人の割合は、日本では26.7%となり、前年度の9.1%から上昇しています。こうした技術が企業活動にも広がれば、情報を整理して提案書を作るだけでは、専門家としての価値を示しにくくなる可能性があります。クライアント側もAIを利用できるため、外部に依頼する仕事の範囲そのものを見直す動きにつながっています。

もっとも、AIが普及したからといって、コンサルタントの仕事が不要になるわけではありません。AIは大量の情報を整理することに優れていますが、企業特有の事情を踏まえた判断や、部署間の利害調整、従業員の行動を変える働きかけまで自動的に解決するのは困難です。
ある小売企業が在庫管理を改善しようとする場合、AIを使えば需要予測や発注量の分析は効率化できます。しかし、店舗ごとに異なる発注ルールを統一し、現場の負担を抑えながら運用を定着させるには、人の判断と調整が欠かせません。これからのコンサルには、情報を持っていること以上に、その情報を使って組織を動かし、成果につなげる力が求められるといえます。

 

成果を求めるクライアントと、成果を約束しにくいコンサルの現実

成果を重視する動きは、海外の調査にも表れています。HFS ResearchとIBMが2025年に公表した、企業幹部1,002人を対象とする調査では、回答者の78%が、今後5年以内にコンサルティングサービスを従来型の人員数に基づく契約では調達しなくなるとの見方に同意しました。2025年のKantataの専門サービス業界調査でも、回答企業の46%が成果連動型の価格設定をすでに利用していると報告されています。ただし、これらは海外を中心とした調査であり、日本のコンサル市場全体が同じ状況にあることを示す数字ではありません。それでも、コンサルタントが費やした時間ではなく、企業にもたらした価値を評価しようとする動きが広がっていることは読み取れます。

一方で、成果を契約に組み込むことには難しさもあります。売上が増えたとしても、それがコンサルの提案によるものなのか、市場環境の好転や自社社員の努力によるものなのか、明確に分けられない場合があるためです。営業改革なら商談数や受注率、業務改善なら作業時間や処理件数など、比較的測定しやすい指標もあります。しかし、組織文化の改革や新規事業の育成は、短期間で数字に表れるとは限りません。
成果ばかりを追い求めると、測定しやすい仕事だけが優先され、長期的な企業価値につながる取り組みが後回しになる懸念もあります。こうした問題を避けるためにも、クライアントとコンサルの双方が、成果の定義と責任範囲を共有しておくことが必要でしょう。

 

これから選ばれるコンサルは、現場を変えられるパートナー

今後のコンサルティングで存在感を高めるのは、提案を提出して終わるのではなく、実行段階まで関わる専門家だと考えられます。営業改革を支援するなら、新しい営業手法を提案するだけでなく、担当者への研修や顧客管理システムの運用改善にも参加する。AI導入であれば、ツールを選定するだけでなく、従業員が日常業務で使える状態まで支援する。こうした仕事では、経営者に向けた説明能力に加え、現場の課題を理解し、関係者の協力を引き出す力が欠かせません。大手コンサルティング会社だけでなく、特定の業界や業務に詳しい中小規模の専門会社にも、実行支援を通じて評価を高める余地が生まれています。

クライアント側にも、依頼の仕方を見直す姿勢が求められます。「売上を伸ばしてほしい」「DXを成功させたい」といった大きな目標だけでは、双方の期待がずれやすくなるためです。契約前に現在の数値を確認し、半年後に何を達成したいのか、誰が実行を担当するのか、成果をどう測定するのかを具体的に決めておくことが有効でしょう。報酬についても、すべてを成果連動にするのではなく、基本報酬と達成状況に応じた追加報酬を組み合わせる方法が考えられます。

提案そのものの価値が消えるわけではありません。ただ、提案を実際の変化につなげられるかどうかが、コンサルの評価を左右する時代になりつつあります。企業が買おうとしているのは、完成された資料ではなく、自社だけでは実現しにくい成果への道筋と、それを実行するための専門的な支援といえるのではないでしょうか。

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